久保建英に原輝綺。U-20W杯直前の欧州遠征で台頭した“東京五輪世代”の若き力

COLUMN川端暁彦のプレスバック第37回

久保建英に原輝綺。U-20W杯直前の欧州遠征で台頭した“東京五輪世代”の若き力

By 川端 暁彦 ・ 2017.3.30

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「チームは生き物」と言う。変化せずにはいられないし、変化の中で進歩もすれば、衰えることもある。ましてや年代別日本代表。育ち盛りの選手たちを扱うチームが生き物としての特性を持たないはずもない。


昨年秋、史上初めてU-19年代のアジア王者に輝き、実に10年ぶりとなるU-20ワールドカップへの出場権を手にしたU-20日本代表も、半年足らずの間に確かな変化を迫られている。


予選終了後から3度目の招集機会であり、今年に入ってからは2度目の招集で、ベストメンバーが集まるのは、これが1度目(そして恐らく最後)となる。ドイツを拠点にしながらルクセンブルクやベルギーにも足を伸ばしたU-20日本代表の欧州遠征は、そういう機会だった。


アジア制覇から半年も経っていない上に招集機会も限定されるのだから「ほとんどは予選のメンバー」(内山篤監督)で構成されていて、目指しているサッカーも特に変わってはいない。ただ、そこで起きている変化は小さくない。


久保建英が欧州遠征で示した実力


典型例はFWである。ここに久保建英(FC東京)というタレントが加わった。そう、まさに「タレント(才能)」だ。FIFA基準で言えば4歳年長、日本の学年で言えば5学年上の選手もいるチームへ15歳で抜擢された男は、「早すぎるのではないか」という周りの心配を杞憂に変えていくようなパフォーマンスを示し続けている。


「(2歳年長の選手とプレーした)昨年のサニックス杯で観たときから、もっと上の年代でもやれると思っていた。(経験を積ませるといったことではなく)戦力になると思ったから呼んだ」(内山監督)


慧眼だった。そう言うほかない。


FC東京との練習試合で結果を出したのに続き、この欧州遠征でも、試合に出るたびに結果を残した。ルクセンブルクに赴いてのF91 Diddelengとの初戦では、大人のチームを相手に右から中へ切り込む「得意な形」(久保)のドリブルシュートで1得点。続くU-20ドイツ代表戦でも途中交代で巧みなパス、ドリブルを見せて会場をうならせた上に、最後はMF遠藤渓太(横浜FM)のゴールをアシスト。


次のMSVデュイスブルク戦でも終盤の登場ながら小川航基(磐田)に“ごっつぁんゴール”を献上するアシストを記録し、最後はスタンダール・リエージュのU-21チームとの試合で初先発となり、1ゴール1アシスト。3-0での圧勝に貢献してみせた。


他ならぬ本人が「正直、ビックリした」と語るU-20への“超飛び級”だが、合流してからのプレーぶりはまさに日進月歩。紛れもない「戦力」になっている。招集当初は懐疑的な視線を向ける選手もいたかもしれないが、この遠征で一緒にプレーしてなおその実力にクエスチョンを打てる選手はいないだろう。


徐々に「久保の使い方」を周りの選手が体得してきた感もあり、「Jリーグでプレーする選手に引き出してもらっている」という久保の言葉は、あながち謙遜ばかりではないだろう。周囲のレベルがより高くなる中で、自分の力がむしろ出しやすくなっている感覚は、確かにあるはずだ。周りとの生かし生かされる関係性は徐々にできつつあり、遠藤と久保のパス交換から生まれたドイツ戦のゴールなどはその結実だった。


高卒新人ながら、開幕スタメンを勝ち取った原輝綺


そのほかFW陣では、初招集となった旗手怜央(順天堂大学)がテストされた。メンバー構成について「大体固まっている」としている内山監督だが、前線の人選に関してだけは「最後までいじれるポジション」と位置付けている。Jリーグで結果を出すなど、その時点で調子の良い選手がいれば、驚きのチョイスもありそうだ。


日進月歩と言えば、MF原輝綺(新潟)の成長ぶりも目覚ましい。


アジア予選直前からメンバー入りし、中盤の守備固め要員のような使われ方をしていた昨年から一転、もはやチームの中心選手になりつつある。市立船橋高校から新潟入りした今季は、J1開幕スタメンを飾ってそのまま定着しており、その事実が自信にも繋がっているのだろう。



また、昨年は所属チームでセンターバック、代表でボランチという役割の違いに悩まされていたので、所属チームでもボランチとしてプレーするようになったこともポジティブに作用している。


元より定評のあるボールを奪う力を含めてドイツを相手にも通用していたのだが、「アルゼンチンやフランスはもっと強かった。これで満足しているようではダメ」と、話を聞いていても昨年より目線が一つ上に向いていることが分かる。世界大会を機に、さらなるブレイクスルーを遂げたとしても驚きはない。


世界大会に向けた戦支度となった今回の欧州遠征。道場破りツアーのような日々の中で新たな芽が顔を出し、開花の予感を漂わせている。代表チームが見せる「生き物としての変化」も、世界切符がなければ生まれなかったものなのだから、あらためて昨年秋に手にしたものの大きさも実感できた。


残り2カ月を切った10年ぶりの世界舞台が“東京五輪世代”にどんな化学変化をもたらすのか。正直、楽しみで仕方がない。(文・川端暁彦)


写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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