A代表と五輪代表。11月の連戦で突きつけられた、今後に向けたいくつもの課題

COLUMN河治良幸の真・代表論 第49回

A代表と五輪代表。11月の連戦で突きつけられた、今後に向けたいくつもの課題

By 河治良幸 ・ 2019.11.22

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キリンチャレンジカップのベネズエラ戦(●1-4)に覆い被さられた感はあるが、東京五輪に向けたU-22日本代表がコロンビアに0-2で敗れた試合も、親善試合ということを差し引いても、本番に向けて厳しい現実を突きつけられる内容だった。


「選手たちは国内での初試合ということで、モチベーション高く、試合に臨んでくれたと思います。しかし、素晴らしい雰囲気を作っていただいた中、勝たなければいけないところがプレッシャーになったのか、固い入りをしてしまって、相手にペースを握られ、難しい試合になってしまいました」


森保一監督は記者会見でそう振り返った。東京五輪がすべてホームゲームになることを考えれば、この世代の選手たちがアウェーで”武者修行”を重ねて来た分、ホーム慣れしていないことも不安材料であることは確かだ。


しかし、コロンビアが個人のクオリティに加えて組織としても非常にオーガナイズされていたのと対象的に、日本は連動性が悪く、個人の前にチームとしてうまく機能していなかった。


ベストメンバーを揃えたものの…


このタイミングで現在のベストメンバーを招集したいという森保監督の希望で、A代表の堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、板倉滉(フローニンゲン)をU-22に招集した。A代表より五輪代表を優先した形だが、メンバー発表後にブラジルとの強化試合で退場した町田浩樹(鹿島)がコロンビア戦に出場できないことがわかり、渡辺剛(FC東京)、田中碧(川崎)、遠藤渓太(横浜FM)の4人が怪我やコンディションの不安を理由に辞退した。


コロンビア戦の出場メンバーは以下の通り。


GK:大迫敬介

DF:岩田智樹、立田悠悟、板倉滉

MF:菅原由勢、田中駿汰、中山雄太、菅大輝、堂安律、久保建英

FW:上田綺世


HT 上田綺世 → 小川航基

後半17分 岩田智樹 → 三好康児

後半17分 菅大輝 → 原輝綺

後半38分 堂安律 → 食野亮太郎

後半42分 田中駿汰 → 前田大然


完全な機能不全に陥った前半に比べて、後半は小川がシンプルなポストプレーから裏に飛び出すシーンが目立ち、途中からは二枚替えで4バックに変更し、サイド攻撃を明確にしたことでチャンスが増えた。


終盤に投入された食野も積極的なプレーを見せるなど、ポジティブな要素もあったが、A代表のベネズエラ戦と同じく、親善試合の後半というのは相手の強度も明らかに落ちてくるので、そのまま評価できない側面がある。


二頭体制の難しさ


A代表を経験した選手の1人として、コロンビア戦に出場した板倉は「みんな、声をかけあいながらやってましたけど、それがプレーに表れていなかったのでは意味がないと思うし、A代表を経験させてもらって、練習での緊張感やチーム内の雰囲気を経験できているので、それをもっと練習から伝える必要があった」と振り返る。


ただ、そうしたパーソナリティというものも、チームが噛み合った状態でないとうまく発揮されないどころか、場合によっては”悪目立ち”になってしまう。選手間の意思疎通もさることながら、チームの統率に関しても難しさがある。


これまでもA代表と五輪世代の活動は重なることが多く、その間は五輪チームを横内昭展コーチが監督代行として指導していた。今回はキルギスから帰国した森保監督が一時的にA代表を離れて前日の記者会見と公式練習に臨み、コロンビア戦の監督としてベンチに座ったが、テクニカルエリアには主に横内コーチが立ち、具体的な指示を送っていた。


「このところ、(五輪チームの)準備は横内さんがしてきた中で、A代表と重なったときは、あまり状況を変えないように、2人で話し合ってやってもらいました。選手に対してのコーチングは普段の試合と同じように、話し合って指示をしています。交代等々についても、何がベストなのかを話し合い、コミュニケーションを取りながらやっていました」


