負ければ終わりのノックアウトステージ突入。アジア大会に臨む、若き日本代表が見据える未来

COLUMN河治良幸の真・代表論 第17回

負ければ終わりのノックアウトステージ突入。アジア大会に臨む、若き日本代表が見据える未来

By 河治良幸 ・ 2018.8.24

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インドネシアで行われているアジア大会・サッカー男子は、決勝トーナメントのラウンド16を迎える。D組を2位通過した日本は、日本時間24日の21時30分より、E組1位のマレーシアと対戦する。


日本はグループリーグでネパールに1-0、パキスタンに4-0と連勝したものの、今年1月のU-23アジア選手権で準優勝したメンバーを揃えるベトナムに0-1で敗れ、2位通過となった。


一方のE組では、優勝候補の韓国がマレーシアにまさかの敗戦を喫して2位通過。この結果により、日本はラウンド16で韓国との対戦を避けられたばかりか、韓国やU-23アジア選手権優勝のウズベキスタンが居並ぶ山を避けられた形となった。とはいえ、森保一監督や選手たちは狙って2位になった訳ではなく、あくまでベトナムに勝って弾みをつけ、決勝トーナメントに挑もうとしていたはずだ。


スムーズさを欠いた初戦


初戦のネパール戦を振り返ると、早い時間に長沼洋一のクロスに三笘薫が合わせる形で先制に成功。その後はほとんどチャンスを与えず、終始ボールを支配していたものの、追加点を奪って仕留めることができなかった。


初戦特有の硬さが出たことは間違いなく、慣れないメンバーもいる中で、このチームとしての目線を揃えることができていなかった。日本人の行徳浩二監督が率いるネパールは3-4-2-1のウィングバックにマンツーマンで対応するなど、守備重視で日本のストロングポイントを消してきたが、組み立て、仕掛け、フィニッシュの流れでスムーズさを欠いていた。


続くパキスタン戦では「シンプルに縦のボールやクロスを増やすことも大事」というベクトルが示され、4-0という結果に結びついた。パキスタンはネパールよりもカウンターからの押し上げを意識したことで、最終ラインの裏に隙が生じやすかったという違いはあるが、前田大然、岩崎悠人、旗手怜央という鋭い飛び出しを得意とする3人が前線に並んだこともあり、3トップ気味にアグレッシブに裏を狙い、そこに対して3バックの岡崎慎や大南拓磨がシンプルにボールを当てていく形はネパール戦であまり見られなかった。


積極性が実る形で前半のうちに4-0と勝負を決めたのはよかったが、依然としてポゼッションから連動したコンビネーションで崩していく形は得点につながらなかった。おそらく、現地入りしてから十分なチーム練習ができていないことが影響しているのだろう。


ネパール戦とパキスタン戦は中1日、そしてベトナム戦に向けては中2日あったものの、宿舎から近い練習場が現地の学校施設しかなく、リカバリーから軽いボール回しや短い距離のパス交換ぐらいしかできなかったことは、チームとしての完成度が高いベトナムとの組織力の差となって表れた。


流れを変えられなかったベトナム戦


立ち上がりからハイプレスをかけ、セカンドボールを起点にフィニッシュに持ち込もうとするベトナム。日本は3バックとボランチの神谷優太、渡辺皓太のところから組み立てようとするが、神谷の手前でボールがイレギュラーバウンドしたところを奪われると、ショートカウンターで攻め込まれて失点。「まあ、僕の責任です」と神谷は語るが、問題だったのは失点の時間からしばらく立て直せず、似たようなシチュエーションから追加点を奪われてもおかしくない状況が続いてしまったこと。


森保監督は「最初の時点では圧力を受けて、判断に迷っていたところがありましたが、前半の途中からは少しずつでき始めたかなと思います」と振り返るが、ポジショニングの工夫により、多少後ろからのビルドアップに改善が見られたぐらいで、ベトナムの圧力に押される状況は前半を通して変わらなかった。


もちろんU-21で参加している日本と違い、U-23がベースでオーバーエイジも加わっているベトナムは同格以上の相手だが、腰が引けてしまっていては、ボールを持つスタイルの中でイーブンの戦いには持っていけない。


「選手が(ベトナムを)リスペクトしすぎたというところだと思います。やる気を持って臨んでくれたと思いますが、私の話しかけが上手く行っていれば、もっとチャレンジする姿勢が持てたかなと反省しています」(森保監督)


ベトナム戦では球際の競り合いなどでは、メンタル上の問題も明らかにあった。それに加えて、戦略面でもうまくいかない時間帯やリズムが良くないときに、どう立て直していくか。選手間での解決力を問われる結果となったのも確かだ。


森保監督は続ける。


「チームのコンセプトはもちろんありますけど、サッカーはピッチの中に立っている選手たちが相手と駆け引きをしながら戦って行く、上回って行くスポーツだと思います。選手が持っている発想やイメージ、アイデアを生かしてあげたいと思いますし、与えられるだけではなく、ピッチ内で修正能力や問題解決能力を養ってもらえるように働きかけないといけない」


1つ良かったことは、そうした課題をグループリーグの突破が決まった試合で経験できたこと。負けて良い試合はないが、このタイミングで教訓を得られたのは、大会を通して成長していくチームにおいて幸運だろう。


キャプテンの三好康児は次のように語る。


「僕らも子供じゃないですし、プロ選手としてやっています。それぞれが大人なので、試合を通して行く中でゲームの流れだったり、自分たちが何をしなければいけないのかを感じながらやらないといけない。監督は外から色々状況を言ってくれますけど、プレーするのは僕らなので」


ベトナム戦の後半は、これまでの3バックから4バックに変更。やるべきことを整理して、前半より多くのチャンスを作った。ただ、カウンターのリスクを負って攻めてもなお、得点に結び付けられなかったのは、ゲームコントロール以外にも足りない部分があったということだ。


マレーシアの戦い方


ポジティブな材料は、マレーシア戦に向けて中4日の時間が設けられたこと。フルコートを使った全体練習で、やるべきことを確認できる。当たり前のことだが、貴重な時間であることを噛み締めながら準備をしたい。


マレーシアは韓国に勝利して勢いに乗るとはいえ、ベトナムとは違った特徴があり、日本戦では手堅い守備からカウンターを狙ってくることが予想される。ベトナム戦の日本の戦いを分析していることは間違いなく、立ち上がりの数分間は前からプレッシャーをかけてくる可能性も頭に入れておくべきだろう。


ここからは1つのミスが命取りになるが、失点するような状況があっても、冷静にリカバリーして同点、逆転につなげていく。そうしたチームとしての共有が、個々の成長にもつながるはずだ。


慣れないメンバー編成と言っても、森保監督が五輪代表の監督に就任して5回目の活動であり、複数回の参加を経験している選手も少なくない。今回はJリーグがシーズン中のため、招集できるのが1クラブ1名であり、秋にあるU-19アジア選手権を見据えて、召集されていないメンバーもいる。堂安律や冨安健洋といった欧州組も選外となっており、今回のメンバーの中から、次に誰が招集されるかは全くわからない。


森保監督がA代表の監督を兼ねていることもあり、そのためのアピールの場とも言えるが、まずU-21日本代表として優勝を目指しながら、1つでも勝ち上がっていくこと。そのために何ができるかを考えて、答えを出すことが成長につながる。マレーシア戦は是が非でも勝利して、次のさらなる強敵に挑む権利を得ることを期待したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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