韓国戦に惨敗でE-1タイトル逃すも“収穫ゼロ”ではない。ロシア行きの可能性がある選手は?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第3回

韓国戦に惨敗でE-1タイトル逃すも“収穫ゼロ”ではない。ロシア行きの可能性がある選手は?

By 河治良幸 ・ 2017.12.19

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3戦目で韓国に大敗し、E-1サッカー選手権のタイトルも逃した“ハリルジャパン”が、多くの批判にさらされている。優勝した4年前のE-1(旧名、東アジア杯)から大会MVPの山口蛍や3得点の柿谷曜一朗など、多くのブラジルW杯メンバーが出たこともあり、メディアとしても煽った部分はあるし、多くの選手が優勝こそ個人のアピールにつながることを強調していた。


その帰結として見れば、北朝鮮と中国には勝ったものの、韓国に敗れて優勝を逃したチームにおいて、個人のアピールができた者は皆無と言うことになる。もちろん、そうした機運がメンバー選考に影響してくる可能性もあるが、ハリルホジッチ監督は韓国戦での負けを“力不足”と認めた上で、先の2試合で勝利できた手応えも強調している。


また、韓国戦後半の選手交代を見ても、ハリルホジッチ監督は劣勢の状況で早急に手を打って改善するよりも、まずは自分たちでどこまで解決できるのかを見極めるのに費やした。そこに関して納得行かないメディアやファンも少なくないかもしれないが、勝利にこだわるのがモットーであることを主張してきた指揮官が、結局何を優先していたかを察することはできる。


オプションとしての発見はあった


言い換えれば、そうしたゲームコントロールの部分で監督の期待に応えられた選手はいなかったということ。北朝鮮戦と中国戦にしても、経験豊富な今野泰幸をフルタイムで引っ張っていなければ、結果はどうなっていたか分からない。つまりE-1から戦術的な幹を形成できる新戦力を見出すことはできなかったし、残り半年間、しかも本大会のメンバー発表までに3月の2試合しかない実情を考えれば、彼らに急成長を期待し、テストで確認する余地は残念ながら無い。


しかしながら、オプションという観点に立てば興味深い“発見”もあった。本大会で対戦するのは韓国ではなくコロンビア、セネガル、ポーランドだ。総合力は欧州組を加えた韓国より“格上”だが、ここから半年間スカウティングをし、対策を立てて臨める相手でもある。そのためのオプションになりうる選手が誰かということ。つまり吉田麻也や大迫勇也、長谷部誠などチームのベースとなる主力に加わるオプションの発掘という意味で、ある程度の成果はあったと考えられる。


その1人は右サイドの伊東純也だ。北朝鮮戦は途中から、中国戦と韓国戦はスタートから出場し、縦の突破力はもちろん飛び出しからゴールを狙う姿勢や、176cmとそれほど大きくはないものの、深い位置でのロングボールに競りかけるデュエルも勇敢だった。


中国戦で右足を打撲し、韓国戦に万全の状態で出られなかったのは残念だが、それでも指揮官は資質を見極めたかったことが分かる。伊東は中盤であまりつなげない相手に対し、シンプルにサイドの高い位置までボールを運べるオプションとして、浅野拓磨、久保裕也、本田圭佑などに無い強みを見せた。例えばポーランドは中盤の組み立てがシンプルで速く、プレッシングの組織もソリッドであるため、中盤で優位に立つことは難しい。


そうした相手に対し、現状では1トップには大迫、左に原口元気の起用が想定されるが、右に伊東の様な選手がいれば、短い攻撃時間で左右と中央の高い位置を起点としやすくなる。それにより相手がディフェンスラインを下げれば、井手口陽介や山口蛍によるプレス、ボールを奪ってショートカウンターという形も作りやすくなる。韓国戦で1失点目につながった守備対応など、本大会に向けて課題はあるが、オプションとして割って入る資質は示したのではないだろうか。


理にかなっていた、植田の右サイドバック起用


多くのメディアやファンから疑問の声もあがった植田直通の右サイドバック起用は、本大会を視野に入れた場合、実は理にかなっている。なぜならば、対戦する3カ国は全て右サイドの突破力を強みとする国であり、得点の多くが右サイドを起点にもたらされているからだ。つまり、日本の右サイドバックは縦の対応以上に、対角線から飛んでくるクロスを跳ね返す能力が求められる。


特にセネガルはケイタ・ディアオやエムバイ・ニアングといったセンターFWもつとまる大型の選手が左サイドに張り、ワイドな位置のポストプレーや逆サイドからのクロスに飛び込むプレーをしてくる。他にも多様な仕事を求められるコロンビア戦やポーランド戦は、本来の主力である酒井宏樹の方が安全だが、よりシンプルにデュエルが求められるセネガルなら植田の特性が出やすい。中国戦で途中まで左サイドに張っていた相手エースのユー・ダバオを封じたことで、一般的な植田の評価より指揮官のそれは高まったのではないか。


またセネガルはセットプレーに190cm前後の選手が5、6人並ぶチームで、コーナーキックはコロンビアやポーランド以上に脅威となる。植田が入ったとしても日本が体格で劣勢であることに変わりはないが、韓国の長身FWキム・シンウクに対して「正面から当たっても負ける気はしない」と語る植田が、例えば195cmのカリドゥ・クリバリをマークしてくれたら心強い。


基本的なサイドのポジショニングは手探り状態で、右サイドにCBがもう1人いるという状況になってしまうのは仕方ないところ。本当なら10月の親善試合あたりから試しておけば良かったが、おそらく抽選結果を見てより必要性を強めたオプションなのだろう。


主力の座を脅かすパフォーマンスができた選手は?


一方でCBをつとめた三浦弦太は高い位置から裏へのスピードに加えて、対人のデュエルでもかなり頑張っていた。またフィードの精度という点も興味深い。ただし、本人も認識する通り周囲への自己主張が弱く、韓国戦の3失点目も植田とのコミュニケーション不足が要因となっており、その点を早急に改善していけなければ、右サイドバックとのマルチロール枠で植田が優先されるかもしれない。


また、少ない時間帯で存在感を発揮した川又堅碁と阿部浩之は組織的な仕事や戦術的な要求に応える動きということで、土居聖真や小林悠など先発メンバーよりアピールができていなかったのかもしれない。しかし、少ない時間でも相手に対して怖さを示したことで、22、23人目のオプションとして目にとまっている可能性はある。仮にそういう評価で来年3月や最終メンバーを絞り込む前段階の30人枠などに入れば、そこから猛アピールで滑り込む余地はある。その意味でも良いオフを過ごし、Jリーグの開幕戦から活躍できる様に準備していってもらいたい。


少し残念だったのは、キャプテンマークを巻いた昌子源や左サイドバックの車屋紳太郎など、継続的に招集されていたメンバーが主力としてチームを牽引しきれなかったことだ。彼らは23人の枠では引き続き候補だが、2、3番手からレギュラーを狙う位置から主力の座を脅かす意味で、E-1においては明確なアピールはできなかった。


また今回のE-1では怪我などの理由で参加できなかった選手にも、わずかながらチャンスがあると見る。ハリルホジッチ監督が会見で名前を出した中村憲剛については本人も継続的な選出には難色を示すコメントを発していたため、実際のところ事情は分からないが、海外組を含めて中盤からゲームコントロールができる適役が見つからなければ、最終段階で組み込まれる可能性もゼロではないだろう。ただ、現状はあまり大騒ぎすることなく、あくまで可能性の1つとして心に留めておくことにしたい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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