選手起用の幅を広げたモンゴル戦。二次予選最難関のタジキスタン戦で求められる、森保監督の舵取り

COLUMN河治良幸の真・代表論 第46回

選手起用の幅を広げたモンゴル戦。二次予選最難関のタジキスタン戦で求められる、森保監督の舵取り

By 河治良幸 ・ 2019.10.12

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10日、森保一監督が率いる日本代表はカタールW杯アジア二次予選の2試合目で、埼玉スタジアムにモンゴル代表を迎えた。日本は序盤、高い身体能力を発揮してハードなディフェンスをして来るモンゴルを相手に、サイドを起点とした攻撃で度重なるチャンスを作るものの、決めきれずに時間が経過した。


前半17分には左サイドの中島翔哉を起点に深い位置をえぐった南野拓実がディフェンスとGKの間にクロスを入れるが、飛び出した永井謙佑のシュートがGKアリウンボルドに間一髪で弾かれてしまう。


嫌な雰囲気も漂いかけた前半22分、センターバックの吉田麻也から遠藤航、右サイドバックの酒井宏樹と素早くつなぎ、右のスペースを抜けて縦パスを受けた伊東純也のクロスに南野が頭で合わせ、ゴールネットを揺らした。


待望の先制点が入ってからは、水を得た魚のようにリズムよくモンゴルのディフェンスを翻弄し、前半だけで4得点。セットプレーから吉田が押し込むと、伊東の鮮やかなクロスから左サイドバックの長友佑都が代表戦10年ぶりのゴール。さらに、怪我の大迫勇也に代わり、1トップを担った永井謙佑がヘディングでゴールを決めた。


後半11分に中島翔哉のコーナーキックから遠藤航による5点目が決まると、さらに遠藤の強烈なミドルシュートからGKが弾いたボールを交代出場の鎌田大地が押し込み、6-0となった。


サイド攻撃からゴールを量産


日本は32本ものシュートを記録した一方で、モンゴルには1本のシュートも許さなかった。モンゴルのFIFAランキングは183位。一次予選でブルネイに勝利し、初めて二次予選に進んだモンゴルを相手に当然の大勝ではあるが、守備を固めて来る相手との対戦は簡単ではない。


日本にとってやや助かったのはモンゴルが中央を固めてきた分、サイドがかなり空いていたこと。酒井は「マンツーマンだと思っていたが、自分のところスにペースがあってやりやすかった」と語る。モンゴルのワイス監督も酒井とクロスで3アシストを記録した伊東のコンビが速く、ついていけなかったことを認めたが、素早いパス回しからサイドのスペースをえぐってクロスを狙う形がはまっていた。


しかしながら、先制点を取るまでがもどかしかった。その意味で、狙い通りの形からしっかりと先制点を決めた南野の貢献は大きい。南野は「前半にゴールを奪えたことで、非常に楽な試合展開になった。それが、こういうホームでの戦いでは重要だと思っていたのでよかった」と振り返る。


場数を踏んだリーダーの存在


先制点の場面は、直接はボールに絡まなかったものの、1トップの永井がタイミングよくニアに動いたことで、南野が相手ディフェンスの間でフリー同然になれたことは付け加えておきたい。ただ、ゲームメイクを司る柴崎は「先制点が早く入ることに越したことはないですが、チームの中では仮に早く入らなくても、しっかりと90分の中でマネジメントして行く意識はありました」とも語る。


「(得点が)入ったら入ったで、畳み掛けて行くというのがありました。どちらにしてもプランニングはできていたので、問題はなかったと思います。仮に点が入っていなかったとしても、それなりの戦い方をしていたんじゃないかと思います」(柴崎)


前半20分過ぎに先制できたことで、理想的な試合運びになったことは確かだが、勝点3にいたるプランニングと、様々な状況を想定してゲームをコントロールできるのは、比較的、若いチームでありながら、吉田、長友、柴崎と言ったロシアW杯など、場数を踏んだリーダーの存在は大きい。


オプションを広げる選手起用ができたモンゴル戦


モンゴル戦では前回、合流直前の怪我で力を発揮できなかった伊東が森保監督の起用に応えて3アシストと大活躍。永井も大迫とは違った動き出し、南野との連携でチャンスを作り、チームの4得点目を決めた。今夏に移籍したシュトゥットガルトで出番を得られていなかったボランチの遠藤航も、相棒の柴崎が「久しぶりの試合だと思いますけど、非常によくサポートしてくれた」と振り返るパフォーマンスで、代表21試合目にして初ゴールも決めた。


前半で大量リードを奪った状況で永井と鎌田の2トップ、さらに原口元気を左サイドに入れて、中央で鎌田と中島を縦に並べた新しい組み合わせをテストするなど、今後に向けたオプションを広げる選手起用ができたことは、この段階での”ベストメンバー招集”に賛否両論ある森保監督としては、今後の選択肢を広げる良いきっかけになったと考えられる。


不安要素は右サイドバックの酒井が後半の早い時間に足首をひねり、安西幸輝と交代したこと。そして終盤に、冨安健洋が左の腿裏を負傷したことだ。酒井は「大丈夫です。軽く捻挫したので、ひどくならないうちに」自ら交代を要求したと語っており、深刻な状況ではないようだ。しかし、冨安は試合後すぐに病院で検査した結果、タジキスタン遠征を前に離脱することとなった。


代わりに追加招集されたのはFC東京の室屋成。9月と今回のメンバーからは外れたが”森保ジャパン”でもおなじみの選手だ。サイドバックが本職で、酒井の抜けた穴をカバーすることになる。左右のサイドバックをこなす安西は左で長友のバックアップも担うので、その意味で効果的だが、センターバックの頭数が足りなくなるのも事実。


そこはボランチとして招集されてはいるものの、所属のフローニンゲンでセンターバックをつとめる板倉滉が吉田、植田直通、畠中槙之輔に次ぐ、4人目のセンターバックとして計算されるはずだ。


難しい試合になりそうなタジキスタン戦


アウェーのタジキスタン戦は一部チャーター機を利用するものの、それでも乗り換えが必要となる長い移動で、さらに人工芝での試合となる。ビザの所得などサポーターの渡航のハードルも高いため、完全アウェーの雰囲気での試合になるだろう。おそらく二次予選の8試合では最も厳しく、勝点を落とすリスクが隣り合わせの試合になると予想される。


柴崎はタジキスタン戦について「難しい試合になると思っています。もちろん勝利を目指して戦いますが、僕的には(二次予選を)突破することは前提として考えて、どう突破するかに焦点を当てて行くことが大事だと思っています」と語る。


二次予選を首位で通過することはノルマだが、早い段階で突破を決めることができれば、森保監督がA代表と監督を兼任する東京五輪を控える、来年のプランに大きなアドバンテージとなる。逆にどこかで躓くと、来年6月の2試合まで、予断を許さない状況になってしまう。


ザックジャパンの時も苦戦を強いられたアウェーのタジキスタン戦は、森保監督の舵取りも、モンゴル戦よりはるかに重要なポイントになる。モンゴル戦でアピールした伊東と堂安律、ボランチでは遠藤と橋本拳人の選択。冨安の代わりに植田、畠中、板倉の誰を抜擢するのかと行った起用法、さらに試合展開に応じた選手交代など、シビアな判断が求められそうだ。(文・河治良幸)



写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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