“1泊2日のミニ合宿”で強化を続ける、U-20日本代表の狙いとは?

COLUMN川端暁彦のプレスバック第38回

“1泊2日のミニ合宿”で強化を続ける、U-20日本代表の狙いとは?

By 川端 暁彦 ・ 2017.4.14

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12日、日本サッカー協会は17日から18日にかけて千葉県内で強化合宿を張るU-20日本代表候補メンバー15名を発表した。そう、たったの15名である。しかも1泊2日。「どういうことなの?」という素朴な疑問もいただいたので、まずは簡単に解説してみたい。


1泊2日のミニ合宿については、昨年から内山篤監督が導入している合宿スタイルである。「合宿というより単発の練習試合」という指揮官の言葉どおり、練習というのは数日をかけて段階を踏んでいくことで効果を増すものなので、1日を試合に、もう1日を練習に割くのみで終わる、今回のような合宿でトレーニングの効果を十分に出すのは難しい。


昨夏にこの合宿形態について問われた指揮官は「そりゃあ、やれるものならもっとやりたいよ」と豪快に笑っていたが、「やらないよりはやったほうがいいでしょ」という判断からひねり出された苦肉の策である。


所属クラブとの兼ね合いで、選手が招集できない


Jリーグに所属する選手たちが大半を占めるU-19~20日本代表は選手の招集に関して強い制約を受けており、昨年も本当のベストメンバーを招集できたのはアジア予選本大会とその直前の欧州遠征のみ。


ブラジル、フランス、韓国と対戦できる機会であり、プレU-20W杯と位置付けられていた水原JS杯でさえ、内山監督が強く望んでいた選手たちをナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)等で招集できず。予選が終わってからも、ベストメンバーを呼べたのは先日の欧州遠征のみで、今後もメンバー発表まで呼ぶ機会はない。


これで結果を求められるのだから、あらゆる年代の代表監督の中で最も難しい舵取りを迫られる年代なのは間違いない。内山監督自身、「一度コーチとして(U-19年代の代表を)経験していたからこそ、何とかできている」と認めているくらいだ。


実戦経験を積ませる場として機能


15名で行うミニ合宿の趣旨は何かと言えば、「所属チームで90分ゲームをできていない選手を集める」(内山監督)こと。ゲームをさせること自体が目的という合宿で、昨年のアジア予選メンバー発表直前にも、同様の趣旨での練習試合が行われている。


これは内山監督がU-19代表のコーチだった時代(2014年)の経験から、「いざ予選に呼んでみたら思っていた以上にゲーム体力を失っている選手が多かった」という苦い経験に基づくもので、試合に出られていない選手たちの状態をチェックすると同時に、少しでもゲーム体力を取り戻すための機会を提供する狙いからだ。


そのため、今回選ばれた選手の中でも週末の試合でフル稼働するような選手については、そもそも参加しないといったこともあるだろう(その逆パターンもあり得る)。


先日のドイツ遠征では「何人かの選手はやっぱりゲーム体力がなくなっている」(内山監督)という事実を痛感させられることにもなった。「なまじ評価されている選手ほど、そうなりがち」と指揮官が言うように、ベンチには入れてちょっと出られるチャンスがあるくらいの選手は、負傷のリスクを考えて練習試合などの出場機会も制限されがち。たとえばスーパーサブ起用の続いたアタッカーが、パートタイムプレーに特化したような状態になっていくのも、過去にもよく観られたパターンである。


右利きのセンターバックと期待のアタッカーを招集


そうした中で、焦点となっている二つのポジションで新戦力というか“新鮮力”の最終テストも行われる。一つは右利きのセンターバック。左利きのセンターバックが豊富(中山雄太=柏、町田浩樹=鹿島、杉岡大暉=湘南)という珍しい年代なのだが、冨安健洋(福岡)のボランチ起用も視野に入れる中で、右利きのセンターバックはやや駒不足。


負傷者が出るリスクを考えても、計算できる選手がもう1人欲しいところ。スピードのある大南拓磨(磐田)、ファイター系の高校生・橋岡大樹(浦和ユース)の二人は共に昨年から何度も招集されてきた選手だが、今年に入ってからは初招集。最終テストとなる。


そしてもう一人、鳥栖のルーキーFW田川亨介が招集された。昨年8月には高校生中心で臨んだSBSカップ国際ユース大会に出場しているが、それ以来の招集となる。早生まれのために次のU-20W杯の資格も持つ選手だが、今季は鳥栖で出場機会を得て、ポテンシャルの高さを見せ続けている。指揮官はジョーカー的な“4人目のFW”については、調子などを見て最後まで選考することを明かしており、その候補に名乗り出た格好だ。大柄だが、ヘディングよりもスピードと強引さが魅力のストライカーだ。


当落線上の選手も多く呼ばれたこの合宿。ラストチャンスで可能性を示すのは、果たしてどの選手になるだろうか。(文・川端暁彦)



【合宿招集メンバー】

GK

小島 亨介 コジマ リョウスケ(早稲田大)

波多野 豪 ハタノ ゴウ(FC東京)

DF

町田 浩樹 マチダ コウキ(鹿島アントラーズ)

藤谷 壮 フジタニ ソウ(ヴィッセル神戸)

大南 拓麿 オオミナミ タクマ(ジュビロ磐田)

舩木 翔 フナキ カケル(セレッソ大阪)

橋岡 大樹 ハシオカ ダイキ(浦和レッズユース)

MF

坂井 大将 サカイ ダイスケ(大分トリニータ)

神谷 優太 カミヤ ユウタ(湘南ベルマーレ)

森島 司 モリシマ ツカサ(サンフレッチェ広島)

遠藤 渓太 エンドウ ケイタ(横浜F・マリノス)

針谷 岳晃 ハリガヤ タケアキ(ジュビロ磐田)

FW

小川 航基 オガワ コウキ(ジュビロ磐田)

岩崎 悠人 イワサキ ユウト(京都サンガF.C.)

田川 亨介 タガワ キョウスケ(サガン鳥栖)


【今後のスケジュール】

5/11~16 直前合宿(静岡)

5/17~19 直前合宿(韓国)

5/20〜6/12 FIFA U-20ワールドカップ韓国2017

・グループD 第1戦 21日 vs 南アフリカ戦

・グループD 第2戦 24日 vs ウルグアイ戦

・グループD 第3戦 27日 vs イタリア戦

写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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