狙われる日本のティーンエイジ。無防備ジャパンの“仁義”は国際移籍市場で通用しない

COLUMN川端暁彦のプレスバック第44回

狙われる日本のティーンエイジ。無防備ジャパンの“仁義”は国際移籍市場で通用しない

By 川端 暁彦 ・ 2017.7.14

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どうも風向きが変わってきているようだ。


今年、U-18年代の有力選手を取材していると、「欧州クラブからオファーがあった」とか「某クラブのU-19チームから練習参加してほしいとの話が来た」といった話が聞かれるようになった。高校サッカーの有力選手たちに加えて、Jクラブのユースチームの選手たちも同様だ。日本のティーンエイジャーたちは、当たり前のように欧州クラブのターゲットになる。そんな時代になった。


「いきなり海外はちょっと……」と困惑顔を浮かべていた選手がいた一方で、Jユースの有力選手の中には欧州の名門クラブからもオファーを受け、海を渡る決断を下しつつある選手もいる。


18歳未満での国際移籍が禁止されるFIFAのルールによって、裏を返せば「18歳になった段階、あるいはその直前での青田買い」が一般化しつつあるのだろう。これは奇しくも、日本側にある「高校を出るまでは日本にいたい」という文化的なものを含めたムードとも合致する。欧州の育成年代カテゴリーの多くが「U-19」まではあるので、高校生がワンステップを踏みやすい(場合によってはJクラブよりも)という側面もある。


然るべき防御策の必然性


これに対する日本側の“防御力”は、よくも悪くも「大変に低い」と言わざるを得ない。


Jクラブ所属選手であっても、ユース年代の内からプロ契約を結んでプロテクトされている選手自体がまれで、むしろ月謝を払わせているようなケースも一般的だ。海外からのオファーに対して「まだ子どもなのに」と強い反発を見せるクラブも少なくないようだが、“仁義”のような精神論は日本国内でしか通用しない。


過去には、海外からオファーが来てから所属選手に対してプロ契約を提示する“泥縄”的な対応も見られたが、こうした対応には自ずと限界がある。ボーダーレスの時代においては、守りたい(=違約金を取りたい)選手に対して然るべき防御策を講じていくほかないだろう。十代の海外移籍がより一般化していけば、心理的な障壁もなくなっていく。来たるべきパラダイムシフトに備えておく必要がある。


海外クラブの青田買い


Jクラブの“防御力”が著しく低い原因の一つは、新人契約を年俸480万円以下に縛るC契約制度の存在もあるが、そもそも心理的な危機感からしてほとんどない。海外クラブからのオファー自体がレアだから、「まさかウチの選手に海外から話が来るなんて」という反応になってしまうからだ。


これが欧州のクラブなら、そうもいかないだろう。たとえ海外クラブからのオファーがなくとも、国内クラブ間での青田買いバトル(これは青田を売り買いして稼ぐ商戦でもある)が展開されているからだ。


Jクラブの場合は「プロ契約前のユース選手に手を出さない」という共有されているルールがあるため、そもそも「防御」する必要性を感じる機会がほとんどないのだ(精々、ジュニアユースからユースの上がり際が危ないというくらいである)。


避けられない、早期契約化


このため、欧州クラブの感覚からすると「何でこれほどのタレントが無契約なんだ?」と不思議がられる状態が生まれることとなっている。


いずれにしても、堂安律(G大阪→フローニンゲン)がそうだったように、Jクラブの中で“早期契約化”の流れは避けられないだろうし、早期に欧州へ送り出す流れが加速していくのも避けられない。


明らかに欧州は日本の十代を狙っている。今秋にはU-17ワールドカップもあるが、この大会に臨む日本代表について、欧州クラブが興味を示している選手は久保建英(FC東京U-18)だけではない。Jクラブ個々はもちろん、日本サッカー界としても、この時代に対応するための術策が求められている。(文・川端暁彦)


写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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