本田、岡崎、香川のメンバー外から見る、ブラジル、ベルギー戦の本当の狙い

COLUMN河治良幸の真・代表論 第1回

本田、岡崎、香川のメンバー外から見る、ブラジル、ベルギー戦の本当の狙い

By 河治良幸 ・ 2017.11.8

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ロシアW杯の本大会まで7ヶ月と迫った11月の欧州遠征は、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司がメンバー外となった。記者会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「まずは他の選手をテストするために(彼らを)選んだということだ」と語る。


「その選手は今、パフォーマンスがいい。今挙げた選手たち(本田、香川、岡崎)については、前回の合宿で私は評価していない。彼らの本来のパフォーマンスを見つけるべきだ。他の選手よりもいいパフォーマンスを見せてくれたらここにいる」


その前回の招集からも外れた本田はパチューカで着実に地位を築きつつあり、香川はリーグ戦で途中出場が続いていたものの、ドイツ杯の2回戦マクテブルク戦でゴールを決めるなど、これまでに比べて極端に調子が下がっていたわけではない。


岡崎にいたっては今季リーグ戦で4得点をあげている。10月31日の代表メンバー発表前の29日、クロード・ピュエル氏がレスターの新監督に就任して最初の試合は後半途中からの出場となったが、メンバー外となる決定的な理由とは考えにくい。今回の選考に関して、キャプテンの長谷部誠は印象をこう語る。


「全体的に見ると後ろの守備陣はそんなに変わっていないというのはあるので、監督の中では前の組み合わせとか、そういうところでまだまだ競争意識をあおっているなというのを感じますし、もちろん後ろの選手も結果を出さなければ、ましてこういう強いチーム相手に、はじめて後ろも評価されるので」


逆に彼らを外したことより、今回のメンバーを選んだ理由からアプローチした方がイメージしやすい。ハリルホジッチはブラジルとベルギーという2つの強国に挑むシミュレーションを、選考の段階から進めていることは会見の内容からも分かる。


チームとしての伸びしろや選択肢を広げる選考


最終予選後の初の海外遠征で「世界トップレベルの2カ国を相手に、現在のベストメンバーをぶつけるべき」という意見もあるだろうが、今回の選手選考からは、今からメンバーを固め過ぎることなく、戦術的な幹となる主力を残しながら、“発見”の要素を積極的に組み込むことで、伸びしろや選択肢を広げたい狙いが見られる。


戦術的な幹となる選手、前回の2試合で明確な結果を出した選手、新たにテストしたい選手という3つの構成要素で選出したのが、今回の25人ということになるのだろう。戦術的な幹とはGK川島永嗣、DF吉田麻也、酒井宏樹、長友佑都、MF長谷部、山口蛍、FW原口元気、大迫勇也といった最終予選で継続的に主力を担ってきた選手たちだ。


彼らは現状どのような相手に対してメンバーを組んだとしても、指揮官の構想に入る選手たちで、今後もコンディションを落とさない限りは、ロシアに向けたベースとして想定されやすい。そこに最終予選の終盤で価値を示した乾貴士や井手口陽介、久保裕也、浅野拓磨、昌子源などが加わり、おおよそ主力が構成される。


もちろん彼らに関しても、ハリルホジッチはその都度「シミュレーションに見合う選手だから、招集しているに過ぎない」と主張するかもしれないが、基本的にやりたい方向性と選手の役割を想定した場合、コンディションをキープしていれば、今後も招集される陣容であることは間違いないだろう。


ブラジル、ベルギー戦は守備がフォーカスされる試合に


さらに、前回のニュージーランド戦とハイチ戦で連続得点を記録した倉田秋をはじめ杉本健勇、槙野智章など評価を高めた選手たちが、真の強豪国を相手にどれだけできるか。そして森岡亮太や長澤和輝という新たに興味をひいた新戦力で組み上げた結果として、常連からもメンバー外が出ることとなった。


もう少し戦術面に踏み込んで今回のメンバーを考えると、基本的にはこれまで以上にディフェンスがフォーカスされる2試合になることは間違いない。最終予選で言えばアウェーのオーストラリア戦が最も近いかもしれないが、さらに守備の局面でシビアな展開が予想される。そこでただ守り倒すだけでなく、ボールを奪って攻撃を仕掛けるシーンを何回作り出せるかが1つのカギになる。


ハリルホジッチは普段から、いかに効率よくゴールを狙えるかを逆算して攻撃をイメージするタイプの監督ではあるが、今度の2試合はそもそも攻撃時間、特に相手陣内でボールを回せる余地は限りなく少ないだろう。そこからシミュレーションした場合、中盤は相手の起点をタイトにチェックしながらボールを奪い、そこからシンプルに前線へつなぎ、チャンスと見ればゴール前までスプリントできる選手が必要になる。


