吉田麻也の負傷でスポットが当たるDFリーダーの存在。ベルギー遠征で名乗りを上げるのは誰だ?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第6回

吉田麻也の負傷でスポットが当たるDFリーダーの存在。ベルギー遠征で名乗りを上げるのは誰だ?

By 河治良幸 ・ 2018.2.28

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ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表はベルギーのリエージュで3月23日にマリ、27日にウクライナと対戦する。本大会の相手をにらんだ格好のシミュレーションとなるはずだが、大きな不安要素が生じてしまった。ディフェンスリーダーである吉田麻也(サウサンプトン)の負傷だ。


2月中旬、FA杯5回戦の前日練習でチームメートと激しく接触。左膝の内側側副靭帯を痛めてしまい、復帰まで5週間という見通しが出されている。サウサンプトン、吉田自身にとっても痛い離脱だが、日本代表にとっても"仮想セネガル""仮想ポーランド"を見込む相手に対し、戦術を確認するのにディフェンスリーダーがいないのはかなりのダメージだ。


ただ、こうなったら前向きに考えていくしかないのが、本大会に差し迫った状況でのチーム強化だ。現状は吉田を欠くとディフェンス面の不安が増すことはまぎれもない事実で、このタイミングであえて吉田がいない状況でのシミュレーションを図るとともに、新たな競争を生むことでチームを活性化する効果が期待できないわけではない。


ベルギー遠征が最後のテスト


吉田をのぞくセンターバックの有力候補は槙野智章(浦和)、昌子源(鹿島)、三浦弦太(G大阪)、植田直通(鹿島)、さらに12月にEAFF E-1選手権で招集された谷口彰悟(川崎)となっている。緊急対応としてはキャプテンの長谷部誠(フランクフルト)や今野泰幸(G大阪)も可能だが、本職の選手で構成を考えれば、基本的には彼らの中から4人が選出されるのが順当だ。


ただ、それで本当に良いのかを指揮官は今一度考えるべきだろう。3月下旬のベルギー遠征は、W杯本大会に向けたメンバー選考を考える最後のテストとなる。そこに主軸の吉田が離脱という誤算が起きたわけだが、本大会の戦力として可能性がある選手をテストするラストチャンスが巡ってきたとも言えるのだ。短い期間ではあるが、これまで招集していないメンバーを含め、あらためて探っていけば意外な発見があるかもしれない。


それを踏まえて上記の候補を確認すると、植田はこれまで公式戦でCBの起用が無く、谷口は浦和勢をのぞく国内組で挑んだE-1で招集されたものの、北朝鮮戦の1試合に止まった。Jリーグは開幕したばかりだが鹿島は3試合、川崎は4試合の公式戦を消化しており、国内組の中では多少のアドバンテージがある。ただ、実際はハリルホジッチ監督がここまでの代表合宿などから、どう評価しているかがポイントだ。


DFリーダー候補の一番手は昌子


現時点で吉田の相棒の一番手と言える槙野はFC東京とのJ1開幕戦で、代表選手としてはかなり軽率な対応で先制点を許したが、すぐにセットプレーの得点で挽回。その後は相手の選手交代などでややバタつくディフェンスを粘り強くまとめ、最少失点で試合を終えた。


三浦は名古屋との試合で代表監督が強く求めるデュエルの部分はさすがの部分を見せたが、CBとして連携面でうまく統率し切れずに3失点を喫した点はマイナスだった。今季の初戦であることを考慮すれば、第2節以降に期待したいところだ。


これまでの起用の傾向から、吉田の相棒としては槙野が一番手に来るが、吉田が不在のケースにディフェンスリーダーの"代役"を担う最有力候補は昌子だ。実際にこれまで吉田を休養させた昨年9月のハイチ戦で槙野とコンビを組み、E-1ではキャプテンマークを巻いて3試合すべてにフル出場している。昌子の強みは、周りと積極的にコミュニケーションがとれること。試合の流れに応じたゲームコントロールも監督の指示待ちではなく、自分たちで判断を促せる資質は吉田に通じる。


ただ、国際舞台の安定感の部分でまだ疑問符が付くのが現状だ。E-1の韓国戦では長身FWのキム・シンウクにうまく対応できず、失点後のゲームコントロールをうまくできなかった。ただ、1試合1試合、経験を積んでいることは間違いなく、国際経験の不安要素をさらに取り除く意味でも、マリやウクライナといった相手に対して、昌子がどう振る舞えるかをチェックするのは最も現実的なプランだ。


鈴木大輔の招集は?


