W杯2次予選初戦、痛恨の引き分け。シンガポール戦に必要だった、二人のキーマンとは?

COLUMN川端暁彦の“プレスバック” 第4回

W杯2次予選初戦、痛恨の引き分け。シンガポール戦に必要だった、二人のキーマンとは?

By 川端 暁彦 ・ 2015.6.18

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「まあ、よくある話だ。気にするな」


相手GKの大当たりもあって、スコアレスドローに終わった、ロシアW杯アジア2次予選・シンガポール戦。その試合直後に思ったこと、否、「思おうとしたこと」は冒頭の言葉だった。ただ、現実的な話をするなら、よくあっては困る結果である。


言うまでもなくこれはW杯予選である。相手はすでに真剣勝負を1試合こなして戦意も旺盛。充実した心理状態で日本にやって来た。W杯2次予選は5チームのリーグ戦なので、日本は1戦目に試合がなかった。これについてスカウティングの面で有利に働くという見方もあるが、実際には力関係から「対日本」で相手のやり方は大きく変わるため、大して参考になる材料を得られない。日本は単純に充実した相手と戦うこととなった。気の抜けたイラクと当たった後の流れで。


組織的に守るシンガポールを崩し切れず


試合は最初の20分にあった幾つかのチャンスが決まっていれば、それで決着していただろう。この試合をアジアカップのUAE戦と同列視する声もあるが、立ち上がりで完全に油断するという、あってはならない事態だったUAE戦と比べれば、締まった内容で試合に入れてはいた。その意味で「同じような試合」とは思わない。油断したから勝てなかった、わけではない。


シンガポールにUAEのような個々の身体能力はなかったが、しかし強い闘争心と確かな戦術的規律を維持していた。サッカーはチームの士気に戦果が大きく左右されるスポーツだが、その点でシンガポールが日本を上回ったのは否定できないだろう。組織立ってタフに守る相手を、日本は攻め切れなかった。


その原因を「中央に固執したこと」に求める声もあるが、それはあくまで前半の話。後半の日本で目立ったのはむしろサイドからのクロス攻撃の頻度の高さで、しかも相手が戻りきった状況や性急さを感じさせるタイミングから放り込まれる、確率の低い攻めの繰り返しだった。


内田篤人と川又堅碁。二人の負傷離脱者がいれば…


この試合で不在が悔やまれた選手は二人いる。一人は右サイドバックの内田篤人で、冷静沈着に戦況を観て行動できる彼がいれば、と思わざるを得ない単調さだった。もちろん酒井宏樹には彼の良さがあるのだが、こういう試合で出せるタイプの良さではない。


もう一人は名古屋のFW川又堅碁である。メンバー発表の席上、他ならぬハリルホジッチ監督が「他のFWと比べて技術は劣るかもしれないが、彼にはパワーがある」と語っていたように、競り合いの中で強さを発揮するタイプ。パワープレー気味の放り込みを繰り返すことになった試合展開を思えば、川又のようなタイプが確かに必要だった。指揮官もこうした試合展開をあり得るものと想定していたからこそ、川又をメンバーに入れていたのだろうし、その意味で彼の負傷離脱はチームにとって不運だった。


この予選に向けたマネジメントという意味で言えば、追加招集で選ぶべきは俊足タイプの永井謙佑ではなかったのかもしれない。Jリーグで言えば、豊田陽平のようなパワータイプのFWが必要だった。これが予選のマネジメントの難しいところで、目標を3年後のロシアW杯と捉えるなら、現在30歳の豊田をチームに加えることよりも、26歳の永井を手元に置いておきたくなったのも分からなくはない。


アジアの戦いは決して甘くない


とはいえ、いまを勝たなくては3年後もない。アジア予選を甘く見積もる風潮もあった中で、まずはこの引き分けが指揮官と選手の心理面で、ポジティブに作用することを期待したい。アジアは甘くないし、それは2次予選という段階からしてそうなのだ。1位抜けしか確実に最終予選へと辿り着けないレギュレーションを思えば、残る試合で1度の負けも許されない状況に陥る可能性もある。


いきなり背水の陣を敷く羽目になった日本代表だが、そうした緊張感はチームと個人の成長にプラスの作用をもたらすもの。特に経験の浅い選手たちが、このタフな予選の戦いを通じて選手として一皮むけることを強く期待したい。(文・川端暁彦)



写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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