守備から攻撃への切り替えがポイント


基本システムは[4−3−3]となるが、中盤3人の構成もより“守備から攻撃”という優先順位になる。今回の中盤は守備的MFを4人(長谷部、山口、井手口、遠藤航)、攻撃的MFを3人(倉田、長澤、森岡)という構成だが、中盤の3人が守備的MFの選手たちだけで構成される可能性があり、攻撃的なMFが入るとしても、倉田や長澤というボランチの経験も豊富で、攻守にハードワークできる選手たちだ。


長澤について指揮官は「守備も攻撃も本当に運動量豊富な選手だ。守備での役割もしっかりこなしつつ、攻撃でも何かもたらせる数少ない選手だと思う」と評価する。浦和で出場機会を得たのがここ最近ながら、ハリルホジッチが中盤に求める多くの要素を兼ね備えた選手であり、この2試合のパフォーマンス次第では“申し子”的な存在にもなりうる。


森岡に求められるのは、より攻撃面での決定的な仕事だろう。「最後のパス、得点、オフェンス面について評価できると思う」と指揮官は攻撃センスとゴールに向かう姿勢を高く評価する。一方で「もちろん伸ばすべきこともあり、特に守備面、デュエルの部分だ」と指摘するが、倉田や長澤よりもアタッカー寄りの役割が期待される。


カウンターをゴールに結びつける陣容


強豪2カ国を相手に[4−3−3]で臨む場合は、守備的MFの4人をベースに状況次第で倉田、長澤がそこに加わる。[4−2−3−1]の場合はトップ下の候補が森岡や倉田となり、指揮官がより堅守からのカウンターにフォーカスした“第三のオーガナイズ”として採用を示唆する[4−3−1−2]なら、乾や久保もトップ下候補に入ってくるかもしれない。


サイドハーフあるいはウィングの人選は、左サイドがチャンスの起点となる乾と原口、右サイドがストライカー色の強い久保と浅野という構成になり、前線はポストプレーに優れた大迫を筆頭に、ゴール前で高さと決定力を出せる杉本、そしてポストプレーと飛び出しの両面で活躍が期待できる興梠慎三という構成だが、これまで以上にカウンターから少ないチャンスを狙うことを意識した陣容と言える。


ただし同じコンセプトだとしても、森岡のところに香川、興梠のところに岡崎という変換は可能だ。本田はブラジルやベルギー相手にはサイドは向かないかもしれないが、よりインサイドで起用される契機となりえる。そこは監督がどう判断するかだが、現状は戦術的な幹になる選手と違い、テストが優先される立場にあるということだろう。


その中で香川について疑問があるのは、彼を外して他の候補をテストするなら、もう1つ前の段階で良かったのではないかということ。実際にアウェーのオーストラリア戦では守備のタスクをしっかり守りながらカウンターの起点になる仕事をしており、過去にも2012年のフランス戦など、カウンターに特化した試合で結果を残した実績もある。


そのあたりは筆者の様な外からの見方と、実際に現場で選手を見続ける指揮官のズレかもしれない。いずれにしても、ここから良い状態をしっかり作っていけば、来年3月の試合で彼らが復帰する可能性は十二分にある。


W杯に向けて選考が続く、メンバー入りという狭き門


おそらく3月のテストマッチの対戦相手が決まるのは、12月に行われるロシアW杯抽選会のあとだ。今回は純粋に欧州(ベルギー)と南米(ブラジル)から、それぞれ最強国の1つを選んだ様な形だが、次はいよいよ本大会をにらんだ“仮想◯◯”という2試合になる。


そこに向けて今回のメンバーは振るいにかけられ、そのパフォーマンスによって定着する選手と、他の候補のテストに回される選手が決まってくる。そこに本田、香川、岡崎の3人や怪我からの復帰が期待される柴崎岳、さらには国内組で参戦することが予想される12月のEAFF E-1で結果を残した選手などが、今回のメンバー外から“狭き門”を競う構図だ。


そこも純粋なコンディションだけでなく、戦術的な有用性も想定された選考になってくるはずだが、今回の2試合でどういう内容と結果になるかによっても今後のテストのあり方が変わりうる。まだまだメンバーの内外で競争は続くが、今回よりさらに2人少ない23人の最終メンバーに入るためには、熾烈な競争に勝ち残る必要があることは間違いない。(文・河治良幸)



写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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