森保ジャパンにあえて指摘する、アジアカップ制覇へ向けた課題

COLUMN河治良幸の真・代表論 第23回

森保ジャパンにあえて指摘する、アジアカップ制覇へ向けた課題

By 河治良幸 ・ 2018.11.27

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2019年1月にUAEで開催されるアジアカップまでに組まれた『キリンチャレンジカップ』の5試合が終了し、あとは年末に行われる代表合宿、大会に向かうメンバー発表を待つのみとなった。


当初はアジアカップまでの親善試合(6試合)で、多くの選手を起用したいという森保一監督のプランだったが、北海道で起きた地震の影響で”初陣”になるはずだったチリ戦が実現せず、その後も怪我人の影響で追加招集が相次ぐなど、順調に事が運んだとは言い難い。


それでも、2列目で中島翔哉、南野拓実、堂安律が躍動し、新たな日本代表の顔になりうるトリオとして注目され、10月のウルグアイ戦ではロシアW杯組のFW大迫勇也との組み合わせで可能性を見せるなど、アジアカップに向けてチームの骨格が固まって来ていることも確かだ。


ここでは攻撃、守備、選手層という3つの観点から、日本代表の現在地を整理したい。


■攻撃


5試合で15得点という結果を見れば、ポジティブな評価ができる。特にウルグアイ戦の4得点はオープンな展開になった状況を差し引いても、可能性を感じさせるものだった。2得点をあげた南野を始め、1得点の堂安はその他の2得点にも絡み、得点が無かった中島も1、2点目に直結するプレーで貢献した。彼ら3人を前線から牽引した大迫を含め、4人のアタッカー陣が初めて組んだ試合で”融合”を見せたことは、森保監督にとっても確かな手応えになったはずだ。


しかし、同じ4人のアタッカー陣で臨んだ11月のベネズエラ戦は、立ち上がりこそ相手のプレッシングの裏を突いて良い形に持ち込むシーンが目立ったものの、ベネズエラにブロック気味の守備を締められると攻め込めなくなり、ボールを奪われたところからカウンターを受けそうな場面もあった。


試合開始前の道路の大渋滞により、両チームともウォーミングアップが不十分な状態でスタートした試合ではあったが、組織的な成熟度が高いチームに本気でゴール前を固められると、そう簡単に点は取れないという現実を提示された、非常に有意義な試合だった。


迫力ある攻撃を展開


日本代表の攻撃の形を見ていくと、基本的にはセンターバックやGKを起点にサイドバック、ボランチにパスを当てて1クッション入れたところで、前線の大迫にくさびのパスを入れるか、2列目の3人にボールが入れば、縦への展開にスイッチが入る。アタッカー4人を中心とした速い攻撃から、セカンドボールが生じれば、ボランチやサイドバックが参加して波状攻撃に持ち込むという、従来の日本代表にはない迫力が魅力だ。


ただ、ターゲットマンの大迫はともかく、2列目の3人は個の仕掛けとインスピレーションがベースになっており、事前に決め打ちのパターンは準備していない。それが噛み合った時は周囲の予想もつかないようなコンビネーションが生まれるが、動きが重なった状態で相手の守備に引っかかることも少なくはなく、カウンターを受けるリスクとも隣り合わせになる。


そこでポイントになるのが、ボランチの2人やサイドバックがどれだけサポートできるか。そうすることでセカンドボールの奪取から二次攻撃に持ち込むとともに、守備の準備にもつながっていく。


興味深いのは大迫のポジショニングで、例えば堂安がオフ・ザ・ボールで中に流れた時には、いつの間にか右サイドに開いて縦パスを受けるなど、前線からバランスを整える役割をこなしている。2列目の3人にできるだけ自由にプレーさせるためには、大迫やボランチのサポートが生命線になりそうだ。


■守備


攻撃陣に比べると、ディフェンスの基本戦術は西野朗前監督が率いたロシアW杯から大きく変わってはいない。4ー4ー2の3ラインを組みながら、高さによってプレッシングとブロックを併用していくオーソドックスな形を取っており、その継承性が”初陣”のコスタリカ戦から、無難に守れている要因でもある。


その中での変化と言えば、20歳のCB冨安健洋が台頭し、ボランチに遠藤航が定着するなど、顔ぶれが変わりつつある。守備の懸念材料は、原口元気、香川真司、乾貴士の3人が2列目を担ったロシアW杯とは違い、攻撃が終わった後のファーストプレスが定まっておらず、いきなりサイドバックやボランチが縦のコースを切って対応するシーンが多くなってしまうこと。


2列目の中島、南野、堂安も守備をしないわけではなく、自陣に引いた時には下がってブロック形成に参加しているが、攻撃時に攻め切る方へとベクトルが傾いている。ウルグアイ戦は両チームともそのような状況のため、オープンな展開になるとともに、ベネズエラ戦では前線のFWロンドンを起点に、カウンターから危険なシーンを作られかけた。


