W杯二次予選に向け、パラグアイ戦で実力をアピールした橋本、植田、久保

COLUMN河治良幸の真・代表論 第44回

W杯二次予選に向け、パラグアイ戦で実力をアピールした橋本、植田、久保

By 河治良幸 ・ 2019.9.7

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森保一監督が率いる日本代表は、カシマスタジアムで行われたキリンチャレンジカップでパラグアイに2対0で勝利。メンバーが大幅に代わった後半は押し込まれる時間帯もあったが、ホームでしっかり勝利をつかみ、W杯アジア二次予選のスタートであるアウェーのミャンマー戦に弾みをつけた。


先制ゴールを決めるなど、圧倒的な存在感を示した大迫勇也(ブレーメン)、2得点の起点になる活躍を見せた中島翔哉(ポルト)、前半はセンターバック、後半は右サイドバックで抜群のパフォーマンスを発揮した冨安健洋(ボローニャ)など、従来の主力が期待通りに活躍した一方で、サブの選手も今後の起用に向けて森保監督にアピールした。


存在感を発揮した、ボランチ橋本


この試合で評価を高めたひとりが、ボランチの橋本拳人(FC東京)だ。コパ・アメリカでキャプテンを務めた柴崎岳(デポルティーボ)と中盤でコンビを組み、ボール奪取力を発揮しながら、素早いファーストパスで1トップの大迫や二列目の3人が前向きに仕掛ける起点となった。


橋本は「前線がすごくいいポジションを取ってくれています。もっと判断が早ければ、もっといいパスを付けられる場面もたくさんあったので、判断スピードや質は代表で上げる必要があるなと感じました」と課題を口にするが、そうした部分も成長の余地と考えれば、今後の期待につながる。


コンビを組んだ柴崎は「ケントに関しては、考えさせすぎずにやらせてあげようと思っていた」と前置きしながら「もうちょっと行って欲しいなと思うところもあったので、そこは伝えました。あまり後ろに重心を置くべきではないシチュエーションもあったので、しっかり話し合いました」と、改善するために要求したことを明かした。


パラグアイ戦に関しては遠藤航(シュトゥットガルト)が、所属チームのスケジュールの事情で合流が試合前日になったこともあり、コンディションを考慮して、橋本をスタメンで起用したと考えられるが、チャンスをものにする形で大きく差を縮めたことは間違いない。


森保監督の就任から1年、チームを率いてきた中でのベストメンバーを選んだという今回、10日に行われるW杯二次予選最初の試合で橋本がスタメンで出場することがあれば、今後ボランチのファーストチョイスになっていく可能性もある。


自分の出来を悔やむ板倉


後半31分から、柴崎に代わりボランチに投入された板倉滉(フローニンゲン)は、橋本と初めてのコンビながら、バランスのとれたポジショニングで前半よりオープンになった中盤を引き締めた。一方で組み立てのパスにミスが目立ち、明確なアピールをすることはできなかった。


「前半と後半の違いは出ていたと思う。ベンチから見ていて、前半あれだけできている中、自分が途中から入った後半は、なかなか自分たちのペースでプレーすることができていなかったので、その辺はまだまだだなというか。もっと判断を早くして、途中からでも状況を把握しながら、しっかりやらないといけないと思いました」


試合感覚の部分で難しかったのは、フローニンゲンで開幕から4試合フル出場しているとはいえセンターバックであり、ボランチからセンターバックに下がるより、センターバックからボランチに上がる方が、視野の確保や受けるプレッシャーなど難しさがある。それは試合前から、板倉も話していた。


「視野の確保の変化はもちろんありますけど、ディフェンスからボランチになると相手のプレッシャーも増えてくる中で、もっと状況判断というか、周りの状況を把握しながらやらないといけなかったと思います」


ただ、パラグアイ戦で問題点が明確になったことをポジティブに捉えることもできる。板倉は「このままだったら次はない」と認識するが、ボランチの感覚も取り戻した状況で「次、チャンスがあれば、自分がゲームをコントロールするぐらい落ち着いて、周りを観てやれればいい」と前を向いた。


植田が見せた、自身の進化


後半から入った選手の中で最もアピールした選手は、センターバックの植田直通(セルクル・ブルージュ)だろう。右サイドバックの酒井宏樹(マルセイユ)と交代したが、それまでセンターバックだった冨安が右サイドに周り、植田が吉田麻也(サウサンプトン)と最終ラインの中央を固めた。前半とうって変わり、立て続けにフレッシュなメンバーを投入して反撃してきたパラグアイは、日本陣内に攻め立てたが「そこだけは誰にも負けない」(植田)という空中戦で強さを見せた。


ボールを持てばシンプルにさばくだけでなく、縦に持ち上がって相手のディフェンスを引き付けながらスペースにいる味方に展開するなど、以前の植田からはあまりイメージできない進化を、慣れ親しんだカシマスタジアムで披露した。


「ここに帰ってきて、試合に出られるのは幸せを感じた。鹿島のサポーターもたくさん来てくれた。少しでも成長した姿を見せられたのは良かった」という植田は「後半に出て、(失点)ゼロに抑えることが役目で、そこはクリアできた」と語りながらも「3点目をとって、確実に試合を終わらせることも僕たちに任されたこと。後半はペースダウンしてしまった」と反省を忘れなかった。


現時点でキャプテンの吉田と、成長著しい冨安のファーストセットを崩すことは難しいが、この試合で冨安を右サイドバックに回すオプションが機能したことで、対戦相手や状況、右サイドバックの酒井宏樹の状態を見ながら、冨安が右サイドバック、植田がセンターバックという選択肢も重要なオプションになりうる。


高度な技術を披露した久保


そのほか、右サイドハーフでは後半スタートから堂安律(PSV)に代わって久保建英(マジョルカ)が投入されると、積極的な仕掛けで相手のファウルを誘い、直接FKを含め、シュート5本を記録。サイドチェンジをピタリとコントロールしたかと思えば、トリッキーなタッチで相手を翻弄するなど、高度な技術を披露した。


FC東京の元同僚の橋本も認めるように、当時より体の強さと推進力が増していることをプレーで示したが、攻守が目まぐるしく変わる終盤は息切れしたのか、流れについていけない場面が目立ち、試合体力の部分でスタメン出場の難しさを露呈した。


ただし、堂安もPSV移籍の流れで試合から遠ざかっていたこともあり、W杯二次予選初戦のミャンマー戦も、90分のプレーは難しいだろう。同ポジションには伊東純也(ゲンク)もおり、久保は南野拓実(ザルツブルク)が主力を担うトップ下でも、チャンスを待つことになりそうだ。


パラグアイ戦では長友佑都(ガラタサライ)、中島翔哉(ポルト)、大迫勇也(ブレーメン)に代わり、安西幸輝(ポルティモネンセ)、原口元気(ハノーファー)、永井謙佑(FC東京)が入った。それぞれ持ち味を発揮したが、スタメンの選手たちが高いパフォーマンスを発揮していただけに、レギュラーとサブの序列を覆すことは厳しいだろう。


W杯二次予選初戦のミャンマー戦は、ホームのパラグアイ戦とまったく違う試合になることは間違いなく、アジア予選特有の難しさも出てくるだろう。森保監督としては、コンディションを見極めながら、ベストメンバーをぶつけて行くことになるはず。そこにパラグアイ戦でアピールした選手、残念ながら出場機会を得られなかった選手たちにチャンスが回ってくるかどうか、改めて注目したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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