コパ・アメリカ総括。収穫は五輪世代に芽生えたA代表としての自覚

COLUMN河治良幸の真・代表論 第40回

コパ・アメリカ総括。収穫は五輪世代に芽生えたA代表としての自覚

By 河治良幸 ・ 2019.6.28

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なんとも、もったいない形でコパ・アメリカが終わってしまった。準々決勝に進出すること、”完全アウェー”で開催国ブラジルに挑むこと、一つでも多くこのメンバーで試合をすること――。これらの目標にあと一歩に迫ったが、それは遠い一歩でもあったのかもしれない。


本気でチャレンジした先にこそ、真の経験がある。日本代表はコパ・アメリカの初戦で、同大会で2度優勝しているチリと対戦。地球の反対側、短い準備期間、このメンバーではぶっつけ本番という状況でチリに挑み、0-4で敗れた。


プレーの1つ1つを切り取れば、何もできなかったわけではない。しかし、90分を通して熟練のチリにゲームをコントロールされ、着実に得点を重ねられた完敗だった。


初戦から中2日、チリ戦でサブだったメンバーは目の色を変えたように強度の高いトレーニングに励み、チリ戦の先発メンバーも触発された。そしてベテランの岡崎慎司と川島永嗣を含め、チリ戦のサブ組から6人がスタメンで起用され、強豪ウルグアイと接戦を演じ、勝点1をつかみ取った。


久保の好プレーもゴールはならず


日本とエクアドルともに、勝った方が準々決勝進出という状況で迎えた3戦目。「勝たなきゃいけない試合。間違いなく一番重要な試合になる」(柴崎岳)


日本は前半15分、中島翔哉がミドルシュートでゴールネットを揺らした。一度はオフサイドでノーゴールの判定だったが、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)により、ゴールが認められた。


しかし、前半のうちにエクアドルがセットプレーから同点に追いつく。その2分後には、中島を起点に右サイドで久保建英、三好康児、岩田智輝が絡み、久保がペナルティエリアで鋭いシュートを放つも、惜しくもGKに阻まれて勝ち越しゴールを奪うことはできなかった。


久保は「三好選手からいいボールが来て、ちょっと足下に入っちゃったりとか。個人的にはもったいないかなと、ハーフタイムに話していました」と悔しがり、こう続けた。「最後の最後までお互いにチャンスがあって、お互いにこれを決めれば抜けられるっていう緊張感もありました」


選手間のコミュニケーションに手応え


チリ戦で先発し、ウルグアイ戦では途中出場だった久保。スタメン復帰したエクアドル戦では、2トップとトップ下の中間のようなポジション取りで、エクアドルの[4-1-4-1]のアンカー脇に生じるスペースを活用し、ウルグアイ戦で2得点を決めた右サイドの三好や左サイドの中島と絡んでゴールを狙った。


試合後、久保に「試合の中で相手が中盤の形を変えてきた中で、森保監督は『選手がどう考えて、立ち位置や対応ができるかを重視している』と言っていました。選手間のコミュニケーションや調整でうまくやれていましたか?」と尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。


「うまくやれていたと思います。選手同士が話し合って、今日は割とベンチの声も聞こえましたけど、聞こえないときもあるので、ピッチに立っている選手がコミュニケーションをとっていくべきだと思っています」


エクアドルは後半、システムを[4-1-4-1]から[4-2-3-1]に変更してきた。それに対してボランチの柴崎が少し前に出てギャップを作り、久保がフリーになりやすい状況を創出するなど、”選手が臨機応変に”という森保監督の求めるプレーができていた。それだけに、最後のところで決めきれない状況が続いたのはもったいないが、それも含めて現状の実力という見方もできる。


A代表として戦い、得た経験


後半アディショナルタイム、中島のシュートをGKが弾いたこぼれ球を拾った久保がゴールネットを揺らしたが、惜しくもオフサイドの判定。VARによる確認の間、久保は両手を合わせて祈りのポーズで待ったが、結果は覆らなかった。


「オフサイドだろうなとは思っていたんですけど、クリアミスとかにならないかなと。その前にチャンスがあったので、そこは悔しい」(久保)


結果、1-1の引き分けに終わり、日本、エクアドルともに準々決勝進出はならなかった。まさに”痛み分け”となってしまった両国だが、チリやウルグアイより一段落ちると見られるエクアドルも、手強い相手だった。


チームは国内メディアや、現地に来ているエクアドル人記者から厳しい指摘を受けており、前日会見でエースのエネル・バレンシアは「我々が受けてきた仕打ちに返事をするためにもゴールを決めたいが、勝つために、僕じゃなくて他のメンバーにも点を決めて欲しい」と悲壮な覚悟を示していたのだ。


国と国が誇りをかけて戦う場に、”U-22+数人のオーバーエイジ”というメンバーで乗り込んだ日本。ある意味で”招かれざる客”だったかもしれないが、少なくとも選手たちは全力でチャレンジして、その結果として貴重な経験を得ることができたのは間違いない。


その経験というのは、南米の選手とやりあって感じる質の高さ、厳しさ、駆け引きと言ったことに加え、大切なのはA代表として国際試合を戦うことの自覚だろう。


この経験を先につなげたい


「(A代表は)自分の力を存分に試せますし、力が浮き彫りになります。勝ってブラジルとやりたかったですが、いい大会になりました。自分の立ち位置もわかりました。(今後も)自分と向き合ってやっていきたい」


左サイドで3試合フル出場した杉岡大暉はそう語る。その杉岡にこんな質問をぶつけてみた。


「これまでは、東京五輪世代の選手は五輪を目指し、その後にA代表というイメージがあったと思います。でも、今回は多くのU-22選手がコパ・アメリカにA代表として挑み、体感しました。来年の五輪はU-22世代でA代表に定着している選手がベースになり、そうではないポジションにオーバーエイジが使われる流れになりそうです」


すると、杉岡はこう答えた。


「そうですね。やっぱり、ここを基準にしたいと思います。オリンピック代表に選ばれればいいじゃなくて、A代表にいかに選ばれるかという勝負をJリーグでもしていきたいです。基準というのは、先輩たちが示してくれたものだったり、世界の基準も忘れないでやっていきたい」


そもそもコパ・アメリカに、フルメンバーが招集できないことは想定できていた。メンバー発表会見で森保監督が明かしたように、このチームは東京五輪でのメダル獲得を目標にしている背景がある。それでも、コパ・アメリカという厳しい大会に若いチームで臨んだことにより、彼らに五輪代表という意識に増して、A代表の自覚が芽生えたことは大きな財産になるだろう。


それだけに、結果はどうであれ、開催国ブラジルとの”完全アウェー”の中で、真剣勝負を繰り広げてほしかった。選手たちは現状の実力を受け止め、この大会で芽生えた向上心を先につなげていくことができれば、コパ・アメリカ参戦は東京五輪で良い成績を残すという目標の先につながって行くはず。その流れにメダル獲得という成果がついて来れば、喜ばしいことだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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