“サバイバル”南野拓実が持つ危機感と2列目の熾烈な競争

COLUMN河治良幸の真・代表論 第20回

“サバイバル”南野拓実が持つ危機感と2列目の熾烈な競争

By 河治良幸 ・ 2018.10.11

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「アジアカップまでのサバイバルに勝ち残って行きたいと思いますし、今回さらに質の高い選手ばかりなので、自分の特徴をしっかりアピールできれば」


3日目の代表練習を終えて、囲み取材に応じた南野拓実は開口一番にこう語った。約3年ぶりの代表復帰となったコスタリカ戦では縦の2トップ、事実上のトップ下として堂安律、中島翔哉らと鮮やかな攻撃を披露。後半21分には中島のパスを起点に、遠藤航のラストパスを受けた南野が難しい体勢で左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。


南野は復帰戦で結果を出したことに手応えを感じながらも「自分はまだ何も残してないし、何も成し遂げてない」と”サバイバル”に危機感を募らせている。その理由は、ロシアW杯組の合流だ。今回は足首に怪我を抱える香川真司、スペインの名門レアル・ベティスで継続的に出場している乾貴士は召集されなかったが、原口元気が復帰。コスタリカ戦でつけていた背番号8番も原口に渡った。


「W杯でやっている選手、(ロシアに)行っていた選手は質が高いし、すべての能力が高いのは今日も感じました。まあでも、自分の中ではわかっていたことなので、その中で自分の良さを出して、周りの選手と合わせていく。チームとして良くなっていければと思います」


大迫とのコンビネーション構築がポイント


コスタリカ戦で森保監督も高く評価した攻撃のコンビネーションについては、良い感覚をつかんでいる。「前回の試合でも感じましたが、2人(中島、堂安)はボールを持てるし、技術が高い選手なので、自分が真ん中にいる時はいい距離感でいればワンツーとか、自分が裏に抜けたらボールを出してくれる」と、やりやすさを語る。


堂安と中島はボールを持つと積極的に仕掛け、その中にコンビネーションを織り交ぜて行くタイプ。逆サイドの展開によっては、ファーサイドからの飛び出しなどもあるが、基本的にはボールを持ったところから勝負して行く選手たちだ。南野もボールは持てるが、よりシンプルなタッチと変化を織り交ぜて、相手ディフェンスのプレッシャーを吸収することもできる。だからこそ、森保監督は南野を中央で起用しているのだろう。今回は1トップの主軸と見なされる大迫勇也が合流したことで、彼と縦のラインをいかに築くことができるかも評価のポイントになりそうだ。


もっとも南野が「どこでプレーするか、今はまだわからない」と言及する通り、コスタリカ戦では中島に替えて天野純が投入されると、左サイドにポジションを移した。2列目から前線にかけて複数のポジションをこなせることは大きなアドバンテージだが、イメージするベースの部分は変わらない。


「今日(合宿3日目)の練習でも意識したのは、一緒に組む選手との距離感。どういうプレーが得意で、という話もしました。お互いの良さを引き出していければと思うし、自分の良さを知ってもらって、それを試合で出して行くことは意識しています」


目に見える結果を残したい


その中で「ゴールとアシストは一番に考えていること」と主張する。ザルツブルクでも結果を出し続けることで評価を上げてきた実績と自負があり、そのスタンスは日本代表でも変わらない。とはいえチームの勝利のためには、それだけでは十分ではないことも理解している。


「やっぱり、目に見える結果を残したい気持ちはあります。ただ、それ以外のビルドアップでの味方との関わりや、守備で味方とタイミングを合わせて、いいプレスをかけるとか、そういうところも絶対に必要になるので意識しつつ、ゴールとアシストにこだわって行きたい」


今回のメンバーにはロシアW杯組だけでなく、アンダー世代の代表チームで同僚だった北川航也が追加招集された。南野は95年生まれ、北川は96生まれで、2014年のU-19アジア選手権では準々決勝で敗退し、翌年のU-20W杯行きを逃した苦い経験を共有する。


その北川について「アンダーの時も一緒にやっていて、技術とか高い選手なのはわかっていましたし、清水で活躍しているのも知っていた」と語る。南野はセカンドトップが本職、北川はセンターFW寄りのタイプで共存も可能だが、システムによっては直接のライバルになる可能性も十分にある。南野は「確実に成長していると思うし、たくましくなっていると感じているので、自分も負けないようにアピールしたい」とライバル心を隠さない。


生き残りをかけて、毎試合が勝負

攻撃陣には、コスタリカ戦で南野と同じくゴールをあげたサイドアタッカーの伊東純也もおり、森保監督がパナマ戦、ウルグアイ戦でどういう布陣を考えているかは蓋を開けて見なければわからないが、与えられたチャンスでチームのタスクをこなしながら、ゴールやアシストといった明確な結果を出して行くビジョンを描いている。


南野にとって最初の大きな目標になるのが、来年1月のアジア杯だ。「チームが新しくなった中で、みんなが目指している目標というか大会なので試合に出たいし、メンバーに入って行きたい」と話し、メンバー争いに生き残っていくためには「目の前の試合で結果を残すしかない」ことを強く意識している。


まずはパナマ戦で周囲と攻撃のビジョンを共鳴させ、コスタリカ戦に続き、ゴールという明確な結果に結びつけることができるか。森保ジャパンの“サバイバル”生き残りを目指す、日本代表の新9番に注目だ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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