大観衆の前で恥をかいた“プロ予備軍”U-18 Jリーグ選抜の未来

COLUMN川端暁彦のプレスバック第35回

大観衆の前で恥をかいた“プロ予備軍”U-18 Jリーグ選抜の未来

By 川端 暁彦 ・ 2017.2.28

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2月18日に鹿島と浦和の間で行われた『FUJI XEROX SUPER CUP』。それに先立つ、いわゆる“前座試合”として、今年も「ネクストジェネレーションマッチ」が開催された。今年で8回目となる、日本高校サッカー選抜とU-18 Jリーグ選抜が相撃つ恒例行事だ。


通算成績は2勝3分2敗の五分。ただし、今回ほど下馬評に差のあった試合はちょっと記憶にない。通算は五分ながら、過去3年では0勝1分2敗と大きく負け越していたJ選抜側の意気込みは相当なもので、チームを預かることになった佐藤一樹監督(普段はFC東京U-18監督)には松永英機Jリーグ育成ダイレクターなどから相当なプレッシャーがかかっていたようである。


要するに「勝て!」ということ。佐藤監督は、松永ダイレクターはもちろん、年代別日本代表のスタッフにも連絡を取りながら選手を選考。“ガチ”なメンバーを選び抜いた。


史上最強のメンバーを集めたJ選抜


世間的な知名度で言えばFW久保建英(FC東京U-18)くらいしか有名選手はいなかったかもしれないが、U-18日本代表に準ずる陣容と言っても過言ではないラインナップ。メンバー発表のニュースを観た高校選抜の黒田剛監督(青森山田高校)は「その時点で、もう逃げ出したくなった」と笑って振り返ったほどである。


J選抜の関係者は「史上最強のメンバーを集められた」と振り返ったが、別にハッタリではないだろう。確かに、それくらいの選手がそろっていた。試合前日、私はU-15日本代表候補合宿を取材していたのだが、その場に足を運んでいたJFA関係者たちも「このメンバーでJ選抜が負けるはずがない」という雰囲気。筆者も勝負という意味では分からないんじゃないかと思ってはいたものの、0-4などというスコアになるとはまるで思っていなかった。


そう、随分な大差で高校選抜が勝ったのである。


高校選抜が一歳年長だという点はあるにはあるのだが、Jリーグ入りする選手たち、たとえば先のJリーグ開幕戦で試合に出場したFW岩崎悠人(京都橘高校→京都)、MF高橋壱晟(青森山田高校→千葉)、原輝綺(市立船橋高校→新潟)、DF杉岡大暉(市立船橋高校→湘南)といった一線級はほぼ不参加。


GK廣末陸(青森山田高校→FC東京)が急きょ試合前日から合流して参加することになったのは大きかったが、進学する3年生たちのコンディションは万全ではない。仮にJ選抜が進学する3年生とプロに行く選手2名ほどを加えていたとしても、そこまで大きな戦力アップにはならないだろう。今回のメンバーはタレント性という意味で言えば、そのくらい申し分ない顔ぶれだったのだ。


信じられないミスで相次ぐ失点


大会に向けた練習も、宿舎でのムードも、別に悪いものではなかった。というか、むしろ良かったのだと言う。選手、スタッフ、関係者の証言はこの点で一致している。佐藤監督もかなりの手ごたえを感じていたそうである。


しかし蓋を開けてみれば、誰一人として思い描いたようなプレーをできぬまま、試合終了の笛を聞くこととなった。試合を視察していたJFAのスタッフが「まさに完敗と言うほかない」と、何とも渋い表情を浮かべていたのが印象に残っている。


選抜チームだから、連係面に難があったというのはなくもない。ただ、年代別日本代表で共にプレーしていた選手も数多くおり、そればかりに原因を求めるのは無理があるだろう。


現実として試合の要所という要所で信じられないようなミスが出て失点が続き、ゲームは壊れてしまった。“個”がさらされがちなオールスターゲームでありながら、攻撃面で個性を出せた選手は数えるほど。消えたまま終わってしまったアタッカーも少なからずいた。言い訳しようのない内容であり、結果だった。


大観衆の前で恥をかくことの意味


「所詮はエキシビジョンマッチ」という見方もあるだろうし、実際にそう言って彼らを慰めようとした人もいたかもしれない。ただ、当事者の反応はちょっと違った。佐藤監督は試合後、「俺もお前らも恥をかいたな」と切り出した上で、「でも1万人以上が見守るなかで、こんな恥をかける経験なんて普通はできるものじゃない。この悔しさをどう感じて、どう生かすかだ」と説いた。試合後、悔しさをにじませない選手はいなかったし、開口一番「すいませんでした!」と謝ってきた選手までいた。


今回のJ選抜はほぼ全員がプロになるであろう選手たちである。それが、なかなかないほどの「恥をかいた」。力を見せ付けてやろうと自信を持って臨み、多くの観衆の視線にさらされた試合で為す術なく敗れたのだから、確かにキツい経験には違いない。Jユースと高校サッカーの間にある独特のライバル感覚が彼らの味わった「恥ずかしさ」を加速させたことも想像に難くない。だからこそ、その「恥」が財産になる。


順風で伸びていく選手より、逆風を受けたときに強くなる選手がホンモノのタレントだ。プロの生存競争を勝ち抜いていくことを求められる彼らは「温室の花」であってはいけない。個人的には、彼らがそれぞれの所属チームで安易な慰めの言葉を贈られていないことを祈りたいくらいである。


大観衆の前で恥をかいてしまった彼らが、この機にちょっと違ったマインドを手にしてくれたのであれば、この大会は確かにネクストジェネレーション、次世代への種まきとして機能したことになる。(文・川端暁彦)

写真提供:getty images

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川端 暁彦

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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