意外だった城福監督の解任。混迷を極める小倉グランパスの行方はいかに?

COLUMN清水英斗の「世界基準のジャパン目線」第22回

意外だった城福監督の解任。混迷を極める小倉グランパスの行方はいかに?

By 清水 英斗 ・ 2016.7.27

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Jリーグで監督解任が相次いでいる。後半戦の序盤、この時期の解任ならば、まだチームの内容的にも立て直す時間があるとの判断だろう。


しかし、城福浩監督の解任は意外だった。セカンドステージのFC東京は、1勝4敗と結果が出ていないが、鳥栖戦と福岡戦の負けは、アディショナルタイムの衝撃的な失点によるもの。監督の責任をどこまで問うべきか。また、絶好調の柏と川崎に敗れたからといって、それが解任の引き金として適当とは思えない。


多摩川クラシコは、川崎に圧倒的に攻め込まれたが、試合内容はそれほど悪くなかった。ファーストステージでは最終ラインの裏をあっさりと突かれて失点したが、今回は慎重に深く守った。その分、中盤にスペースが空きやすい状況だったが、そこで川崎に主導権を握られても、最終的にはゴール前でブロックした。そして、守備をしない外国人2トップのカウンター。リーグ首位の川崎のホームで、引き分けか、あわよくば勝利へ。現実的な戦略だ。後半36分にFKのこぼれ球から、小林悠に決勝点を許して0-1で敗れたが、ゲームの印象ほど、川崎に決定機が多かったわけではない。


この後は、新潟、磐田、神戸と、下位に沈むクラブとの対戦が続くだけに、もう少し様子を見ても良かったのではないだろうか。


もっとも、チーム内のことは、うかがい知れない部分はある。結果が出ず、選手が監督に疑問符を付け始めたとき、より近い距離で選手と接しているコーチのほうが、実は人望を集めているケースは少なくない。その状況から監督を解任し、コーチの昇格を決める人事を、近年のJリーグではよく耳にする。そして、割と成功している。(監督にとって、これほどやりにくい話はないが)


後任は篠田善之コーチの昇格が決定的だそうだが、早期解任に踏み切れる理由は、この辺りにあるのだろうか。FC東京は結果が出ていないとはいえ、ほぼすべてが1点差ゲーム。チームの雰囲気が変わり、競り負けから、競り勝ちに転じる可能性はある。


小倉監督を解任しない名古屋。社長が闘莉王役を務める!?


一方、FC東京の早期解任とは反対の意味で意外だったのが、名古屋グランパスだ。こちらは、小倉隆史監督を解任しないことに驚いた。


敗れた試合後の会見でよく聞くのは、「選手を責めることはできない。責任は自分にある」という小倉監督のコメント。同様の発言は、何年も選手と苦楽を共にしている湘南のチョウ・キジェ監督などからも聞かれるが、その重みは雲泥の差だ。


小倉監督は、初年度の半ばですでに、選手がすべてをやり切った上で結果が出なかった、という話し方をする。しかし、まだ監督として伝え切れていないこと、トレーニングで手が回らないことはたくさんあるはずだ。選手に要求したいことも、たくさんあるだろう。普通の監督ならば、「1年で結果は出ない。時間をくれ」と言うはずだ。


潔くも聞こえる、「選手を責めることはできない。責任は自分にある」というコメントだが、この言葉が出てくるほど、やり切った印象はない。むしろ、指導者としての引き出しが半年で切れて、これ以上、何をしていいのかわからない、という発言に思える。だから、解任しないことに驚いた。


こんなことは所詮、言葉の揚げ足取りに過ぎない。しかし、肉声を聞いていると伝わるものだ。ファーストステージの頃から、小倉監督の言葉には迷いがあった。記者の質問に対して「ウーン」と考え込むことが多く、自信が感じられない。他の監督のように、オリジナルの語り口もなく、借りてきた用語が並ぶ印象を受ける。



単純な経験不足だ。近年のJリーグで結果を挙げている監督は、サンフレッチェ広島の森保一、鹿島アントラーズの石井正忠、大宮アルディージャの渋谷洋樹、ベガルタ仙台の渡邉晋、そして今年は戦力放出で苦しんでいるが湘南のチョウ・キジェなど、いずれも指導者として長く経験を積み、ステップアップした実力派ばかり。


欧州サッカーや野球のメジャーリーグでは、元有名選手でなくても、監督として地道にキャリアアップし、大成する例が多い。近年、Jリーグもその傾向が出てきたところで、名古屋だけは時代に逆行してしまった。


しかし、その一方で、田中マルクス闘莉王がいたら何とかなったのだろうか、と思うところはある。


彼はものすごく発信力の強い選手。それが正しいかどうかはともかく、思ったことをズバズバと言う。ひとたび「小倉さんを男にしたい」と言い出したら、経験不足の小倉監督が道に迷う暇もないほど、鼓舞し、意見し、存在感を見せたはず。


他の選手も色々と考えているし、戦術眼のある選手もたくさんいるのだが、しかし、日本の場合、カラオケで言うところの、マイクを渡されたら巧く歌うが、自分からはマイクを握りに行かないタイプが多いのも事実だ。闘莉王は前に出てマイクを奪うタイプだったが、どうも、今の名古屋にはそういう発信力のある選手が見当たらない。そのことが、小倉監督の経験不足の問題に、輪をかけているのではないか。


おそらく久米一正社長は、名古屋のチームの問題をよく理解している。


新しいコーチの入閣を検討しているのは、小倉監督の引き出し不足を補うためだろう。またそれだけでなく、久米社長自らが選手の鼓舞に乗り出した。


「絶対に(監督を)代えません! 選手たちにも先ほど控え室で、“逃げるな、投げ出すな、諦めるな、誰も助けてくれないぞ”と。“このチームのみんなでやるしかない、まだ赤い一つの球になってないじゃないか。言い訳ばかり言うな。プロは言い訳しない”、そういう話をしてきていますから」(試合後の会見)


小倉監督は兄貴肌で、情に厚い。その性格が選手に慕われる反面、個人的には、どうしてもリーダーとしての厳しさに欠けるのではと危惧する。しかし、この発信力。ロッカールームに怒鳴り込んだ社長は違うだろう。


「私が先頭を切って小倉をサポートします」という久米社長の言葉は、「私が闘莉王になる」とも受け取れた。今季の名古屋にずっと足りないなと思っていたピースを、まさか社長が埋めることになるとは。これはひょっとすると、V字回復もあるのだろうか。(文・清水英斗)



写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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