浦和は“ぶちのめす第一戦”にチャレンジすべきだった。チャンピオンシップの戦い方に見る、優勝を逃した理由

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第31回

浦和は“ぶちのめす第一戦”にチャレンジすべきだった。チャンピオンシップの戦い方に見る、優勝を逃した理由

By 清水 英斗 ・ 2016.12.6

シェアする

ちぐはぐだったんじゃないか? このような印象を持ったのは僕だけじゃないはず。チャンピオンシップ第2戦の浦和の戦い方だ。


前半7分、浦和は興梠慎三がゴールを決めたが、この先制点に大きな意味はなかった。鹿島ホームの第1戦は、1-0で浦和が勝利しており、鹿島にとっては2点が必要な状況に変わりはない。先制されたが、2-1と逆転すれば、アウェーゴール差で勝てる。


浦和としては2点を奪って初めて、鹿島に3点が必要な状況を突きつけることができる試合だった。


しかし、先制した後の浦和は、2点目を奪う前に徐々にディフェンス位置を下げ、相手を待ち構える展開になってしまった。奪ったボールをサポートする動きも減り、安定したポゼッションができない。前半は鹿島のポゼッション率54%と、相手にボールを持たれた。


もし、守備から試合をコントロールする意図が浦和にあったのなら、それはそれで、序盤から飛ばす必要はなかったし、奪ったボールもあれほど縦に急ぐ必要はなかった。


試合を落ち着かせたいのか、あるいは素早く2点を取って試合を決めたいのか。どっち付かずの浦和の戦い方は、ちぐはぐに感じられた。


後半34分に2-1と逆転された後の、パワープレー指示もその一つだ。ミハイロ・ペトロビッチ監督は、すぐに槙野智章を上げてズラタンとの2トップを指示したが、ベンチのコーチ陣は納得せず、口論になったようだ。


その口論と同じく、ピッチ内もちぐはぐ。ツインタワーにした割にハイクロスが入らず、相変わらず足下へのパスが中心。パワープレーの正誤を問う以前に、ねらいと実践が合っていない。


極めつけは、失点につながった槙野のミスだ。


後ろが見えていなかったことは、仕方がない。しかし、より問題なのは、背後の状況が見えていないのにボールを後ろに流したこと。最終ラインのDFとして、やってはいけないプレーだ。そのゆるみを、抜け目なく鈴木優磨にねらわれた。


もちろん、これは槙野の個人的なミスだが、なぜ彼がそんな選択をしたのかと言えば、ボールを生かすためだろう。簡単にクリアして鹿島にボールを渡し、ずるずると押し込まれ続ける状況を、槙野は避けたかった。


つまり、確信を持って、相手の攻撃を跳ね返している状況ではない。浦和としては、ボールを保持したいのに、できないから、やむを得ず守勢に回っている。その焦りが、槙野に一瞬の判断ミスを生ませたのではないか。頭の中がスッキリ整理されていれば、あの状況は迷わずクリアしたはず。


やることが明確だった鹿島に対し、浦和のゲームプランはちぐはぐ。各所に迷いを生んでいた。


UEFAチャンピオンズリーグから見る、180分ゲームの戦い方


第1戦の試合内容から、すでに嫌な予感があった。結果的に浦和は1-0で勝ったが、0-0でもおかしくないような、リスクを犯さない試合運びだった。これでいいのだろうか? そもそも、ちぐはぐの始まりは第1戦だったのではないか。


第2戦を前に、この疑問を投げかけることは避けたかった。しかし、終わった今こそ問いたい。


「第1戦は180分ゲームの前半」と表現されることもあるが、その第1戦を、どう戦うのが正しいのだろうか?


参考として、過去10シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント、第1戦を調べてみた。


2006-07シーズンは、ホーム&アウェー14試合の第1戦のうち、6試合が引き分け、7試合が1点差ゲームと“手堅い第1戦”が多かった。09-10シーズンまでは、似た傾向になる。


しかし、10-11シーズンから、異なる傾向が見えてきた。


ホーム&アウェー14試合の第1戦のうち、2点差が3試合、3点差以上の大差が付いたのも3試合。明らかに“ぶちのめす第1戦”が増えた。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、ドルトムントなどの攻撃的なクラブを中心に、この傾向は14-15シーズンまで続いた。特に12-13、13-14シーズンは、大差がついた第1戦が多い。


(12-13シーズン:2点差=3試合、3点差以上=4試合)

(13-14シーズン:2点差=5試合、3点差以上=3試合)


第一戦は、より攻撃的に出るべきだった


手堅い第1戦と、ぶちのめす第1戦。どちらがホーム&アウェーの戦い方として正しいのか。これだけでは結論が出ないが、少なくとも近年のUEFAチャンピオンズリーグは、一昔前よりも、“ぶちのめす第1戦”を目指すチームが多いのは確かだ。


浦和に合っている戦い方も、そっちじゃないだろうか。やはり振り返ると、第1戦が消極的だった。


手堅い試合運びを2試合も続けるのは、浦和にとって正しいホーム&アウェーの戦い方ではない。第1戦はもっと攻撃に人数をかけるべきだったし、第2戦は勇気を持ってボールを回し、鹿島のプレスを剥がすべきだった。


もし、コンディションの問題で、今回は“ぶちのめす第1戦”にチャレンジできなかったとしたら、それは理解できる。しかしそれならば、第2戦は割り切った展開を強いられることは予想すべきだし、2点目の位置づけ、パワープレーの口論、槙野の判断ミスなど、ちぐはぐなゲームプランになったのは残念だ。


いちばん重要なのは、何を選ぶかではなく、全員が同じ方向性を信じること。それが、この大一番の浦和に欠けていた。


チャンピオンシップは今季で終わるが、ルヴァンカップやAFCチャンピオンズリーグの決勝トーナメントも、ホーム&アウェー形式になっている。来季、その機会があれば、新たな浦和の二発勝負の戦い方を見たいものだ。(文・清水英斗)


シェアする
清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

このコラムの他の記事