J開幕でチェックしたい、 ハリルジャパンに必要な"スペシャリティ"を持った選手

COLUMN河治良幸の真・代表論 第5回

J開幕でチェックしたい、 ハリルジャパンに必要な"スペシャリティ"を持った選手

By 河治良幸 ・ 2018.2.22

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Jリーグの新シーズンが開幕する。タイトル争いなど注目ポイントは多いが、やはりW杯イヤーということで、6月の本大会に臨む最終メンバーへの生き残り、滑り込みをかけた競争も大きな見所になる。特に3月23日のマリ戦、27日のウクライナ戦に向けた欧州遠征のメンバーは3月中に発表が予定されるため、3月9日から11日の週末に行われる第3節までの評価で絞り込まれる。


ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は昨年12月のEAFF E-1選手権が「国内組にとってラストチャンス」と語ったが、それは全体的な流れの話であり、実際はその大会で十分にアピールできなかった選手はもちろん、メンバーに選ばれなかった選手もチャンスが無くなったわけではない。


ハリルホジッチ監督は4年前のアルジェリア代表でも、複数の選手を3月の親善試合で初招集している。その1人が当時19歳だったナビル・ベンタレブだった。おそらく前年の予選突破の時点で、彼の代表入りを予想できた同国のファンはほとんどいなかったはずだ。


3月の2試合では本田圭佑、香川真司、岡崎慎司ら、前回の欧州遠征メンバーから外れた従来の主力選手、怪我から復調した柴崎岳、ポルトガルで得点を量産中の中島翔哉といった欧州組にも大きなチャンスであり、未招集の選手や常連ではない国内組には"狭き門"となる。


ただ、そこに扉はあるのは確かだ。現在の"ハリルジャパン"に不足している要素から国内組のアピールポイントを考察してみる。


代表に必要なスタンダードとスペシャリティ


その前提として考えたいのが、スタンダードとスペシャリティのバランスだ。前者であれば、ハリルホジッチ監督が就任からの3年間で強く求めてきたスタンダードである"デュエル"(1対1の強さ)や攻守の切り替えの意識、テンポの速いパスを正確にさばくことができるといった部分で、代表メンバーから大きく見劣りする様であれば、残りの期間でチームに組み込むことは難しい。


ただし、オプションとして絶対的なスペシャリティを持っていれば、多少スタンダードの課題に目をつぶり、招集の対象になるかもしれない。ただ、そうした選手は入れるとしても、23人枠の1人か2人だろう。


本大会を戦うために有効なスペシャリティをあげるなら、これらが該当する。


・裏への飛び出し

・ドリブルの突破力

・ミドルシュート

・セットプレーのキック

・空中戦の強さ

・ゲームコントロール


基本的にはベースがある程度あり、かつオプションになりうるスペシャリティを持っている選手が有力候補ということになる。


伊東、長澤は招集経験あり


E-1では伊東純也(柏)がその1人だった。攻守の運動量が豊富で、大きくはないが競り合いに強く、高速ドリブルからのクロスという代表チームに足りなかったスペシャリティを持っている。また伊東の場合はサイドの高い位置を起点にでき、彼のインサイドにスペースを生み出せる戦術的なメリットもある。


少し前に遡ると、長澤和輝(浦和)はハリルホジッチ監督の求めるスタンダードをハイレベルに満たす選手であり、浦和で起用される様になってから、わずか数試合で欧州遠征のメンバー入り。そこからすぐに基本的なコンセプトを理解して、ベルギー戦に先発出場している。


彼の場合はトータルバランスが高く、中盤のマルチロールであることが強みだ。伊東のドリブルほどのスペシャリティは無いが、攻撃的なポジションで守備力を、守備的なポジションに攻撃力を加えられる万能性は貴重だ。


ただ、未招集の選手でハリルホジッチ監督のスタンダードをほぼ満たしている選手は、現時点ではいないかもしれない。いたらこれまでに招集しているからだ。ある程度のスタンダードは求めるとしても、現在の代表チームに足りないスペシャリティを持つ選手がアピールしやすくなる。


水沼、田口、中谷、奈良が持つスペシャリティ


例えば水沼宏太(C大阪)は、飛び出しからの得点センスと終盤の勝負強さが光る。献身的な守備から、攻撃に転じれば縦の仕掛けに加われる機動力は、代表チームに入っていきなり効果を発揮する可能性がある。


名古屋から磐田に移籍した田口泰士(磐田)は"アギーレジャパン"での経験があるが"ハリルジャパン"に招集されれば、フレッシュな戦力としてチームを活性化しうる。今野泰幸(G大阪)も認めた正確なボールコントロールとパスに加え、当時より守備のデュエルや縦の推進力が増しており、ミドルシュートというスペシャリティもある。新天地で開幕ダッシュの立役者になれば格好のアピールになりそうだ。本来はセットプレーキッカーの有力候補でもあるが、磐田には中村俊輔という正真正銘のスペシャリストがいるため、そこをアピールする機会は限られるかもしれない。


ハリルホジッチ監督の求めるスタンダードの1つとして"デュエル"をあげたが、それが圧倒的であればスペシャリティにもなる。特にセンターバックの守備の"デュエル"は現在の主力メンバーも、世界のトップクラスと戦うには十分と言えない。そこで大いにアピールできる選手がいれば、一気に序列を覆す可能性はある。


その資格者は多くはないが、中谷進之介(柏)はJリーグの外国人選手はもちろん、AFCチャンピオンズリーグでも相手FWを苦しめており、対人守備の最大値が非常に高い選手だ。強さだけでなく、個人のポジショニングでボール保持者に自由を与えない希少な存在でもある。


ただ、90分を通した安定感を向上させる必要があり、そこの成長を開幕からアピールしたい。その意味では奈良竜樹(川崎)も面白い選手だが、ゼロックスとAFCチャンピオンズリーグで三連敗中のチーム状態が、上向くかどうかも大きい。


アタッカーは若手選手も候補に


アタッカーには、点を取れるトップ下ということでFW起用も可能な江坂仁(柏)などが有力候補として想定できるが、多少スタンダードの部分で不足があっても、スペシャリティがある選手を22、23人目の候補として探す方が面白いかもしれない。


鹿島の安部裕葵や鈴木雄磨、鳥栖の田川亨介など20歳前後の若手選手も十分候補になる。大卒ルーキーのジャーメイン良(仙台)あたりも、開幕戦からゴールラッシュするようなら、勝負どころのジョーカーとして代表スタッフの目に留まる可能性はある。3月の欧州遠征で候補になるには、未招集の選手は開幕から3試合で複数のゴールが最低限のノルマになるかもしれない。


代表選考の基準はあるが、選手としてはチームを勝利に導く活躍をすること。そのためにベストを尽くす中で、代表監督にスタンダードやスペシャリティをアピールできれば、代表招集の芽が出てくる。そこが、W杯まで4ヶ月のJリーグで注目したい見所のひとつだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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