クラブW杯でレアルに完敗した鹿島。世界トップの相手と戦って見えたもの

COLUMN河治良幸の真・代表論 第25回

クラブW杯でレアルに完敗した鹿島。世界トップの相手と戦って見えたもの

By 河治良幸 ・ 2018.12.22

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鹿島アントラーズがアジア王者として参戦中の、FIFAクラブワールドカップ2018 UAE。初戦で北中米カリブ王者のグアダラハラに勝利し、欧州チャンピオンズリーグ3連覇中のレアル・マドリードに挑んだ準決勝は、1-3という結果に終わった。ドイツのシャルケなどで7年半プレーし、レアルとの対戦経験もある内田篤人が「点差以上じゃない?」と認めざるほど、力の差は歴然としていた。


最終ラインで奮闘した昌子源なども振り返るように”基本技術の差”と言ってしまえばそれまでだが、ボールを止めて蹴る技術に加えて、相手の守備に生じるスペースへの狙いなどの差が余裕の差となり、立ち上がりから頑張る鹿島を徐々に苦しめ、前半30分あたりを境に、主導権は完全にレアル・マドリードとなった。


「(立ち上がりは)相手も緩かったし、僕らの攻め手だったりを分析してたのかなと。やらせてくれた立ち上がりだったと思います。それだけです」


終盤に一矢報いるゴールを記録した土居聖真は、そう振り返る。レアル・マドリードのプレーを”なめていた”と感じる人も少なくないかもしれないが、実際にスペインリーグやチャンピオンズリーグで”格下”チームと対戦するときの彼らは大体そうであり、特別に鹿島を”なめていた”という見方を筆者はしていない。


レアルのリズムにハメられた鹿島


レアル・マドリードは戦力が互角と見なす相手、内田が言う所の「チャンピオンズリーグで常にベスト16以上に行けるクラブ」でなければ、基本的に様子見から入り、相手の特徴、戦術を掴み取ってハメて行く。序盤の鹿島は意外にボールを持つことができ、攻め込めるという状況の中で、いつの間にかレアルのリズムにハメられてしまったと言える。


しかし、そこにレアルの隙があることも事実で、何度かあったチャンスの1つがゴールになっていたら、一発勝負ということもあり、多少ながら早い時間にテンションを上げざるを得ない状況になっていたはずだ。それは彼らが”本気を出した”と見えるかもしれないが”格下”を確実に締め落とす、王者の戦いからは外れる状況だ。


「前半の30分ぐらいで、強度の違いは感じました。自分のコンディションはぜんぜん悪くないと思っていたのに、息が上がっていることに気づきました。相手の強度、パススピード、展開のスピード、判断など全部早いので、筋肉を使って、たくさん息をしてというプレーだったので、気づきましたね」


4-4-2の左サイドハーフで先発した安部裕葵は、プレーの実感をそう振り返る。


「ちょっと差がきつくなって、1個(鹿島の)ラインが下がったように感じました。でも立ち上がり20分までのようなプレーを、90分は続けられないなとはわかっていました」


安部が語るように、立ち上がりからペースを上げる鹿島に対し、レアル・マドリードはローギアで入ったことは間違いない。


勝機は試合序盤にあった


バロンドールを獲得したクロアチア代表モドリッチやドイツ代表クロースの繰り出すパスのスピード、ボールの置き方など基本技術の差が、序盤から相手を上回ろうとする鹿島のオーバーペースを生んだと考えられるが、そこでゴールを奪えなかったことも”完敗”を生んだ要因のひとつだろう。


鹿島にとって、この戦い方で唯一にして最大の勝機が、立ち上がり20分までの時間で、もっと言えば開始5分から10分の間にチャンスはあった。もちろん、結果的に逆転される可能性は大いにあるのだが、レアル・マドリードにとっても、そう簡単な作業にはならなかったはずだ。


これが”世界との差”と言ってしまうのは簡単だが、準々決勝でグアダラハラに勝利した鹿島は、世界的に見ても”弱小チーム”ではない。今回の相手が、世界の頂点に位置する相手だったということだ。スペインの中堅クラブやチャンピオンズリーグでグループリーグ突破が”番狂わせ”と言われる立場のクラブでさえ、鹿島と同じような入り方をしたら、似たような結果になってしまうだろう。


なにも、鹿島が欧州の中堅クラブに比べて弱いわけではなく、レアル・マドリードという欧州のトップ・オブ・トップに特別な対策もなく挑んで行けば、今回のような展開になってしまうということ。唯一、そうならないためには、序盤のチャンスに先制するしかなかったのだ。


「特に変わらなく、練習の段階でも”対レアル”っていう感じではなかった。個人の弱み、そんなとこないんだけど、そういうのを突こうという練習はしてきたけど、特に相手に合わせるという準備の仕方はしなかった」


そう語る内田は「何が正解かわからないけど」と前置きした上で、明らかな格上に勝つためには「ベタ引きでもいいから守らないと。守んなきゃダメだね、正直」と指摘する。


「変わらず4-4-2でやったけど、そういうのを崩さないのか。つまんないよ、1点入れられちゃうかもしれないよ。でも、なるべく失点1で抑える。それでワンチャン。(土居)聖真も1点とってるし。テレビで観てたらつまんないかもしれないけど。日本の人はやっぱり”鹿島のサッカーをやって欲しい”と思うしね。まあ散々やってきたので、なんとなくわかりますけど、引いてっていうのが現実的かな。やっぱり」


力不足を知った、貴重な機会


内田の言葉からもわかる通り、良い悪いは別として、勝つために相手の嫌がることを徹底するような戦い方を選択することなく、チャレンジした結果の惨敗だったということだ。しかし、だからこそ現実を目の当たりにできたという見方もできる。


守備を固めてワンチャンスにかける戦い方をし、勝つ可能性を少しでも上げたところで、勝利は約束されない。ただ、正面から当たって跳ね返されたことによって”力不足”を知る、貴重な機会を得られたとも言える。それを肌で感じたのはピッチに立った選手だけかもしれないが、日本サッカーとして得られたものもあるはずだ。


「本当は勝って成長したいんですけど、今日は負けてしまって。そういう中で3位決定戦を戦えないようなチームはビッグクラブにはなれないと思うし、僕らもアジアを代表して来ているので、『アジアといえば鹿島』と言われるように、個人としてもチームとしてもレベルアップしないといけない」


試合後に悔し涙を流した安部は、気持ちを南米王者リバープレートとの3位決定戦に向けた。初戦を前に大岩剛監督は「Jリーグの代表として、アジアの代表として挑みたい」と語っていた。その鹿島が締めくくりとなる3位決定戦で、どういう戦いをして勝利を目指すのか。そこでまた、鹿島アントラーズの、Jリーグの、日本サッカーの新たなものが見えてくるかもしれない。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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