マジョルカ移籍が決まった久保建英。チーム事情と起用法のイメージは?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第43回

マジョルカ移籍が決まった久保建英。チーム事情と起用法のイメージは?

By 河治良幸 ・ 2019.8.23

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久保建英はレアル・マドリーから、スペイン1部(プリメーラ)のRCDマジョルカに期限付きで移籍することが決まった。ジダン監督も高く評価する久保は、トップチームの練習に参加しながら、ラウール監督が率いるレアル・マドリー・カスティージャで3部リーグの試合に出るのか、それとも他のクラブでプレーするのかが、メディアやファンの関心を集めてきたが、最終的には高いレベルで出場機会を得られる環境が優先されたようだ。


スペインリーグ(ラ・リーガ)はすでに開幕戦を消化し、マジョルカは開幕戦で乾貴士を擁するエイバルに2対1で勝利。久保は25日の第2節レアル・ソシエダ戦から出場が可能となるようだ。


レアル・マドリーはマルティン・エーデゴーアをレアル・ソシエダに貸し出しており、久保とともにプレシーズンのツアーにも参加したGKアンドリー・ルニンがバジャドリー、サイドバックのセルヒオ・レギロンがセビージャ、ダニ・セバージョスがプレミアリーグのアーセナルへと、10人以上の選手が1年間の期限付きで移籍している。


ちなみに、現在トップチームに在籍している選手で、他クラブへのレンタルを経験しているのは、ウルグアイ代表のフェデリコ・バルベルデ(2017-18 デポルティーボ)、カゼミーロ(2014-15 ポルト)、マルコ・アセンシオ(2014-15 マジョルカ、2015-16 エスパニョール)、ルーカス・バスケス(2014-15 エスパニョール)となっている。


カスティージャ出身で定着するのは数名


右サイドバックのレギュラーであるダニエル・カルバハルもレアル・マドリーの下部組織出身だが、ドイツのレバークーゼンに完全移籍した2012-13シーズンに覚醒的な活躍を見せ、オフに買い戻されるという流れであり、ドミニカ代表のFWマリアーノもリヨンへの完全移籍をしてから復帰した事例だ。


コロンビア代表のハメス・ロドリゲスはトップチームに定着してから活躍の場を外に求め、バイエルン・ミュンヘンに期限付きで移籍し、2シーズン後に出戻りしている。レアル・マドリー・カスティージャからストレートに昇格し、そのまま定着しているのはセンターバックのナチョとヴィニシウスぐらいしかいない。


期限付きで移籍している選手はそのまま完全移籍する場合もあれば、クラブを転々として、レアル・マドリーに戻らないケースも多い。ただ、久保の場合は18歳にして5年契約を結んでおり、プレシーズンの遠征にも帯同した上でマジョルカへの期限付き移籍という判断が下されたので、1年後にまだトップチームに値しないと判断されるか、外国人枠の事情などで復帰できなくても、レンタル期間を延長するか、他クラブに貸し出される形になるはずだ。


理想はマジョルカで実戦経験を積みながら成長をアピールし、来シーズンのレアル・マドリーの編成に組み込まれることだ。地元紙によれば、マジョルカの契約には、一定の出場機会が保証される条項が含まれているとも伝えられている。


昨季はプレーオフを制して1部昇格


久保の新天地となるマジョルカは1998-99シーズンにカップウィナーズカップ(現在はヨーロッパリーグと統合)で優勝し、リーグ戦でも3位に躍進して”マジョルカ旋風”と呼ばれた。


その後も2000-01シーズンに3位、2009-10シーズンに5位など強豪ひしめくリーグで好成績をあげたが、2012-13シーズンにセグンダ(2部)に降格すると、2016-17シーズンには20位でセグンダB(3部)に降格する屈辱を味わった。しかしながら、気鋭のビセンテ・モレーノ監督に率いられた新生マジョルカは翌シーズンのセグンダBに優勝して1年で2部復帰を果たすと、昨シーズンは5位ながら現在は柴崎岳が在籍するデポルティーボ・ラ・コルーニャとの昇格プレーオフを制して、7シーズンぶりのプリメーラ(1部)復帰を果たした。


4-1-4-1をベースとするマジョルカは、アンカーにイドリス・ババを置く堅実なディフェンスと鋭いカウンターを得意とするチームだ。エイバル戦の先制点は1トップのアンテ・ブディミールがロングボールを落とし、前を向いて受けたダニ・ロドリゲスがディフェンスを突破してゴールに流し込んだ。後半に一度は追いつかれたものの、サイドアタックからのクロスでオウンゴールを誘い、ホームゲームに勝利。ボールポゼッションは36.5%だった。


左利きの久保はFC東京時代に右サイドハーフをメインにプレーしていたが、レアル・マドリーのプレシーズンでは、インサイドハーフでも起用されている。マジョルカの右サイドハーフはダニ・ロドリゲスがファーストチョイスで、エイバル戦でも得点シーンだけでなく、左からのクロスにファーサイドから飛び込んで惜しいシーンを生み出すなど、攻撃面の存在感が際立っていた。


左右のインサイドハーフで起用か


久保がマジョルカで出場のチャンスがあるのは、左右のインサイドハーフか。開幕戦ではサルバ・セビージャとアレイシ・フェバスが務めたポジションだが、相手陣内でボールを受け、タメやアクセントを生み出す仕事に関して、久保は彼らに引けを取らないはずだ。それだけでなく、左利きのプレースキッカーとしても重要な働きが期待される。


課題になるのは守備だろう。バランスよくポジションを取りながら、相手をチェックする守備は十分に通用するが、強度の高いプリメーラ(1部)において、攻守の切り替わりで厳しいデュエルが発生しやすいインサイドハーフでは心もとなさもある。もっとも、そうした部分で成長して行くためにプリメーラの環境を選んだとも言える。しっかりとスペシャリティをアピールしながら、デュエルなども伸ばして行けば、レアル・マドリー復帰が近づくはずだ。


ともあれ、18歳にしてスペインに渡った才能がプリメーラを舞台にどんな輝きを放つのか。まずはそこに注目して観て行きたい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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