海外組は増加の一途。激化するA代表のメンバー争い

COLUMN河治良幸の真・代表論 第42回

海外組は増加の一途。激化するA代表のメンバー争い

By 河治良幸 ・ 2019.8.8

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前回のコラムに続き、夏の移籍市場で日本人選手の欧州移籍が相次いでいる。キリンチャレンジ杯でA代表に初選出され、コパ・アメリカにも出場した久保建英がレアル・マドリーに移籍したのをはじめ、U-20W杯でベスト16進出に貢献した菅原由勢と中村敬斗が期限付きでオランダに渡り、鹿島アントラーズからは安部裕葵、安西幸輝、鈴木優磨の3人が移籍した。


そのほか、コパ・アメリカに出場したメンバーでは前田大然が松本山雅から期限付きでポルトガルのマリティモへ、A代表経験者からはシュミット・ダニエル、天野純、北川航也なども今夏に海を渡っている。


【主な欧州移籍】


久保建英 FC東京 → レアル・マドリー(スペイン)

安部裕葵 鹿島アントラーズ → バルセロナ(スペイン)

鈴木優磨 鹿島アントラーズ → シント=トロイデン(ベルギー)

安西幸輝 鹿島アントラーズ → ポルティモネンセ(ポルトガル)

前田大然 松本山雅 → マリティモ(ポルトガル)

シュミット・ダニエル ベガルタ仙台 → シント=トロイデン(ベルギー)

天野純 横浜F ・マリノス → ロケレン(ベルギー2部)

菅原由勢 名古屋グランパス → AZアルクマール(オランダ)

中村敬斗 ガンバ大阪 → トゥエンテ(オランダ)

北川航也 清水エスパルス → ラピード・ウィーン(オーストリア)

小池龍太 柏レイソル → ロケレン(ベルギー2部)


コパ・アメリカのウルグアイ戦で2得点をあげるなど活躍した、三好康児(横浜F・マリノス)もベルギーの名門アントワープなど複数クラブからオファーがあり、レンタル元の川崎フロンターレと相手クラブが合意に至れば、今夏の欧州移籍が実現するかもしれない。


将来性を見込まれての移籍


日本人選手の欧州移籍が活発になっている要因はいくつかある。欧州での成功例が増え、日本人選手の評価が高まるとともに、映像やデータなどの情報システムが普及することで、スカウティングが容易になってきていること。移籍金が高騰する傾向にある中で、比較的リーズナブルに獲得でき、成長次第で大幅に価値を上げられることも理由のひとつだろう。シント=トロイデンで活躍し、セリエAのボローニャに移籍した冨安健洋が好例だ。


A代表やU-20W杯を経験した選手の目線が国際基準になり、海外の異なる環境に身を置くことで、選手として成長したい、価値を高めたいという志が強まっていることもあるだろう。来年の夏に東京五輪があることも、成長意識を早めている。


森保一監督が率い、A代表としてコパ・アメリカに参戦したチームは、東京五輪に出場資格のあるU-22の選手がベースだったが、彼らはキャプテンの柴崎岳をはじめ中島翔哉、植田直通、川島永嗣、岡崎慎司といった国際経験が豊富な選手たちと過ごし、チリやウルグアイと真剣勝負をする中で、課題を肌で感じたようだ。


A代表、当落線上の選手たちが海を渡る


東京五輪世代の海外志向、欧州志向は同世代の中で刺激し合うことで高められている部分もあるだろう。一方で天野純、北川航也、安西幸輝などの目線はA代表入りと、その先のカタールW杯に向いているはずだ。昨夏に森保監督が就任してから何度か招集されている彼らは、ラージファミリーには入っているが、現時点では当落線上にある。ここからさらにレベルを引き上げていかないと、若手の台頭に飲まれて代表が遠のくのは明らかだ。


これまでは日本代表に定着している選手やリオ五輪で活躍した選手がオファーを待って移籍というケースが主流だったが、現在はクラブのスカウティングや国際的な代理人の動きも活発になり、選手も海外とりわけ欧州志向が強くなったことで、A代表の当落線にある選手や若手を含めた候補の選手たちも、積極的に海を渡る流れが加速しているのだ。


そうした流れはJリーグの空洞化を招くのではないかという懸念もあるが、ベースの部分がしっかりしている限り、心配にはおよばないだろう。そもそもJリーグ全体のレベルアップ無しに、こうした移籍市場の流れは起こりえない。むしろ外国人選手を含めた国内外の出入りがダイナミックになることで、国際基準での活発化につながるはずだ。


ただし、日本代表のメンバー構成を考えれば、”海外組”の割合がさらに高まることは間違いない。これまではどちらかというとJリーグで活躍した選手がA代表に入り、そこで評価を高めて欧州に飛び立って行く流れだったが、これからは欧州で評価を高めてA代表に選ばれる鎌田大地のようなケースも増えていくことが予想できる。来年に関しては、東京五輪のメンバーに残っていくためのプロセスにもなるだろう。


増加するA代表の海外組


これまで国内組としてA代表に選ばれていた選手、U-20W杯やコパ・アメリカを経験し、来年の東京五輪を目指す有望な若手が”海外組”になるのだから、今後の代表チームで”海外組”が増えるのは当然だ。さらに6月のキリンチャレンジ杯やコパ・アメリカで招集外だった吉田麻也、遠藤航がカタールW杯アジア2次予選に向けて復帰してくる可能性は高い。


6月のキリンチャレンジ杯はコパ・アメリカも見据えて、通常の23人より4人多い27人が召集され、そこから植田がコパ・アメリカのみの参加になった。その植田も含めて27人を” 海外組”と”国内組”に分けると、”海外組”が18人で”国内組”が9人になる。そのうちシュミットと久保が欧州クラブに移籍したので、そのままのメンバーだとしても” 海外組”が20人になるわけだ。


さらに吉田や遠藤が復帰し、今夏に欧州移籍した選手がクラブで評価を高めてメンバーに入ってくれば” 海外組”はさらに増えることになる。またキリンチャレンジ杯には選ばれず、コパ・アメリカのメンバーだった板倉滉も、今季はマンチェスター・シティから期限付き移籍中のフローニンゲンで出場機会を得ており、順当ならA代表の有力候補になってきそうだ。


筆者の目算としては9月、10月、11月と年内のカタールW杯アジア2次予選を戦う、それぞれ23人のメンバーのうち、17~19人は”海外組”になる見込みだ。森保監督は現在、欧州の視察を代表スタッフに任せ、Jリーグの試合にできるだけ足を運ぶスケジュールを組んでいるようで、五輪代表も含めて”国内軽視”の様子は見られない。それでも客観的に評価すれば”海外組”がベースになるのは仕方ない。しかし、それでJリーグのレベルが低くなったと考えるべきではないだろう。


選手がJリーグで成長するサイクルがあり、そこからの移籍が加速することでA代表の” 海外組”は増えるが、ベースがJリーグにあることは変わらないのだ。そうした中でもJリーグで評価を高めてA代表入り、定着を果たす選手は今後も出てきてほしい。そうした選手も国際的な評価を高めて海外、欧州へと飛び立つかもしれないが、それは健全な流れであり、次のチャンスで新たな選手が台頭してくるだろう。(文・河治良幸)



写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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