U-17W杯出場権をかけて奮闘中の“リトルなでしこ”。グループ首位通過を果たせるか?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第45回

U-17W杯出場権をかけて奮闘中の“リトルなでしこ”。グループ首位通過を果たせるか?

By 河治良幸 ・ 2019.9.21

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”リトルなでしこ”こと、狩野倫久監督が率いるU-16女子日本代表は、タイのチョンブリで行われている『AFC U-16女子選手権』に参戦している。同大会は2020年にインドで開催される『U-17女子W杯』の予選を兼ねているが、通常3枠あるアジアの出場権の1つがインドに与えられるため、上位2カ国にしか世界への扉は開かれない過酷な戦いだ。


2年前の前回大会もタイで行われ、日本は準決勝で韓国にPK戦で敗退し、3位決定戦で中国を1-0と破って、2018年のU-17女子W杯の出場権を勝ち取った。今回は決勝まで辿り着かなければ、W杯の出場権を獲得できない。


日本はグループAでオーストラリア、タイ、バングラデシュと同居し、上位2位まで準決勝に進めるが、できれば首位通過してグループB(朝鮮民主主義人民共和国、中国、韓国、ベトナム)の2位と対戦する状況に持っていきたい。なおグループBはベトナムを10-0、韓国を破った中国を4-0と一蹴した朝鮮民主主義人民共和国の首位通過が確定的となっている。


ビルドアップからのミスが目立った初戦


その意味で、日本は最大のライバルであるオーストラリアとの初戦は是が非でも勝ち点3が欲しかったが、結果は両者譲らずスコアレスドローとなった。


狩野監督が認めるように、立ち上がりから初戦独特の硬さが見られたことも確かだが、試合の3時間前から嵐のようなスコールが降り、もともと深めの芝がかなり水を含んで重くなっていた影響もあるだろう。4ー4ー2の日本は自陣のビルドアップからミスが目立ち、高い位置でボールを奪われてカウンターというシーンを何度も作られた。


また守備に関しても「相手のアンカー(中盤の底の選手)に対する、2トップのプレスがハマらなかった」とFWの西尾葉音(浦和レッズレディースユース)が振り返るように、高い位置からボールを奪いに行ってもいなされて、ワイドの展開から左利きの司令塔を起点に、ディフェンスラインが相手アタッカーに晒されるシーンが目立った。


それでも、センターバックの石川璃音(JFAアカデミー福島)が、キャプテンGK野田にな(日テレ・メニーナ)の飛び出した裏をカバーし、ゴール前でシュートをブロックするなど、体を張ってロウリーや快速FWヘンリーの突破やフィニッシュを防ぎながら、徐々に攻守のリズムをつかんで行く。


複数ポジションでのプレーが求められる選手たち


前半21分には前線から中盤に落ちたFW浜野まいか(セレッソ大阪堺ガールズ)を起点に右サイドハーフの箕輪千慧(日ノ本学園高)が放ったミドルシュートがクロスバーを叩くなど、オーストラリア陣内で攻勢をかける時間帯が続いた。


しかし、その矢先に左サイドバックで奮闘していた最年少、2005年生まれの小山史乃観(セレッソ大阪堺ガールズ)が負傷してしまい、FW根府桃子(ノジマステラ神奈川相模原アヴェニーレ)との交代を強いられた。


本職サイドバックの選手からFWへの交代ということで、どういう布陣になるのか気になったが、右サイドバックの荻久保優里(セレッソ大阪堺ガールズ)が左に回り、箕輪が右サイドハーフから右サイドバックに下がる。そして浜野が2トップから右サイドハーフにスライドし、浜野のいたポジションに根府が入ったのだ。


見た目にはダイナミックな変更だが、狩野監督は「私たちが選手たちに求めているのは、最低でも2つ以上のポジションをこなすこと」と語る。


「時間帯やピッチ内の様々な状況の中で、チームのコンセプトに加えて、ゲームのシチュエーションを選手たち自身がしっかりと判断してプレーできるように、アプローチをしています」(同監督)


その通りに、日本は良い流れでボールをつなぎながらオーストラリアを走らせ、空いたスペースから次々とチャンスに持ち込む。しかし、相手の守護神テンプルマンが名前さながらに聖域を作り、”リトルなでしこ”のエースとして期待されるFW西尾も、なかなか決め切ることができないまま、試合時間が経過して行った。


硬さの見られた初戦は引き分け


初戦の緊張感やピッチの影響もあってか、後半はかなり両者の疲労が目立ってきた状況で、狩野監督は左サイドハーフの猪瀬結子(マイナビベガルタ仙台レディースユース)を下げて、右サイドバックに浅山茉緩(セレッソ大阪堺ガールズ)を投入。箕輪が右サイドハーフに戻り、浜野は左サイドハーフにポジションを変更した。


攻守の切り替わりが激しくなる中で、オーストラリアのカウンターをGK野田が相手と接触しながら防ぐと、飲水タイムにはスタッフが治療に走るなど、初戦からタフな試合になった。


終盤に狩野監督は3枚目の交代で、西尾から運動量の豊富な西郡茉優(ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)に交代し、前線を活性化してゴールを狙いに行く。オーストラリアも積極的な姿勢を崩さず仕掛けてきたが、GK野田がビルドアップで切り返したところに突っ込んだFWヘンリーが負傷。


交代枠を使い切り、相手が10人になった状況で日本は浜野のチャンスメイクから逆サイドの箕輪がゴール前に飛び込むが、またもや守護神テンプルマンが立ちはだかり、結局スコアレスドローで終わった。


「1試合に1得点以上をノルマに設定していました」と語る西尾は無得点に終わったことを反省しながらも「残りの試合でゴールを決めたい」と顔を上げていた。狩野監督も「2戦目に向けては、もっとアグレッシブにゴールに向かう姿勢、精度を高めて次につなげたい」と語ったが、3日後のバングラデシュ戦はまさしく”リトルなでしこ”のアグレッシブな姿勢がゴールラッシュを生むこととなった。


ゴールラッシュで2戦目は完勝


チーム力に差があることは試合前から想定されたが、やはり初戦をドローで終えて難しいシチュエーションの中で、しっかりとチーム力を発揮することは簡単ではない。狩野監督はGK大熊茜(ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-15)を起用するなど、オーストラリア戦からスタメン5人を変更し、負傷退場していた小山も元気に先発出場した。


日本は開始2分に右サイドを駆け上がったDFの林がドリブルからのシュートで先制点を奪うと、6分には根府の絶妙なスルーパスから浜野が抜け出して2点目。そこからボランチ太田萌咲(JFAアカデミー福島)のミドルシュートが決まると、前半のうちに浜野が自身の2点目、さらに根府が鮮やかにゴールネットを揺らして5-0とした。


後半には途中出場の平中響乃(浦和レッズレディースユース)、さらにMF丹野凛々香(浦和レッズレディースユース)が駄目押しの2得点を奪い、9-0と勝利した日本。タイに6ー1と大勝したオーストラリアを得失点差で上回り、グループの首位に立った。


タイ戦で引き分け以上なら準決勝への進出が決まるが、オーストラリアを上回り首位通過を果たすためにも、できるだけタイからゴールを奪い、勝ち点7で並ぶことが予想されるオーストラリアを得失点差で上回りたいところ。その意味では、バングラデシュ戦で出番の無かった西尾の奮起にも期待したい。


タイ戦は21日の日本時間18時にキックオフされる。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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