「エリート育成」と「雑草力」。U-15代表・森山佳郎監督が見据える育成の形

COLUMN川端暁彦の“プレスバック” 第2回

「エリート育成」と「雑草力」。U-15代表・森山佳郎監督が見据える育成の形

By 川端 暁彦 ・ 2015.5.26

シェアする

「消えるやつは消えていく」


今日の日本サッカー界において、小中学校年代で「有力」「有望」とされた選手たちで大成するのは本当に一握りである。大成する選手のほうが「例外」とさえ言えるかもしれない。多くの選手はプロになれるかどうかというラインで夢を絶たれ、プロ契約まで行けたとしても、その先の世界を観られる選手はなかなかいない。


一方で、大きな期待をかけられることのなかった「雑草」と言うべき選手たちが、脇から育ってくる。日本サッカー界のこの雑草力、裾野の広さはなかなか大したもので、多数の強じんな個性が意外なルートを辿り、プロ選手として大成している。


2014年のブラジルW杯に臨んだ日本代表23名の内、U-15~U-17の日本代表正メンバーだったのはGK権田修一、DF内田篤人、酒井高徳、FW清武弘嗣、柿谷曜一朗、斎藤学の6名であり、U-17年代のときに飛び級でU-19代表に呼ばれるという、極めてイレギュラーな成長を見せた香川真司を加えても、計7名。全体の3分の1に満たない。彼ら以外が全員雑草だったと言ってしまうと暴論になってしまうのだが、後から伸びてくる晩成型の選手たちのほうが総じて大成しやすいという傾向は見て取れる。



10年前のA代表は、過半数が年代別代表経験者


実はこれ、あくまで最近の傾向だ。2002、2006年W杯までは、早熟選手がそのままA代表の主軸を担うパターンが多数派だった。中田英寿、稲本潤一、小野伸二、戸田和幸、宮本恒靖、松田直樹という具合に、2002年の主力メンバーの過半数が、U-15~17の日本代表経験者で占められているのは象徴的である。この10年余りの間に日本サッカーの〝雑草力〟が上がったとも言えるし、裾野が広がって底上げが進む過程でタレントを発掘するシステムが機能しなくなった面があるとも言える。


今年に入ってからU-15日本代表の取材を続けているのだが、あらためて印象を語ると「この年代、ホントに難しい!」といったところ。皆それぞれに長所があれば、ウィークポイントも抱えている。パーフェクトプレーヤーはもちろんいない中で、誰が「伸びる」のか。森山佳郎監督は「自分で自分を磨けるやつだけが生き残れるんだ」と発破をかけていて、それは一つの真理なのだが、誰がそうなのかは意外に見えぬモノ……。総じて肉体的に早熟な選手のほうが「人間的にしっかりしている」ように見える精神的な早熟も伴うので、余計にそれが見えにくい。


減点法ではなく、加点法で選手を選ぶ森山監督


森山監督は「消える選手は消えていく。俺はそういう選手を何人も、何十人も観てきたから」と少し寂しそうに語りつつ、「最終的に誰が大成するかなんて分からないし、いま選んでいる全員が消えましたということだってあるかもしれない。それはそうだよ」と笑いつつ「でも、だから良い競争をして、代表で意識を変えて良い習慣を身に付けて帰ってほしいと思っている。俺は減点法じゃなくて加点法で選手を選びたいと思っている」と断言する。弱点のない選手ではなく、とがっていてピッチ上で貪欲な選手たちに、自分を磨く方法論を授けて見守りたい考えだ。



日本サッカーの裾野が広がり、雑草がたくましさを増し、種類だって増えたのは確かだろう。一方で、エリートをより上の領域に引き上げるという部分では必ずしもうまくいっていない現実がある。選手に「お前らは消える。もっとサッカーに対して一所懸命な無名選手が必ず伸びてくるぞ」と過去の事例も出して危機感を促しつつ、前向きに戦うやつを拾い上げたいとする、森山監督が始めた新たなアプローチ。それが実を結ぶのかはまだ何とも言えないが、少なくともやる価値のあるチャレンジには違いない。(文・川端暁彦)



写真提供:getty images

シェアする
川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

このコラムの他の記事