その一方で多くのファンから期待の声があがるのは、希少な海外組である鈴木大輔(ジムナスティック・タラゴナ)。確かにスペインの厳しい環境で国際経験を積んでおり、2部とはいえ体格の違う外国人FWと常に対戦しているアドバンテージはある。代表スタッフもノーチェックということはないはずだ。ただ、1つ残念な情報として1月29日のスポルティング・ヒホン戦で0-2と敗れて以降、4試合続けてベンチとなっており、直近のパフォーマンスでアピールができていない。W杯本大会のメンバー発表まで残り2試合という段階で、リスクをかけて招集するには難しい実情だ。


CBの4人枠ということで考えれば、Jリーグにもテストに値するフレッシュなメンバーはいる。奈良竜樹(川崎)は180cmとCBでは大きくないが人に強く、いかなる相手にも怯まないメンタリティがある。また川崎で後ろからの組み立てに磨きをかけており、いきなり組み込んだとしても日本代表のスタンダードに戸惑う部分はそれほど大きくないだろう。最終的にリオ五輪のメンバー入りはならなかったが、国際経験もそれなりにある。


未招集選手も面白いが…


これまで招集外の選手では、中谷進之介(柏)も面白い存在だ。仙台とのJ1開幕戦はベンチから0-1の敗戦を見届ける形になったが、すでにAFCチャンピオンズリーグの2試合を戦っており、特に中国の天津権健との試合ではモデスト、アレシャンドレ・パトといったインターナショナルレベルのFWを相手にデュエルの強さを見せている。日本代表では未知数だが、誰にでも最初というものはある。ギリギリのタイミングではあるが、言い換えればテストするにはこのタイミングしかない。


ただ、奈良にしても中谷にしても、いきなりディフェンスリーダーの役割を担わせるのは酷であり、タイプ的にも積極的にチャレンジすることで持ち味が生きる選手たちだ。それは三浦や植田にも言えること。谷口はタイプ的にはディフェンスリーダーの素地があるが、代表メンバーの中で守備のリーダーシップをとる"余裕"を示していくのは難しいのではないか。現在のメンバーから見れば、彼らの誰かをスタメンで起用するとしても昌子か槙野のどちらかは必要で、本質的なタイプとしては昌子が軸になる。


もう1人、忘れてはいけない代表候補がいる。森重真人(FC東京)だ。ロシアW杯アジア最終予選の途中まで主力メンバーの1人だったが、昨年6月のメンバーから外れ、7月2日のC大阪戦で左腓骨筋腱脱臼(左足首)という重傷を負い、残りのシーズンを棒に振った。6月のメンバーから外れた理由についてハリルホジッチ監督は明言していないが、親善試合からアウェーのイラク戦という日程を考えて、吉田との固定的なセットで森重を起用するより、若い昌子に経験を積ませるチャンスと考えたのは確かだろう。その後、森重の負傷により一時的に外しただけなのか、構想外だったのかは不明なままになってしまった。


復帰戦で上々のプレーを見せた森重


怪我から回復し、浦和とのJ1開幕戦でスタメン出場した森重はセットプレーから槙野にゴールを奪われたものの、62%のボールポゼッションで攻めかかる浦和を相手にしのぎ切った。組み立ての部分で本来の持ち味を発揮できなかったが、守備面に関しては復帰戦としては上々のパフォーマンスだった。あとはハリルホジッチ監督がどう評価するかだろう。


代表戦では大型のFWに決定的なプレーを許してしまうシーンが目立ち、国際基準での守備能力は度々指摘されてきた森重だが、ディフェンスを統率する役割としては4年前のブラジルW杯より着実に積み上がっている。チャレンジ&カバーという関係で言えば、かつてのチャレンジよりカバー側の選手になってきているのが現在の森重だ。そうした意味で吉田の代役として、現在考えられる最適任者と言えるかもしれない。


今回の原稿を書きながら、昨年のオーストラリア戦で予選突破を決めた直後の昌子のコメントを思い出した。


「僕の前は森重真人君がずっと出ていた。偉大な人だけど、今回のことは悔しいはず。それでも、やっぱり喜んでくれていると思う。ここまで導いてくれたのは間違いなく森重君なので、彼の貢献度を忘れて欲しくない。だから、森重君の代わりに出てちゃんと結果を残せたのは、自分の中でもよかった」


その森重が再び代表メンバーとして復帰するのか。新たな候補が入るのか。3月中旬に予定される今回のメンバー発表の直前まで、選手たちは高いパフォーマンスで、本大会のメンバー選考までのラストチャスとなるベルギー遠征に向け代表入りをアピールしてもらいたい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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