ベネズエラ戦はCB吉田麻也がプレミアリーグで対戦経験のあるロンドンをタイトに抑え、冨安も粘り強く跳ね返したため大きな問題にはならなかったが、アジアカップでは、自陣に引いて守備を固め、奪ったボールを徹底的にロングキックで放り込んでくる相手には、これまでのチーム以上に苦しい戦いを強いられる可能性もある。


そこは攻撃と守備の考え方で、攻撃力で上回ることができれば相手は後手に回り、カウンターの脅威も弱まる。森保監督が対戦相手や流れに応じて、どのような選手を起用するか。とくに、負ければ終わりの決勝トーナメントは人選が重要になるだろう。


■選手層


攻撃と守備の両面から、ベースの陣容は固まって来ていることがわかる。ただし、オプションが心もとなく、攻撃で確実に効果を期待できるのは原口しかいない。キルギス戦で大迫のゴールをアシストした北川航也、コスタリカ戦、パナマ戦でゴールを決めた伊東純也も期待はできるが、頼りになるところまでは行っておらず、アタッカーの人選が難しくなりそうだ。


森保監督は11月末から欧州を視察しており、前線、2列目を中心にチェックしているはず。武藤嘉紀や久保裕也はもちろん、ロシアW杯組の香川真司、乾貴士、週末にレスターで今季初スタメンとなったベテランの岡崎慎司も候補に入っているだろう。アジアカップのタイトルを勝ち取るための経験と信頼を取るのか、大会中の伸びしろを含めた期待を取るのかで、陣容が変わってくるかもしれない。


戦術面から考えると、トップ下色が強く、攻守のバランス感覚に秀でた香川が復帰すれば、守備を固めてカウンターを狙う相手に対し、攻守の安定感はアップする。乾が左サイドに入れば、良くも悪くもカットインに偏る中島のプレーを補うことも可能だ。ただ、香川や乾を入れると、必然的にFWの枠から人数を減らす必要性が生じ、前線の駒を揃えにくくなる。アジアカップは1ヶ月で7試合を戦う過酷なレギュレーションであり、ポジションのバランスも考える必要がある。


充実のボランチ、選択が難しいサイドバック


ボランチは、森保監督の秘蔵っ子でもある青山敏弘が怪我で11月の招集を辞退。アジアカップまでにどれだけ回復できるか、見通しは不透明だ。一方で鹿島のACL制覇に貢献した三竿健斗と川崎でルーキーイヤーながら成長著しい守田英正が台頭しており、遠藤と柴崎岳が良いコンディションで臨むことができれば、大きな不安はない。


右サイドバックは酒井宏樹が健在で、そこに運動量が豊富な室屋成が加わる。左サイドは肺気胸で離脱していた長友佑都が所属のガラタサライでベンチ入り。順調なら、アジアカップでも元気な姿を見せてくれそうだ。


そうなると、良い意味で難しくなるのが佐々木翔と山中亮輔の”取捨”だ。佐々木はディフェンス力が高く、上背はそれほど無いがヘディングが強く、競り合いのポジショニングも良いため、攻守のセットプレーで役に立つ。山中は左足のクロスやキルギス戦で代表デビュー最速ゴールを決めたミドルシュートなど攻撃に魅力があり、左足のプレースキックは大会を戦う上で重要な武器になりうる。佐々木は確実に計算できるが、左サイドバックは場合によっては槙野智章もできるため、思い切って山中を抜擢するプランもあるかもしれない。


GK3人は横一線。シュミットの抜擢は?


センターバックに大きな不安はないだろう。経験豊富なキャプテンの吉田麻也を筆頭に冨安、三浦弦太、槙野と揃っている。槙野はキルギス戦で脳震盪を起こしたが、1ヶ月先のアジアカップには照準を合わせてくるはずだ。本来なら、ロシアW杯で国内組唯一のレギュラーを担った昌子源がいるが、12月のクラブワールドカップ後にはフランス・リーグアン、トゥールーズへの移籍が確実視されている。アジアカップは重要だが、今後を見据えて、無理に招集しない可能性が高いと見る。


GKは東口順昭、権田修一、シュミット・ダニエルが3ヶ月連続で招集されており、序列はほぼ横一線という状況だ。ベネズエラ戦で良質なビルドアップを披露したシュミットを、新たな守護神として抜擢するかどうかも注目されるが、安定感では東口に分があり、権田の経験と統率力もアジアカップのような大会では頼りになる。


GKは一人を固定したら大会を通して起用する傾向が強いポジションだが、2010年のアジアカップでは川島永嗣が退場して、西川周作が良い仕事をしたこともあり、3人が大会までハイレベルな競争をし、森保監督や下田崇GKコーチの判断を悩ませて欲しい。(文・河治良幸)

写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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