2連勝で首位突破のU-19日本代表。豊富な攻撃バリエーションが生んだ8得点。

COLUMN河治良幸の真・代表論 第21回

2連勝で首位突破のU-19日本代表。豊富な攻撃バリエーションが生んだ8得点。

By 河治良幸 ・ 2018.10.24

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インドネシアで開催中のAFC U-19選手権。初戦で難敵の北朝鮮を相手に久保建英(横浜F・マリノス)のFK弾などで5-2と大勝した日本は、続く2戦目の後半、タイに苦しみながらも3-1で勝利。ここまで、2試合で8得点をあげている。


大会前から注目された久保の他にも、3得点の宮代大聖(川崎フロンターレ)。2試合連続得点の斉藤光毅(横浜FCユース)。北朝鮮戦の駄目押しゴールに加え、タイ戦で鮮やかな2アシストをあげた安部裕葵(鹿島アントラーズ)といった選手が躍動しており、3試合目のイラク戦を経て、来年のU-20W杯の出場権をかけて臨む準々決勝にも、期待の持てる戦いとなっている。


2試合での得点力もさることながら、目を見張るのが多彩な攻撃パターンだ。北朝鮮戦ではセンターバックの橋岡大樹(浦和レッズ)を起点に右サイドの菅原由勢(名古屋グランパス)を経由して、ボランチの藤本寛也(東京ヴェルディ)が縦パスを通したところから最初の2得点が生まれた。


「(2得点とも)あまり変わらないですが、(菅原)由勢、(橋岡)大樹と郷家、(久保)建英の距離感を遠くないようにして、近くでボールを回すイメージでした。それが1点目、2点目に生きた部分だと思います」(藤本)


1点目は藤本が左足のワンタッチで右から中に流れた郷家友太(ヴィッセル神戸)に付け、そこからボールを受けた久保がカットイン。3人のディフェンスをかわし、左足の絶妙なスルーパスを斉藤光毅に通している。


「斉藤選手の抜け出しが良くて、それが見えていた」と久保が語った1点目と起点のルートは同じだが、全く違う形で決まったのが2点目だ。


再び橋岡、菅原、藤本と渡り、今度は左から流れてきた斉藤が受けて、トリッキーな足技で密集を抜け、左の伊藤洋輝にパス。大型ボランチの伊藤が左足を振り抜くと、ロングレンジと言っていい距離から豪快なシュートが決まった。


「スーパーゴールだったので、自分はパスを出しただけ」と斉藤は振り返るが、「(ボールを)もらった時(郷家)友太くんか誰かがいて、出そうかと思ったんですけど、無理だなと思って判断を変えた」と話す通り、複数の選択肢がある中で、より良いプレーを選んでいたことがわかる。

久保のスーパーゴールが決勝点


北朝鮮戦の決勝ゴールとなった3点目は、途中出場の宮代が素早く仕掛けたところを倒されて獲得した、久保の直接FKだった。「入ると思っていました」と久保が振り返るゴールについて、ベンチで見ていたキャプテンの齊藤未月は「スーパーだったと思います」と前置きしながら、セットプレーの重要性を語った。


「大会が始まる前から、セットプレーが大事だと思っていました。ああいうところで点を取れる選手はいますし、コーナーからいいキックに合わせる選手もいるので、そこはチームの強みだと思います」


一度は同点に追いつかれたものの、久保のスーパーゴールで3-2と勝ち越した日本。粘り強く戦いながら、後半45分に味方のクリアボールを拾った宮代が数十メートルを持ち上がり、正確なシュートでゴールネットを揺らした。さらに後半アディショナルタイムには、カウンターから藤本のパスを受けた途中出場の安部が、5点目のダメ押しゴールを決めた。


「(藤本)寛也くんからボールが来て、本当は(右から菅原)由勢が来ているのはわかっていたんですけど、パスが前の方に来たので。その流れでゴールが見えたので、シュートを打ちました」(安部)


流れの中で周囲の仲間や相手を視野に入れながら、複数の選択肢からプレーを選択する判断力、実行力はこのチームの特徴と言える。そうした傾向は北朝鮮戦から5人を入れ替えたタイ戦でも発揮された。キャプテンマークを巻いて先発した齊藤が「立ち上がりちょっとバタついた」と振り返るように、決して日本の流れではなかったが、冷静に相手の出方を見てチームでやるべきプレーを共有し、前半の途中から主導権を奪うことができた。


そして、左サイドを鋭く突き破った安部のチャンスメイクから、宮代の2試合連続ゴールが決まった。安部は一度縦にボールを出すが、相手に奪われそうになるところで加速して奪い返し、カバーにきたディフェンスをかわしてクロスを上げた。ボールはGKに弾かれたが、こぼれ球を宮代が押し込んだ。一人で相手の裏のスペースにボールを出し、自分で受けるプレーを”裏街道”とも呼ぶが、実はそういうイメージではなかったと安部が明かす。


「あれは“裏街道”したつもりじゃなかったんです。(左サイドバックの東)俊希が斜めに走ると思っていました。そうしたら止まっちゃったので行かなきゃと。でも、あそこで判断を変えていけるというのはコンディションがいい証拠ですし、今日は動けるんだと確認することができました」


大会前から、徐々にコンディションを上げている10番はそう振り返った。このシーンでも最初のイメージがある中で、思った通りに行かない状況で、とっさに判断を変えたことがゴールに繋がった。


守備と試合運びの課題を補う攻撃力


さらに前半42分には、宮代とのワンツーから鋭いカットインを仕掛け、スルーパスを受けた斉藤による2試合連続のゴールが生まれた。北朝鮮戦では左サイドハーフだった斉藤だが、この日は宮代と2トップを組んでいた。


「(宮代)大聖くんはすごくやりやすい。お互い、抜けたら入ってきて、抜けたら入ってきての繰り返しだと思うんですけど、大聖くんはキープ力もあるし、自分も自由にできるので、そこはうまく破れていたかなと思います」


そう振り返る斉藤は「動き出したタイミングでうまく(安部から)パスが出てきた。相手に当たってコースが変わったんですけど、コースがなかったので相手のタイミングを外して、ちょんちょんとうまく行った」とGKを右にかわしながら決めた、瞬時の判断を振り返る。


日本の大会8点目となるゴールをFKで決めたのは宮代。自身のドリブルから右足で放ったシュートを、相手ディフェンスがハンドリング。そのプレーで得たFKをペナルティエリア左手前から右足で巻き、壁を抜けてゴール左隅に突き刺した。宮代はチームで指定されたキッカーではなかったが、練習していた成果を発揮した形だ。


多彩な攻撃から2試合で8得点を奪う一方、北朝鮮戦は2失点、タイ戦でも3-0から1点返され、大きなピンチを何度も受けるなど守備面だけでなく、試合運びの部分でも課題を残している。とはいえ、個人技とコンビネーションを織り交ぜた多彩な攻撃バリエーション、判断力、実行力という持ち味を存分に発揮できれば、前回大会に続くU-20W杯の出場権獲得、さらにはアジア制覇の道も確かなものになってきそうだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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