オマーン戦、中国戦で見えた、日本代表の戦術ベースの低さ

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第146回

オマーン戦、中国戦で見えた、日本代表の戦術ベースの低さ

By 清水 英斗 ・ 2021.9.10

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中心選手の欠場、欧州組の9月の難しさ、東京五輪組&Jリーグ復帰組の蓄積した疲労など、難しい条件が重なった中でのオマーン戦と中国戦だった。


結果は1勝1敗。勝ち点3を計算しなければならない相手に敗れたのだから、単なる1敗ではない。来月のサウジアラビア戦とオーストラリア戦の重みが増す、1敗だった。


日本は良い準備が出来たとは言えない。準備不足に関しては、東京五輪の影響があったかもしれない。


とはいえ、今回はこの時期に起因する問題が多く、今後は森保監督が欧州へ渡り、選手の状況把握に務めるようなので、短期的な改善は見込めるだろう。


その直近の問題とは別に、東京五輪でも感じたことだが、日本代表は戦術のスタートラインを上げる必要がある。


7月の五輪直前を思い返すと、日本はスペインと親善試合を行って1-1で引き分けたが、当時のスペインはチーム合流後にほとんど練習をしていない“インスタント・チーム”だった。


それでも彼らはスペインの戦術を大筋で実践した。ベースの70点からスタートしたスペインは、8月の五輪準決勝までに完成度を100点に近づけてパワーアップし、その相手に日本は敗れた。


守備面は向上したが


親善試合の頃に比べると、日本五輪代表もパワーアップした。特に守備面だ。スペイン戦の時点では特に自陣での守備連係が乏しく、これでは厳しいと思わざるを得なかった。


それが本番になると、相馬勇紀はほぼ完璧に近いハードワークで最終ラインのカバーを行い、グループリーグのメキシコ戦ではハイプレスも機能させた。さらに前田大然らの途中出場組も、親善試合ではバラバラだったが、本番では4-4-2で構えたときの動き方が整理されていた。


そうやって守備を向上させつつも、最終的にビルドアップには課題を残し、整った相手に対して効率の悪い攻めを繰り返す悪癖は治らなかった。


ニュージーランド戦で苦戦し、準決勝スペイン戦で最後に力尽きるなど、ビルドアップ面で試合をコントロールできなかったことは、東京五輪の大きな敗因だ。そこまで手が回らなかったと言うべきか。


スタートラインの低さ


準備期間をしっかり与えられても、その完成度にしか到達できないのは、スタートラインが低いからだ。30%から始めて、何もかもに手を付けて向上させようとすると、当然、時間が足りない。スペインのように70%から始める地盤がなければ、代表の頂点にたどり着くのは難しい。


日本は育成年代から、ほぼ一貫して4-4-2(あるいは攻撃時4-2-3-1)で戦っており、そこに暗黙の地盤を見出すことはできる。


だが、そもそも4-4-2は縦、横に並ぶだけの単純なシステムなので、立ち位置がわかりやすい。極端な話、前と横の味方さえ見ておけば、なんちゃって4-4-2はすぐに出来る。


問題はフラットに並んだ形から、どう動くかだ。両幅は空いているし、ライン間も空いている。2トップの脇も空いている。


そこに行ける人は均一に揃っているので、どう連動するか。特に昨今は世界的に4-4-2破りが浸透しているので、尚更、最初の立ち位置からの連動がポイントになる。


五輪代表の歩みを見る限り、日本の選手に共通の理解はなく、森保ジャパンもその点を向上させるために、本番までの仕上げの時間を使ってしまった。


30%からのスタート

この程度の地盤では、30%からのスタートと言わざるを得ない。これでは、短期大会で100%の完成度にたどり着くのは無理だろう。また、未完成部分が選手の連係や対応力任せとなれば、慣れた選手を代えられなくなる。ターンオーバーもできない。


最終予選のA代表も、誰が入っても70%からスタートできる戦術の地盤さえあれば、コンディションの悪い選手を無理に起用する必要はなかった。最終予選だけでなく、ワールドカップや五輪の短期大会を勝ち上がる上でも、大事な要素だ。


森保監督は最終予選に臨む日本代表の難しさとして、アジアではすべての相手から分析される存在であることを挙げているが、それなら試合毎に相手の特徴に合わせ、残り30%の部分でチームを変化させればいい。


中国戦では伊東純也が中へ入って相手センターバックと対峙し、室屋成は大外にポジションを取って相手ウイングバックとインサイドハーフの注意を引きつけた。


その結果、久保建英がハーフスペースの少し低い位置でフリーになりやすく、チャンスを作った。初期配置から、くるっとローテーションした形だ。


サイド突破型の伊東が中へ入ったことに、中国は少し戸惑ったかもしれない。伊東への警戒が残ったのか、室屋に対する相手ウイングバックのアプローチは遅く、この攻め方は効果があった。


10月の2試合をどう戦うか


一方で、最終的にゴールを割ったのは、初期ポジションに戻った伊東の大外ドリブル突破である。


前半40分、日本は自陣深い位置で回収したボールを素早く右サイドへ展開し、中国が戻り切る前に、この試合では珍しく伊東が外からドリブルで仕掛けた。ローテーション型からの、一転して原点攻め。


この流れは意外性があった。変化があってこそ、オリジナルが生きる。


こうやって相手の分析を振り回せば良いが、今回は中国が今ひとつのチームだったし、日本も1点しか取れなかった。焦点は次のサウジアラビア戦とオーストラリア戦をどう戦うかだ。


W杯出場権を争う彼らに、すでに日本は勝ち点3差を付けられてしまった。10月、直接対決の“シックス・ポインター”で巻き返せば結果オーライだが、負ければ崖っぷち。解任も視野に入れなければならない。


森保監督はW杯本大会でグループリーグを突破するまでは想像できるし、チームマネジメントを見ても、その目的においては有能な監督とさえ思う。


だが五輪敗退の流れやオマーン戦の負け方を見ると、ベスト8以上を望める監督ではない、という印象は強まった。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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