森保監督が説明するとおり、現状の五輪チームは”二頭体制”のようだが、今回は試合前日に森保監督が現れたことで、二人の間でコンセンサスが取れていたとしても、選手サイドが難しさを感じていたことは、想像に難くない。


A代表組とU-22代表との融合は…


2日後のA代表の惨敗(キリンチャレンジカップ・ベネズエラ戦)もあり、森保監督が両方のチームを兼任することの難しさも問われるが、さらに難しくなりそうなのが、これまでU-22代表で活動して来た選手と堂安、久保、板倉というA代表で活動して来た選手の”融合”だ。


コロンビア戦は、中盤に攻撃を組み立てるタイプの選手がいなかったこともあるが、攻撃のベクトルが久保と堂安に向きすぎることで、サイドの菅原や菅がもともと持っている攻撃力が活用できないなど、チームとして機能不全に陥ったことは、今後に向けて軽視できない問題だ。


もともと堂安や久保もU-20などで一緒に活動していた選手であり、時間が解決する部分もあるだろうが、その時間をどこで確保して行くのか。オーバーエイジに関しても、森保監督がA代表と兼任している意味も考えれば有効活用して行きたいが、クラブとの交渉も含めて、いつ合流してチームにして行くのかという問題が残る。


五輪チームは来年1月にU-23日本代表として、タイで行われる東京五輪予選を兼ねたAFC U-23選手権を戦い、その大会を通じて戦力の絞り込みを図って行くことになる。ただ、おそらく堂安、久保、板倉に加えて怪我で今回のメンバーから外れた冨安健洋(ボローニャ)の招集は難しいだろう。


さらに来年3月の国際Aマッチデーは、W杯二次予選の突破がかかる2試合が待っており、そこにベストの戦力をぶつける必要性を考えれば、少なくとも主力の堂安や冨安を五輪チームに回すことはできない。


兼任監督を待つ、いくつもの試練


そうした事情を踏まえて、もっとも理想的なのは、3月にA代表がW杯二次予選の突破を決めてしまい、6月の残り2試合が”消化試合”になること。そこでA代表は新戦力のテストに使い、オーバーエイジ候補を加えたメンバーを融合させるプランが現実味を帯びてくる。


そして、これまで通りならば東京五輪のメンバー18人は7月上旬に発表されるが、選手の顔ぶれだけでなく、どのようなスケジュールで本大会を迎えるかといった準備の部分も、結果に大きく関わっていきそうだ。


「試合(コロンビア戦)が終わってから、我々が持っている目標が私だけのものなのか、チームで共有しているのかを選手たちに話して、今日の敗戦は悔しいけど、東京五輪で金メダルを獲得するためにやっていくこと、力をつけていくことを話してきました」(森保監督)


森保監督が目標として掲げる金メダルを獲得するには、選手個人がレベルアップすることに加えて、オーバーエイジ、五輪世代のA代表メンバーを含めて、チームとしても高次元の融合をして行く必要がある。


組織的にまとまったチームを作りたいのであれば、オーバーエイジも、主にA代表で活動している選手もメンバーに入れずに作ってしまうのが手っ取り早い。しかし、世界の強豪相手に勝つ可能性を少しでも高めるには、チームの最大値を伸ばして本番に臨む必要がある。


無論、東京五輪も大事だが、日本サッカーとしての大目標はA代表でカタールW杯の出場を果たし、本大会で躍進することだ。W杯二次予選を順調に突破しても、来年の秋には厳しい最終予選が待つ中で、東京五輪に向けた強化とA代表の強化をどう並行させて行くのか。


森保監督は五輪代表を”A代表のラージファミリー”として位置付けているが、ベネズエラ戦で本来の主力と、これまであまり試合に出ていない選手や新戦力を融合させる難しさも突き付けられた状況で、どう向き合って行くのか。


これだけの難題がある時点で、A代表の監督としても五輪チームの監督としても初挑戦の森保監督に、多くのものを背負わせすぎている様にも感じるが、これが良い結果に結びつくのかどうかは、残りの準備期間にかかってきそうだ。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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