森保ジャパン、3バック導入で生まれる選手間の競争と新たな刺激

COLUMN河治良幸の真・代表論 第36回

森保ジャパン、3バック導入で生まれる選手間の競争と新たな刺激

By 河治良幸 ・ 2019.6.11

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森保一監督が率いる日本代表は、エルサルバドルに2-0で勝利。トリニダード・トバゴ戦に続き[3-4-2-1]を採用した前半は、永井謙佑がA代表初ゴールを含む2得点を記録した。後半の途中からメンバー交代に伴い[4-2-3-1]に変更すると、後半22分には中島翔哉とA代表デビューとなる久保建英を投入。追加点こそ無かったものの、久保を絡めた多彩な攻撃でスタンドをわかせた。


トリニダード・トバゴ戦から比べると[3-4-2-1]もスムーズに機能していた。エルサルバドルが国際Aマッチーウィークの1試合目(ハイチ戦)を行ったアメリカからロングフライトで来日し、2日程度しか準備できなかったことは、少なからず彼らのパフォーマンスに影響したはずだが、新しいトライをしていくという意味で、確かな収穫があった試合だ。


森保監督はGKのシュミット・ダニエルと冨安健洋、昌子源、畠中槙之輔の3バックをトリニダード・トバゴ戦から変更しなかった。その上でボランチには橋本拳人と小林祐希を起用し、このシステムの生命線とも言える左右のウィングバックには原口元気と伊東純也を配置した。そして1トップに永井が張り、2シャドーに南野拓実と堂安律が並んだ。


進歩の跡が見えた2試合目


3バックの構成に関しては槙野智章の怪我による離脱も影響したかもしれないが、やはり同じメンバーで2試合続けて組むメリットは大きい。


「今日の相手で言えば、FWの脇というか、相手の外というか、ちょっと内側にポジションを取ってボールを受けた方がいいなと。前半ちょっとしてから、そう思ったので、中でボールを受ける回数を増やしたのがよかった」


冨安はそう振り返ったが、トリニダード・トバゴ戦での経験があった上で、エルサルバドルの出方を見ながら3バックの中で調整ができていたようだ。


トリニダード・トバゴ戦はまず形から入っていたところがあり、基本的なポジションバランスや距離感を探っていた。相手が3人を前に並べるような形を取ったことで、全体的に後ろに重たくなったまま、ウィングバックも攻撃で高い位置を取れず、大迫勇也が孤立し、中島がワイドな位置から仕掛けるシーンばかりが目立つ展開になっていた。


後半は原口を左サイドに投入し、小林を中盤に入れて高い位置を取らせることなどで、前半より厚みのある攻撃になり、シュート数も増えたが、決定的なチャンスは少なかった。


効果的だった、最終ラインからのフィード


エルサルバドル戦は、相手にボールを持たれる時間はトリニダード・トバゴ戦より長くなったものの、ボールを持ってから早いタイミングで縦にパスを付けて、連動することができていた。特に効果的だったのが、3バックからのロングパスだ。


永井の2得点もロングフィードが起点となった。1点目は冨安からペナルティエリアの右に、ロングスルーパスが永井に通る。そこにエルサルバドルの選手が二人来たが、永井は深い切り返しで外し、ゴールのニアサイドに突き刺した。2点目は左から。橋本のパスを受けた畠中が長いパスを送ると、左サイドを走る原口が滑り込みながら折り返し、ニアサイドに走る永井がダイレクトで合わせた。


「1点目はちょっと長すぎたかなと思ったんですね。でも(永井が)速いから(笑)。あそこを取れば、相手にとって嫌だと思う。(パスを)出してからは永井さんが個人技で得点につなげてくれましたけど、あそこを取るという意識は持っていたいし、うまく得点につながってよかった」


先制点のパスについて、冨安は振り返る。その流れを生む鍵となったのが、右ウィングバックの伊東純也だ。「初めてウィングバックをやりましたけど、初めてにしては良くできたと思います。とりあえず森保さんに『サイドで張っていろ』と言われて、張っているからあそこが空いてくると思います」と語る。


選手の特徴が変わることで、攻撃に生まれた変化


右サイドで攻撃の幅を取りながら、ボールを持てば縦に仕掛ける。そうした動きをすることで、エルサルバドルの左サイドバックは、伊東に意識を向けざるを得なくなる。


左からは原口が縦を狙うことで、相手のディフェンスは日本の1トップ2シャドーを捕まえにくくなり、さらに永井が裏を狙うことで、手前の堂安や南野が縦のクサビを受けて起点になるシーンが多かった。そうした流れから、先制点のシーンでは永井がタイミングよく、冨安のパスを受ける形が生まれた。


仮に左右のウィングバックがトリニダード・トバゴ戦と同じく長友佑都と酒井宏樹だったとしても改善はされていたはずだが、攻撃の特徴がはっきりしている原口と伊東の方が、周りの選手も意図的に攻撃の良さを出させようとするので、そうしたベクトルに向きやすい。


それによって相手のディフェンスをストレッチさせ、前線は大迫のキープ力に頼れない代わりに、永井の手前でシャドーの南野と堂安が縦パスを受けて、起点になることができていた。


イメージ共有が進んだ試合


そうした[3-4-2-1]のイメージ共有が進んだ上で、組み合わせや対戦相手の出方によりアレンジできれば、日本代表のオプションとして戦略的に組み込んでいけそうだが、このチームのメインは[4-2-3-1]であり、それは森保監督が後半途中から意図的に形を戻したことで示された。


もともと”臨機応変な戦い方”を掲げる森保監督は、4バックの中でもある程度、相手や状況により機能性を出せる完成度を目指しているはず。


しかし、この相手は[3-4-2-1]の方が崩しやすい、バランスよくゲームをコントロールしやすいという時にチェンジしても、選手が問題なく対応できるようしておきたいのだろう。とはいえ、今回は[3-4-2-1]の基本的なメカニズムと相互理解を植え付けているにすぎない。実際にどういう相手にどう使うかは森保監督から示されて行くのだろうし、何となく4バックと3バックを使い分けるだけでは、コンセプトを曖昧にしてしまうリスクがある。


ただし、この[3-4-2-1]をオプションとして取り入れることで、メンバー構成が従来から変わる可能性はある。例えば今回の2試合で続けて起用された畠中は4バックより3バックの時の方が先発チャンスが増えるかもしれない。3バックになる分、2列目の枚数は減るが、原口のようにシャドーよりウィングバックで重宝される選手も出てくる。逆に長友や室屋は4バックではレギュラーだが、3バックでは守備的なオプションとして考えられるかもしれない。


この3バック導入がチームとして良い方に出るかどうかは分からないが、少なくとも新たな競争や刺激を生み出し、ハリルホジッチ、西野朗から継承された日本代表から、ようやく”森保ジャパン”としてスタートした印象もある。


ここからU-22世代を中心にコパ・アメリカに挑み、9月からW杯アジア予選が始まるが、未知な部分も含めて、チームを見て行く楽しみは高まってきた。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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