継続組、復帰組、初招集組。3月シリーズの日本代表に期待する、新たな融合と変化

COLUMN河治良幸の真・代表論 第30回

継続組、復帰組、初招集組。3月シリーズの日本代表に期待する、新たな融合と変化

By 河治良幸 ・ 2019.3.20

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3月22日に横浜で行われる、キリンチャレンジカップのコロンビア戦、26日のボリビア戦(神戸)に臨む日本代表は、アジアカップから13人のメンバーを入れ替えた。守田英正(川崎フロンターレ)の離脱という残念なニュースはあったが、FC東京から橋本拳人を追加招集。初招集が5人になり、フレッシュさの度合いが増した。


「アジアカップが厳しい戦いだったという部分で、(カタールW杯)アジア予選は非常に厳しい戦いになるということを伝えて、力をつけなければいけないと話をしました」(森保一監督)


今回のキリンチャレンジカップは、ロシアW杯の経験者でアジアカップの主力を担った吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹、大迫勇也、槙野智章といった選手が怪我やチーム事情、すでに監督が把握しているなどの理由で外れた一方で、香川真司(ベシクタシュ)、昌子源(トゥールーズ)、宇佐美貴史(デュッセルドルフ)、中村航輔(柏)がロシアW杯以来の代表復帰となった。


6月から7月にかけてブラジルで開催されるコパ・アメリカは、国内組も海外組も誰を招集できるか不明な状況のため、3月のキリンチャレンジカップ2試合は、長きに渡って行われるW杯アジア予選を戦うラージファミリーを作っておくチャンスであり、森保監督は「半分以上の選手が代わり、コロンビア戦、ボリビア戦で結果を出して、日本代表として層の厚いところを見せてほしい」と選手たちに伝えている。


今回選ばれている選手にとって、選手層の厚みを見せるだけでは、これまで主力を担ってきた選手に追いつき、追い越すことはできない。主力に割って入ってやるという意気込みが求められる。


メンバーが大幅に変更。どのような布陣に?


今回の注目ポイントは、香川のような”復帰組”と鎌田大地(シント=トロイデン)など初選出が複数入っていることで、「アジアカップからの継続組」「ロシアW杯からの復帰組」「初招集組」にカテゴライズできる。アジアカップで主力から大迫、遠藤、吉田、酒井、長友、権田、原口の7人が外れており、合宿の中で森保監督がどう布陣を組み上げるか、読みにくい。


中島翔哉(アル・ドゥハイル)はアジアカップ前に怪我をし、合流してすぐ離脱という特殊な立場だが、もともと森保ジャパンの中軸を担ってきた選手であり、左サイドの主力と考えられる。南野拓実(ザルツブルク)が務めたトップ下には香川が復帰するので、今回のメンバー構成を考えると、南野は1トップでもプランニングされている可能性が高い。


実際にFWとして選出された鎌田に、報道陣から1トップ起用の質問が殺到したが、鎌田はトップ下で香川と競争する構図になると予想している。大迫がいない状況で大迫の役割を誰かに求めるより、攻撃の起点としてタメやアクセントをもたらす役割をトップ下にさせることで、1トップが必ずしも”大迫タイプ”でなくても機能する余地が出て来る。


「大迫頼みの攻撃の戦術というところは、私も質問を受けたり、いろんなところで見聞きしている」とメンバー発表で語っていた森保監督。ポストプレーヤーとして、日本で”唯一無二”と言える大迫の影を追うよりも、いないならいないなりのソリューション(解決策)を見出したいところだろう。


宇佐美は右サイドで起用?


中島が主力と見られる左サイドハーフも、乾貴士が移籍先のアラベスで良いパフォーマンスを見せており、ベティスで出番が限られた中で合流したアジアカップの時より、状態を上げていると見られる。一方で右サイドは本職が堂安律(フローニンゲン)しかおらず、その堂安がガンバ大阪の先輩として背中を追い続けたという宇佐美貴史が、デュッセルドルフでも経験のある右サイドに回る可能性もある。


「右で出た時はビルドアップとか、チームが前にボールを運んでいく中で、滞りなくボールをしっかり供給できる。そういうのはデュッセルドルフで出たときも、(原口)元気くんがいたときは特にそういう感じでしたし、イメージは持ちやすい」


そう宇佐美が語るように、左利きの堂安が右サイドでプレーする時とメカニズムに変化が出て来るかもしれない。その宇佐美も立場的には今回結果を残し、さらに所属クラブで良いパフォーマンスを継続していかないと、次の招集に繋がって行かないことを強く自覚しているようだ。


香川の復帰で攻撃に変化が


2列目の編成に変更が出れば、ボランチの組み立てやサポートにも少なからず変化は出るだろう。特に中盤寄りの仕事ができる香川がトップ下に入れば、ゲームメイクに優れる柴崎岳(ヘタフェ)などの、パスの付け方やポジショニングも変わって来る。


例えば1トップが大迫で南野がトップ下なら、シンプルに大迫にクサビのパスを入れるか、2列目の選手にパスをして、縦志向の強い2列目を後ろからサポートし、セカンドボールの奪取を狙う傾向が強くなる。しかし香川なら一度ボールを預けてから、スペースで受け直して展開する。もしくはサイドの選手に展開して香川にリターンさせるなど、1クッションを入れる効果が高くなる。


その柴崎もヘタフェでは、出番を得られない状況が続いている。オランダのヘーレンフェーンに所属する小林祐希は、柴崎と同じくゲームコントロールに優れるタイプで、柴崎とは違ったリズムや攻め上がった時の決め手を持っている。基本的には二人のどちらかと山口蛍(神戸)か、追加招集の橋本拳人が組むと考えられるが、ここもケースバイケースで柴崎&小林、山口&橋本という組み合わせも起こりうる。


権田不在のゴールは誰が守る?


最終ラインは酒井、吉田、長友がいない状況で、アジアカップで活躍した20歳の冨安健洋(シント=トロイデン)をはじめ、代表経験があまりない選手たちが横一線に近い状況で、左右のサイドバック、センターバックのポジションを競争していくことになる。レギュラーを担ったロシアW杯以来の復帰となる昌子は「僕が強く持つのは当たり前ですけど、他のセンターバックの3人、みんながそういう気持ちを持つことが大事なんじゃないかなと思っています」と語る。


今回は吉田が不在だが、仮に吉田がいなくても、誰かしらがディフェンスの統率を取れるという状況に持っていくには良い機会だろう。そうすることで吉田が良い意味で不可欠な存在ではなくなり、競争が起きて来る。


GKもアジアカップで6試合に出場した権田修一が招集されず、東口順昭(G大阪)、シュミット・ダニエル(仙台)、二度の脳震盪から復活した中村航輔(柏)がポジションを争う。クラブで絶好調の東口がリードしている様にも見られるが、蓋を開けてみないと分からない。おそらくGKはコロンビア戦とボリビア戦で別の選手が務めるので、一人は出場機会がなく終わる可能性が高い。その意味でも、合宿から森保監督や下田崇GKコーチにアピールしていく必要がある。


森保監督が初陣を迎えた昨年9月からアジアカップまで築いてきたベースはあり、約半数の選手は、それを良い意味で積み上げていく必要がある。同時に、復帰組や初選出組は競争を活性化させるパフォーマンスを見せることが、強く求められる2試合になる。(文・河治良幸)

写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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