ゼロックス・スーパーカップに見る、鹿島と浦和の仕上がりの違い

COLUMN清水英斗の世界基準のジャパン目線 第36回

ゼロックス・スーパーカップに見る、鹿島と浦和の仕上がりの違い

By 清水 英斗 ・ 2017.2.20

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昨年末のクラブワールドカップ、さらに天皇杯を元日まで戦い抜き、充実したシーズンを過ごした鹿島アントラーズ。その代償として、2017年のオフは2週間しか取ることができなかった。


「疲れてるでしょ?」と、誰もが言いたくなるだろう。ところがどっこい。ゼロックス・スーパーカップの動きを見る限り、逆にあの年末年始の忙しさが、鹿島の身体を鈍らせることなく、シーズン中に近い試合勘とコンディションを保っているようだ。


もちろん、100%とは言えないが、この時期の他クラブ、たとえばゼロックスで対戦した浦和レッズと比べれば、仕上がりの差は明らかだ。金崎夢生、土居聖真、遠藤康、小笠原満男、昌子源、西大伍といった中心選手の緊張感に、新加入選手も引っ張られている。


もっとも、徐々に疲労が溜まって落ちる時期は、これからくるかもしれないが、少なくともシーズンの序盤、鹿島の調子は良さそうだ。Jリーグでもロケットスタートが期待できる。


ACLでのスタートダッシュに期待


そして、この様子はACL(AFCチャンピオンズリーグ)にも波及するだろうか。


シーズン前から入念に準備を行って仕上げてくる韓国や中国のクラブに対し、Jリーグ勢は押しなべてスロースタートであり、ACLの序盤でつまずく傾向があった。しかし、今の鹿島からは、Jクラブの悪習慣をバッサリと断ち切りそうな雰囲気がある。選手のコメントもツヤがいい。ノッている。


2失点を喫して浦和に追いつかれたのは“らしくない”が、そんな良薬も、この時期に飲んでおけば悪くはない。


主力不在で機能不全に陥った浦和


一方、浦和は改めて、柏木陽介と槙野智章の存在の大きさを思い知ることになった。


そんなに悪い試合ではなかったが、ゲーム内容として浦和がやりたい方向に持って行けたかといえば、ノーだろう。


最終ラインが3バックでビルドアップした浦和だが、左右のDFがボールを持ち運ぶプレーを、ほとんどできていない。鹿島は2トップなので、3バックで幅を取ってパスを回せば、必ず3人の誰かの前方が開ける。左右のDFがドリブルで持ち運べば、鹿島の両サイドハーフ、遠藤と土居が寄せてくるだろう。そこで彼らを引きつけると、ウイングハーフの駒井善成、菊池大介と2対1を作れる。寄せられたら、パスを出せばOKだ。


もし、遠藤や土居が外側のパスコースを切りながら寄せてきたら、シャドーの武藤雄樹や李忠成が空く。仮にどちらもうまく切られたら、ボランチの阿部勇樹や青木拓矢に横パスを出せばいい。左右のDFは、少なくとも3つのコースを見ながら運ぶことができる。


ところが、左DFに入った宇賀神友弥は、このポジションに慣れておらず、前に進めない。左サイド側に入ったのに、右足でボールをコントロールして、いつも中央を向いてしまい、横や後ろにパスしてばかり。フリーになりやすい選手がそういう選択をしていると、他のポジションが必ず追い詰められる。槙野が欠場した以上、慣れていない選手がやらざるを得ないわけだが、これでは心許ない。


ボランチ柏木、不在の影響


一方、右DFの森脇良太は、運ぶプレーが得意であり、前述したウイング、シャドー、ボランチの3つのコースをしっかり見ながら選択できる。ところが、その森脇の前方に、ボランチの青木拓矢がふたをする場面が多く、スペースを潰されてしまう。もったいない。


青木は全体的に悪くなかったが、鹿島の2トップ、あるいはボランチの背後でボールを受ける回数が少ない。逆に味方が充分にフリーなのに、外に広がったり、最終ラインに下がったりと、後方をダブつかせる傾向がある。そして、それはシャドーの武藤雄樹や、1トップのズラタンに縦パスが入ったとき、彼らを孤立させる要因になる。これは柏木にはあまり見られない傾向であり、やはり不在の影響を感じてしまった。


鹿島はマンツーマン中心のチームなので、浦和の1トップ2シャドーに対し、はっきりとボランチの片方(主に小笠原)を低い位置に残してシャドーをマークし、もう1人(主にレオ・シルバ)が高い位置でボランチにプレスをかける。


必然的に5バック“気味”になるため、浦和の前線5枚とは鏡合わせになる。そこに6人目として入り、相手に混乱をもたらすのが柏木のプレーだが、今回の青木と阿部のコンビは、そういうプレーの回数が少なく、横並びになる場面が多かった。


アグレッシブな長澤、駒井のプレー


逆に、後半の途中から入った長澤和輝は、相手の裏に入って受けることをアグレッシブにやったので、その動きは鹿島を混乱させた。浦和は2点差で負けていることもあり、長澤はあまり戦況を見定める必要性もなく、イケイケでプレーしたが、試合開始からスタメンで出たらどんなバランスを見いだせるのか。楽しみな選手だ。


楽しみといえば、駒井善成も良いプレーをした。浦和は縦パスをフリックで叩いてばかりで、リズムが世話しなくワンパターンになりがち。鹿島のように裏への対応が良いチームには、なかなか通じない。そんなところに、ボールを受けて、自分のリズムで仕掛けられるアタッカーがいるのは大きい。個人的には、シャドーの一角でプレーする駒井、あるいは関根貴大を見てみたいところだ。


浦和にとっては、いろいろな授業になったゼロックス・スーパーカップだったのではないだろうか。(文・清水英斗)



写真提供:getty images

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清水 英斗

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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