なぜ中盤とゴール前で同じプレーをするのか? 日本人が“シュート下手”な理由

COLUMN清水英斗の「世界基準のジャパン目線」第21回

なぜ中盤とゴール前で同じプレーをするのか? 日本人が“シュート下手”な理由

By 清水 英斗 ・ 2016.7.12

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今季は昇格組ながら、J1セカンドステージ2節終了時点で、勝ち点30を稼ぎ、年間6位に着ける大宮アルディージャ。


19試合で19得点は寂しいが、失点も19と少ない。また、試合展開を見ると、勝利した8試合のうち、実に7試合が1点差を逃げ切ったゲーム。逆転負けは一度もない。大宮が上位に着ける要因が、安定した守備力にあるのは明らかだ。


特に目を引くのは、センターバックの菊地光将と河本裕之。


大宮は4-4-2で守りながらも、高くコンパクトなディフェンスラインを敷く。センターバックが、裏のスペースをケアできるスピードを持っていることは大きい。また、サイドを崩されたときも、この2人はクロスに対する反応が鋭い。身体を張って、徹底的に跳ね返している。


それ以外に、ボランチの金澤慎はポジショニングが抜群に良く、安定した守備を見せる。また、2トップに入る江坂任も、ファーストディフェンスの貢献度が高い。そして、もう一人のキープレーヤーは、ボランチやサイドハーフなど複数のポジションに入る横谷繁だ。彼の強靭なフィジカルは、対戦相手の攻撃バリエーションに対して、強さが欲しいポイントを適切に防いでくれる。横谷も貢献度が高い選手だ。


しかし、守備が光る大宮だが、今のままでは6位以上は望めない。


大宮がさらに上位を目指し、川崎、鹿島、浦和、広島、G大阪の“ビッグ5”に割って入るために、必要なものとは何か?


それはズバリ、カウンターだ。ファーストステージで大宮が負けた5チームは、G大阪、広島、浦和、新潟、川崎と、いずれも攻撃的なチームばかり。相手に支配されるゲームの中で勝ち点を拾うためには、カウンターの刃が必須だ。大宮はそこが弱い。


もっとも、その課題に、大宮の渋谷洋樹監督はすでに着手した。ファーストステージ第9節で鹿島アントラーズとスコアレスドローに終わったとき、「我々はここ最近、ボールを持てる相手が多かったが、(相手が積極的に来るチームの場合)カウンターのところは、もう少しレベルアップしなければいけない」と吐露している。


口だけではなく、たしかに大宮は5月に入ってから、カウンターの形が確立されてきた。FW江坂やMF家長昭博、MF泉澤仁らがスペースを突き、最近はFW清水慎太郎がスーパーサブとして、スピーディな攻撃に絡んでいる。


しかし、せっかく形を作っても、決め切れないシーンが多く、得点が伸びない。いや、決め切れないというより、フィニッシュし切れないと表現したほうが正しいだろう。


ゴール前で相手を“かわす”必要があるのだろうか?


大宮に限ったことではないが、多くの日本人選手のフィニッシュに関して、私は不満がある。


たとえば、ファーストステージ第17節の川崎対大宮の前半19分のシーン。川崎の縦パスをインターセプトした大宮が、泉澤、江坂、金澤とつないで、見事なカウンターを仕掛けた。最後にペナルティーエリアに差し掛かるところで、フリーでボールが折り返されたが、家長の胸トラップは、GKチョン・ソンリョンに捕られてしまった。


プレスバックしてきたDFが気になったのか、家長は胸トラップを大きめに、外に開いて、DFから遠めに置いてシュートしようとした。その隙を、経験豊富なGKにねらわれた格好だ。


Jリーグの試合は、ゴール前と中盤で同じプレーをしているように感じる。家長は、そこまでして相手DFを“かわす”必要があったのだろうか? まっすぐゴール方向にボールを止めて、相手DFを右腕でブロックしながら打てば、よりシュート角度も広くなる。かわす必要などない。相手が無理に止めようとすれば、PKゲットだ。


以前、ブラジルのコリンチャンスの下部組織でコーチを務める平安山良太氏が、興味深いことを言っていた。


「日本人はゴール前で、相手DFから足が届かず、奪われにくいところにボールを置くことが多いように見えます。でも、ブラジル人は、自分の都合でゴールを決めやすいところにボールを置き、強引にでも、体重が乗ったシュートを打ちます。その習慣の違いから、日本人がゴール前で消極的と感じます」


その他にも、セカンドステージ第1節の大宮対名古屋では、退場で1人少なくなった相手にチャンスを量産したが、やはりフィニッシュが消極的。


たとえば後半35分、左サイドの清水からのパスを、フリーの金澤がペナルティーエリアの手前で受けたが、トラップしてボールを整えている間に寄せられ、窮屈になったシュートは、あっさりとGKにキャッチされた。軸足を置きづらくても、そこは強引にでもダイレクトシュートに行かなければ、ノーチャンスだ。きれいにプレーしているが、そこは中盤ではない。


セカンドステージ第2節の磐田対大宮でも、似た様子が見られた。前半7分に磐田がビッグチャンスを迎えた後、大宮は左サイドを泉澤が走ってカウンターへ。逆サイドに江坂がフリーで走り込んでいるのを見極めると、冷静にサイドチェンジ。


あとはトラップして打つだけ……なのだが、江坂の胸トラップは、やはり手前にいる相手DFが気になったのか、“外へ”逃げる形でボールを置いた。若干、コントロールミスもあったのか、トラップが長くなり、ゴールライン際から折り返す形になったが、たとえ思い通りの位置に止めていても、相手DFとしては外へ追い出しやすい場所だった。


グッと向かってきて、ドーンと打たれたほうが、相手DFに怖さを与えることができるのに、自ら外へ逃げるトラップをしてしまう。これは習慣の問題かもしれない。


組織力の高い、すばらしいサッカーを見せている大宮だけに、フィニッシュの拙攻は本当にもったいない。セカンドステージで“ビッグ5”に切り込むための焦点は、ここにあるのではないか。(文・清水英斗)


写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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