A代表と五輪代表を兼任する森保監督の英断。キルギス戦は”絶対に勝たなければならない戦い”に

COLUMN河治良幸の真・代表論 第48回

A代表と五輪代表を兼任する森保監督の英断。キルギス戦は”絶対に勝たなければならない戦い”に

By 河治良幸 ・ 2019.11.9

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日本代表と五輪代表(U-22代表)の監督を兼任する森保一監督は、9月5日、6日とメンバー発表会見に登壇し、14日に行われるW杯アジア二次予選のキルギス戦(アウェー)、19日のキリンチャレンジカップ・ベネズエラ戦(吹田)、そして17日に行われる、U-22代表のキリンチャレンジカップ・U-22コロンビア代表戦(広島)のメンバーを発表した。


”3試合で3チーム構成”を示唆していた通り、U-22コロンビア戦のメンバーには、これまでA代表に参加してきた、U-22世代の堂安律(PSVアイントホーフェン)、久保建英(マジョルカ)、板倉滉(フローニンゲン)が選ばれた。仮にモンゴル戦で負傷した冨安健洋が招集可能な状態だったとしても、U-22の方に選ばれていただろう。


5日のU-22メンバー発表時に森保監督は「広島で行われるU-22のキリンチャレンジカップに向かうメンバーは、この活動だけに専念してもらう。キルギス、ベネズエラ戦には合流しない」と語っていた。


「A代表の活動は重要で、アジア予選を軽視している訳ではありません。ただ、東京オリンピックに臨む(U-22)代表の活動も非常に大事。A代表から怪我人(冨安)を含めて4人外れますが、彼ら4人と同等の力を持つ選手は、これまで活躍を見せてくれていますし、チーム力が落ちるとは思っていません」(森保監督)


4人の経験豊富な選手達


キルギス戦のメンバーに選ばれた”同等の力を持つ選手”は、前回、冨安に代わりタジキスタン戦に追加招集された室屋成(FC東京)をはじめ山口蛍(ヴィッセル神戸)、佐々木翔(サンフレッチェ広島)、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)。いずれも豊富な代表経験があるか”森保ジャパン”に招集されたことのある選手たちで、いわゆるサプライズはなかった。


また、太ももの負傷で前回のメンバーから外れていた大迫勇也はブレーメンで試合に復帰したものの「直近の試合を映像で確認して、メディカルスタッフが所属チームと連絡するなど、状態を把握しました。招集も可能だったかもしれませんが、よりコンディションのいい選手を今回は招集しました」と森保監督が語る通り、今回も見送られた。


つまり従来のスタメン候補からは怪我の冨安、U-22招集の堂安、コンディションが万全ではない大迫の3人が不在となる。


またキルギス戦のメンバーから以下の選手たちが試合後、欧州の所属クラブに戻る。


シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)

吉田麻也(サウサンプトン)

酒井宏樹(マルセイユ)

長友佑都(ガラタサライ)

安西幸輝(ポルティモネンセ)

遠藤航(シュトゥットガルト)

伊東純也(ゲンク)

南野拓実(ザルツブルク)

鎌田大地(フランクフルト)


森保監督は「ヨーロッパ組の選手のコンディション等々を考慮して、よりいい状態で自チームに戻ってもらい、ポジションを掴んでもらう。パフォーマンスを上げて、チーム内で存在感を発揮してもらいたい」と説明した。


代わりに、キリンチャレンジカップのベネズエラ戦に向けて、以下の選手たちが国内で合流する。


中村航輔(柏レイソル)

三浦弦太(ガンバ大阪)

進藤亮佑(北海道コンサドーレ札幌)

荒木隼人(サンフレッチェ広島)

車屋紳太郎(川崎フロンターレ)

大島僚太(川崎フロンターレ)

井手口陽介(ガンバ大阪)

古橋亨梧(ヴィッセル神戸)

オナイウ阿道(大分トリニータ)


このうち進藤亮佑、荒木隼人、古橋亨梧、オナイウ阿道の4人が初選出。井手口陽介はロシアW杯の直前合宿に参加して以来、大島僚太は”森保ジャパン”の立ち上げとなる昨年9月に選ばれたが、怪我で辞退したため、実質的にロシアW杯以来の復帰となった。


ベネズエラ戦は新戦力テストの絶好機


森保監督は「なかなか招集機会のなかった選手、初招集の選手と活動する中で、選手たちの特徴を知る。個人としても代表としても経験値を上げて、経験の浅い選手には貴重な経験で、個の成長につながる」と語っている。


今回はいきなりアウェーでW杯二次予選があり、そこから日本に戻って親善試合という流れであり、欧州組は直接キルギスに合流する。試合後に欧州に戻りやすい流れがあり、ベネズエラ戦は新戦力のチェックやテストをするには絶好の機会だ。


メンバー構成を考えると、U-22の基本システムである3-4-2-1をA代表でも本格的に導入する最初の試合になるかもしれない。また12月に国内組だけで臨むことが見込まれる『東アジアE-1選手権』へのメンバー選考にもつながりそうだ。


キルギス戦での勝点3はノルマ


その一方で、軽視してはいけないのがキルギス戦の結果だ。ここまでW杯アジア二次予選3連勝という状況を考えれば、最終予選の突破に向けて、今回の結果で命運が決まるわけではない。しかしながらグループ1位突破を早く確定させるには、キルギス戦で勝点3を獲得することはノルマだ。


キルギス戦で今年のW杯アジア二次予選は終了し、次は来年3月のミャンマー戦(ホーム)とモンゴル戦(アウェー)になる。そこまで6連勝となれば、残り2試合を残して二次予選突破が決まる可能性が高い。


そうなると、6月に予定されるアジア二次予選の2試合は”消化試合”として主力を休ませたり、新戦力をテストしたり、オーバーエイジ候補を五輪代表チームに集中させるといった選択を取ることができる。逆にここで決めきれなければ、残り2試合にベストメンバーを招集する必要が出るなど、東京五輪も含めた強化が後手後手になってくる。


そのような状況でありながら、森保監督はこのタイミングで堂安、久保、板倉をU-22の活動に回すことを優先した。理屈で考えれば妥当な選択だが、言うは易し、結果に責任を持つ代表監督の立場としては”英断”だろう。


キルギス戦で勝利という結果が出なければ、今回の選択がベストだったのか疑問の声はあがるだろう。無論、それが日本代表というチームでもある。アウェーのギルギス戦はタジキスタン戦に続き、厳しい戦いが予想されるが、しっかりと勝ち切って4連勝で二次予選の前半戦を終える必要がある。絶対に負けられない、いや絶対に勝たなければならない戦いだ。森保監督の采配はもちろんだが、”同等の力を持つ選手”たちの奮闘にも期待したいところだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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