逆風が吹き荒れるハリルジャパン。欧州遠征で出た課題を生かし、W杯に向けた準備へ挑む

COLUMN河治良幸の真・代表論 第8回

逆風が吹き荒れるハリルジャパン。欧州遠征で出た課題を生かし、W杯に向けた準備へ挑む

By 河治良幸 ・ 2018.3.30

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マリに1−1で引き分け、ウクライナに1−2で敗れた日本代表に逆風が吹き荒れている様に見えるが、マリ戦後とウクライナ戦後では、選手の反応に確かな変化が見て取れた。マリ戦後はヴァイッド・ハリルホジッチ監督が押し進める方向性の中で、何が良くて何が問題なのか迷いが表れていた。


一方のウクライナ戦では、洗練された組織的なサッカーを展開し、個の力もあるウクライナに対し、選手達はハリルホジッチ監督の方向性をベースとしながらも、各自が判断しながら戦ったことで、課題をダイレクトに感じる機会になった様だ。


マリ戦は相手の身体能力に苦しんだ部分はあるものの、どちらかと言うと“自滅”だった。それがマリ戦の結果と内容を受けて、監督のガイドラインや要求を聞くだけでなく、選手間で積極的にコミュニケーションをはかったことで、よりチームとしてオーガナイズされた状態で臨むことができた。その結果として、相手との力の差や課題を受け止めている選手が多かった。


日本が格下であることを認めた上で戦う


ただ、そこで痛感させられたのはFIFAランキング35位(ハリルホジッチ監督も指摘する通り、実際には20〜25位前後のチーム力はあると思われる)のウクライナと比較して、ベースの部分が不足しているということ。吉田麻也、酒井宏樹、香川真司らを欠いているとはいえ、力負けしてしまうのは厳しい現状を表している。


その指標で想定すれば、FIFAランキングが1ケタのポーランドはさらに“歯が立たない相手”ということになる。ハリルホジッチ監督は「我々がグループ突破の候補ではない。ただ、その候補がいつも勝つわけではない。我々は偉業を成し遂げる準備をしないといけない」と語っていたが、つまりは自分たちが“格下”であることを認めた上で、勝利のためにチャレンジするということだ。


逆風が強まる中で、ハリルホジッチ監督が本大会に向けた“秘策”を持っていることを期待する向きもあるが、それは正解とも不正解とも言えるかもしれない。言い換えるなら、何か目新しい術ではなく、ここまでの3年間のどこかで見せてきた要素をコロンビア、セネガル、ポーランドの特徴に応じて使い分け、効果的な戦いに持ち込むことがポイントになる。


これまで取り組んできたことの集大成


例えば、どこからプレッシャーをかけるのか。ボールを奪う位置をどこに設定して、中盤の守備をどういう形で相手に噛み合わせるのか。どこのエリアを突いていくのか。採用するフォーメーション、対戦相手に応じた選手起用など、何か1つというよりは複数の要素の組み合わせになってくる。


結局、目新しいことをしても、W杯直前合宿の3週間で植え付けることは難しい。それを踏まえた上で、ここまで取り組んできたオーガナイズにどういうオプションを加えるのか、組み合わせるのかといった準備の集大成を3カ国それぞれに向けてアプローチしていくことになる。とはいえ、ハリルホジッチ監督もそうしたアイデアをどう使うかまで、具体的には決めていない様だ。なぜなら、最終メンバーが決定していないからだ。


3カ国に対するスカウティングを進める中で、選手構成のイメージはできているはずだが、想定した選手が良いコンディションでメンバー発表を迎えられるかはわからない。実際に今回のベルギー遠征では、複数の選手が怪我で選外となり、井手口陽介や浅野拓磨の様にクラブで出番を失い、外れた選手もいる。


対戦国の特徴から導き出す、試合のイメージ


ハリルホジッチ監督が、W杯グループステージの3試合でどういう戦術的なオーガナイズで臨むのか、どういうメンバーを先発で送り出すのかはわからないが、3カ国の特徴からイメージできることもある。


初戦の相手コロンビアであれば、経験と守備が重要になる。彼らはベースの部分で日本より“格上”であり、試合展開に応じた変化を施してくる。ペケルマン監督は相手の研究に余念がない指揮官であり、対戦相手の力量がどうであろうとそのスタンスは変えない。そんな相手に対し、日本は試合の中で臨機応変に対応しながら、相手の起点を潰すことができる選手が必要になる。


長谷部誠や吉田麻也、長友佑都などは当然だが、今野泰幸が中盤にいれば司令塔アギラールに起点を作らせず、中盤でボールを奪って良いリズムをもたらせるはず。日本はDFラインで小さなギャップを生み出そうものなら、FWファルオカ・ガルシアに仕留められてしまう。そうしたことに注意しながら、攻撃の糸口を見出していく必要がある。


ポイントは対応力と共有


セネガル戦は機動力とアジリティ(敏捷性)が勝負に関わるため、トップ下であれば香川真司の様なアタッカーの存在が重要になる。ポーランド戦は3戦目ということもあり、体力面が勝負に大きく関わるだろう。それを考慮したスタメンになるかもしれない。ウクライナ戦で、粗削りながら対人戦で奮闘した植田直通をFWレバンドフスキにタイトに付かせる様な選手起用もカギになる。


このように、グループステージは各試合に応じた戦術、選手起用で挑むことになるが、求められるのは選手たちがハリルホジッチ監督の戦術を理解して実行すること。そして、状況の変化に対応する柔軟性と組織としての共有である。そうしたことが全てうまく噛み合って、“格上”の相手を上回ることができるのだ。


キリンチャレンジカップ・ガーナ戦の翌日(5月31日)に予定されるメンバー発表は悲喜こもごも。ある意味で、本大会以上に大きな注目を浴びるかもしれない。その中で大切なのは、選手たちが集中した状態で、大会に向けた準備に入っていくこと。そしてベルギー遠征時以上に、合宿で具体的なコミュニケーションを増やしていくことである。監督、選手の1つ1つの意識と行動の積み重ねが試合ごとの戦術に宿り、対戦相手を苦しめる力になるはずだ。(文・河治良幸)

写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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