アジア大会開幕。U-21日本代表はU-23世代の相手を倒し、アジアの頂点に立つことができるか?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第16回

アジア大会開幕。U-21日本代表はU-23世代の相手を倒し、アジアの頂点に立つことができるか?

By 河治良幸 ・ 2018.8.13

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14日、インドネシア・ジャカルタで開催中のアジア大会、日本の初戦が行われる。森保一監督がU-21代表とA代表を兼任する形になって迎える、最初の大会となる。日本はグループDでネパール、パキスタン、ベトナムと対戦するが、ベトナムは今年1月に行われたU-23アジア選手権で準優勝しており、東京五輪をにらみU-21で臨む日本の強力なライバルになる。


グループリーグ突破の条件として、グループ2位以内に加えて、グループ3位の内、全体の上位4チームまでが決勝トーナメントに進むことができるが、仮に2位通過となった場合はグループEの1位と対戦するため、いきなり優勝候補の韓国と当たる可能性が高い。


韓国はU-23のほぼフルメンバーにソン・フンミン(トッテナム)、ファン・ウィジョ(ガンバ大阪)、そしてロシアW杯で一躍有名になったGKチョ・ヒョンウ(大邱)のオーバーエージを加えたスーパーチーム。優勝するためにはどこかで倒すべき相手ではあるが、その前に1つでも多く勝ち進み、森保監督の掲げる「ベスト4以上」を達成するには、できるだけグループ首位通過にこだわっていきたいところだ。


主なシステムは3-4-2-1


予選を免除されている東京五輪に向けて、貴重な真剣勝負の場となる今大会。見どころのひとつは、A代表を兼任する森保監督がどのような戦い方をするか。森保監督は西野朗監督が率いたA代表のコーチとしてロシアW杯に臨むため、今年5月に参加したトゥーロン国際は横内明展コーチが監督を代行。そのトゥーロンも含め、一貫して3-4-2-1で強化を進めてきている。サンフレッチェ広島を三度のJ1優勝に導いた、森保監督の代名詞とも言えるこのシステムがベースとなるはずだが、ここから先は状況により、複数のシステムを使い分けられるチームを目指していくと見られる。


「ロシアW杯に帯同させてもらって、西野監督からいろいろなことを学びました。戦術的なところも今までやっていた形プラス、システムだけではないですけれど、システム上もいろいろな変化をもって戦うトライは、今大会でどうするかは分からないですけれど、チーム作りをしていくうえでトライしていきたいと思っています」


今大会のメンバー発表でこう語った森保監督。「A代表と五輪代表のコンセプトは同じで、共有しながらやっていきたい」という戦略から考えれば、今大会のチームは東京五輪への強化と選手の見極めプラス、A代表の活動に向けた指標にもなる。「世代間を融合していきたい」と語る森保監督から評価を受ければ、今回のメンバーの中から来年1月のアジアカップを目指すA代表に抜擢される選手が出てきてもおかしくない。


招集メンバーは各クラブから1人


DF橋岡大樹(浦和レッズ)や安部裕葵(鹿島アントラーズ)など、今秋のU-19アジア選手権に出場資格のある99年以降の生まれの選手は選考対象外となり、シーズン中であるためJリーグの各クラブから1人という制約があった中で招集された今回のメンバーだが、見方を変えれば森保監督に五輪代表とA代表の両方でアピールするチャンスだ。


MF堂安律(フローニンゲン)、MF伊藤達哉(ハンブルガーSV)、DF冨安健洋(シント=トロイデン)、GK山口瑠偉(エストレマドゥーラ)の海外組も招集外となったものの、森保監督が「視察も多く重ねていますし、その中で良いパフォーマンスをしている選手を中心にメンバー選考をしています」と言う通り、生きのいいタレントが揃った。


MF三好康児(北海道コンサドーレ札幌)、DF板倉滉(ベガルタ仙台)、MF遠藤渓太(横浜F・マリノス)、MF初瀬亮(ガンバ大阪)など、すでにJ1のクラブで主力を担う選手も多く、J2の上位クラブで異彩を放つFW前田大然(松本山雅)やMF渡辺皓太(東京ヴェルディ)も興味深い存在だ。五輪代表はもちろん、きっかけ1つでA代表に飛躍してもおかしくない。言い換えると、シーズンの真っ最中にクラブが貴重な戦力を提供した形でもあり、参加する選手たちも並々ならぬ覚悟と意気込みで”森保ジャパン”に合流しているはずだ。


過密日程をどう戦うか


そうしたメンバーの中で5人の大学生が参戦しており、特に川崎フロンターレで特別指定となった三苫薫(筑波大)と旗手怜央(順天堂大)には注目だ。今回はFC東京で台頭しているDF岡崎慎とJ3で活躍中のMF舩木翔(セレッソ大阪)が初選出となったが、舩木は残念ながら辞退となった。代わりにジュビロ磐田からDF大南拓磨が追加招集された。J1の出場は3月のサンフレッチェ広島戦の1試合のみだが、3月のパラグアイ遠征を経験済み。高さとスピードを兼備し、対人戦に強さを売りとするストッパーがアジア大会で活躍すれば、代表チームはもちろん、クラブにも大きなアピールになる。


選手には所属クラブで起用されているポジションが存在するが、3-4-2-1をベースに4バックの可能性も探っていくチームにおいて、20人で過密日程を戦う中で、森保監督がどう起用していくかも注目ポイントとなる。


例えば板倉はベガルタ仙台で3バックの左ストッパーを担っており、今回のチームでも同じポジションでの起用が予想されるが、大南が加わったこともあり、状況によっては過密日程を戦うにはやや手薄なボランチで出場する可能性も考えられる。シャドーがメインのポジションになる岩崎悠人(京都サンガ)も左サイドのスペシャリストである船木の辞退により、左のウィングバックをこなす必要が生じてくるかもしれない。もっとも、夏場に18人で6試合をこなす2年後の東京五輪を見据えれば、格好のシミュレーションとも言える。


グループの中で力が落ちると見られるネパールとの試合でスタートするアジア大会だが、慣れない環境で想定外のことも起こりうる。この年代の課題として、森保監督は国際舞台の経験不足やゲームコントロールなどメンタル面をあげるだけに、オーバーエージも含めたU-23世代を相手に、困難を乗り越えてアジアの頂点に立つことができるか。14日に初戦を迎えるアジア大会は東京五輪、さらにはA代表を見据える意味でも楽しみな大会だ。(文・河治良幸)

写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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