森保ジャパン、無念の準優勝だが、”聖域”なき競争を作り出す契機に

COLUMN河治良幸の真・代表論 第28回

森保ジャパン、無念の準優勝だが、”聖域”なき競争を作り出す契機に

By 河治良幸 ・ 2019.2.5

シェアする

アジアカップが終わり、クラブW杯からの短い帰国を挟むと、50日間のUAE取材から帰国した。ひとりの記者としても、決勝での敗戦のショックから完全には切り替えられておらず、スタジアムやテレビで見届けた人の多くもそうかもしれない。


敗因はいろいろと言われているが、何しろチームがまだ未熟で、冨安健洋のような有望な若手は出てきたものの、試合のコントロールは何人かの経験豊富な選手に依存していた面が大きく、彼らも決勝では判断力やリーダーシップを発揮しきれなかった。Jリーグ屈指の実績を持つ森保一監督も、代表に関しては国際舞台の経験不足が否めない。


「修正はできたんですけど、0-2になってからだったので、すごく遅かった」(大迫勇也)


決勝の相手カタールは戦前から4バック、5バックの可能性があり、日本戦では5バックを選択してきた。しかも中央の3人が近い距離でボールを回しながら、中盤の3枚が4-4-2でプレスをかける日本のボランチ2枚に対して、常に有利になっていた。試合の状況は、中でプレーしている選手でないと分からないことも多いが、こうしたギャップから、守備がハマっていないことは外からでも分かるレベルだった。


それを、テクニカルエリアの森保監督が分かっていないはずがない。要はどう改善するかだが、選手の判断と声かけなのか、監督の指示なのか。いずれにしても、傷口が広がらないうちに修正するべきだったことは確かだ。サウジアラビア戦で冨安が、相手のセットプレーが前の試合と違っていることに気づき、周囲に伝えたようなアドリブも大事だが、まずはベースのところでオーガナイズの共有を詰めておく必要がある。


課題を成長につなげたい


日本サッカーでは「2点差が一番危険」と言われているが、このレベルの戦いになると、2点差がひっくり返ることの方がレアケースだ。ロシアW杯でも2点差から逆転されたのは、64試合中、ベルギー戦の日本のみ。その他は、同点に追いついたケースすらなかった。今回のアジアカップに限っては、一度もなかったのだ。


もっとも0-2から南野拓実のゴールで1点差と迫ってから、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)で吉田麻也がハンドを取られ、PKで突き放されるまでの14分間にも、十分チャンスはあった。しかしながら、試合を通じて枠内シュート1本に終わったことも、早い時間帯に守備の修正ができなかったことに加えて、課題として捉える必要がある。


途中出場のFW武藤嘉紀は振り返る。


「とにかく点が取れなかったのが事実なので、取れる選手になるしかない。カタールのFWが得点王になりましたけど、あれが日本代表から選出されればベストですし、それが自分ならもっといいと思います」


サッカーの試合に、負けていい敗戦などない。ただ、負けてしまった以上、それをどう糧にするかが重要になる。


「勝ったチームが強いと思っていますので、カタール代表が強かったと思います。我々に足りなかったものを今後の成長につなげられるように、しっかり分析したい」(森保監督)


チーム内の聖域がなくなった


1つポジティブに考えられるのは、森保ジャパンの中にある種の”聖域”がなくなったことだ。もちろん、いまはチームのベースを作っている段階であり、継続性を考えても、主力から23人がガラッと入れ替わることはないだろうが、アジアカップの戦い方を見ても、森保監督は、基本”ウィニングチーム・ネバーチェンジ”の監督であり、仮に優勝していれば、2011年の”ザックジャパン”よろしく、良くも悪くも戦力の固定化が進んでいたかもしれない。


森保ジャパンの立ち上げから、親善試合とアジアカップで12試合。次の代表活動期間まで2ヶ月あまり空くことを踏まえれば、第一ステージを終えた1つの区切りとして、チームを見直すチャンスだ。そもそも6月に挑戦が決まっているコパ・アメリカは、クラブの都合で招集できない選手もいると想定されるため、アジアカップの前よりもラージグループでチームを作っていく必要がある。


ただし、親善試合は3月の2試合、コパ・アメリカ直前の6月の2試合に限られる。おそらく、6月の親善試合のメンバーはコパ・アメリカと同時に発表されるため、3月の時点で新戦力を呼んでテストしておきたい。


森保監督の構想にありながら、怪我などの理由でアジアカップに呼べなかった選手、大会前に離脱してしまった選手もいる。コパ・アメリカまでに招集が確実視されるのが、フランスのトゥールーズに移籍した、元鹿島のDF昌子源だ。ロシアW杯の最年少レギュラーだった昌子だが、中断明けのJリーグで足首を負傷し、10月中旬に復帰したが11月の代表には呼ばれず、移籍のタイミングだったアジアカップも見送られた。また同じ元鹿島で、森保ジャパンの初陣(9月)に招集された植田直通(セルクル・ブルッヘ)にも、チャンスが与えられるかもしれない。


若き海外組の招集は?


DFではオランダに環境を移した、東京五輪世代の板倉滉(フローニンゲン)と中山雄太(ズヴォレ)もクラブで出番を得られれば、このタイミングで呼ばれてもおかしくはない。中盤では、森保ジャパンの立ち上げから招集されながら、怪我でアジアカップのメンバー入りを逃した三竿健斗(鹿島)や、アジアカップ前の合宿中に負傷離脱した守田英正(川崎)の奮起が期待される。


攻撃的な選手としては、ベルギーで得点を量産する鎌田大地(シント=トロイデン)が、アジアカップ前に森保監督の視察を受けていたが、いよいよ招集となれば、日本代表の攻撃に不足しているアクセントをもたらすことができるはずだ。


大会合流の直前にポルトガルの試合で負傷し、アジアカップ出場がかなわなかった中島翔哉もカタールのアル・ドゥハイル移籍が決まり、新天地でどのようなパフォーマンスを披露し、次の代表に戻ってくるかが気になるところだ。また、トルコのベシクタシュで移籍直後に途中出場で2得点という、鮮烈デビューを飾った香川真司の復帰も待望されるだろう。


前線では、大迫の代わりがいない問題はしばらく続く可能性が高いが、負傷でアジアカップを辞退した浅野拓磨(ハノーファー)、昨年11月の招集を怪我で辞退した鈴木優磨が、ポストプレーヤーとしてもストライカーとしてもさらに逞しさを増せば、鹿島の先輩でもある大迫を刺激する存在になりうる。


U-22代表も兼任する森保監督だけに、今後も”世代間の融合”を図って行くはずだが、ここにあげた選手だけでなく、若手、中堅、ベテランに関わらず多くの選手が切磋琢磨し、良い意味で森保監督を悩ませる状況を生み出して欲しい。アジアカップで優勝したカタールは、アンダーカテゴリーから選手を観てきたフェリックス・サンチェス監督の教え子でA代表を構成し、大半がアル・サッドとアル・ドゥハイルの選手で構成されるチームだった。


そうした取り組みが今回の成果になったことは間違いないが、日本は参考にこそすれ、真似する必要はないし、そもそも真似はできない。日本は森保監督のコンセプトをより明確にラージグループで共有しながら切磋琢磨し、チーム力を引き上げていくことが重要なのではないか。その意味でもコパ・アメリカを次の節目として、これから注目すべき半年間になる。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

シェアする
河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

このコラムの他の記事