2連敗で露呈したU-23代表の問題と失われた3試合。それでもカタール戦は勝利を目指すべき

COLUMN河治良幸の真・代表論 第52回

2連敗で露呈したU-23代表の問題と失われた3試合。それでもカタール戦は勝利を目指すべき

By 河治良幸 ・ 2020.1.14

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タイで開催中のAFC U-23選手権。U-23日本代表はサウジアラビア、シリアと戦い、2試合ともに1-2の敗戦。しかも1-1から終盤に決勝点を取られるという、同じ展開でやられてしまった。


サウジアラビア、シリア戦に共通する課題として、接戦で試合終盤に競り勝てないこと。そして、そもそも終盤までに、相手を突き放せなかったことの2点があげられる。


接戦で試合終盤に競り勝てないことに関しては、環境や日程面でのエクスキューズはあるが、それは相手も同じこと。むしろ中東の方が、タイの蒸し暑さは厳しい部分があるかもしれない。日本は互いに体力的に苦しくなる時間帯で判断ミスや遅れ、デュエルや連携などの甘さが出てしまった。


試合終盤で攻撃に行こうとする時に、リスク管理が曖昧になってしまうことや11人がコンセンサスをとれていないことなどの問題はあるが、「チームとして、勝負に対するアプローチの甘さ」が、勝負所で出てしまっていた。


初戦の相手サウジアラビアは、試合終盤の苦しい時間帯で、あえて前線からプレスをかけて来た。反対にシリアは少ない手数で前線のアタッカーの強さとスピードを生かし、攻め切ることを徹底。接戦で終盤を迎えた際に、どうするべきかというガイドラインを敷き、選手もしっかりと実行していた。


状況判断、理解力の不足から失点


U-23日本代表が採用する3-4-2-1というシステムは、全体的に配置のバランスが取れている上に、攻守の状況に応じて5バック、4バック、3バックと可変させやすい。U-23日本代表はプレーの引き出しは持っているが、使い方や使いどころが選手間の手探りに委ねられているところが大きく、リーダーシップを持ってビジョンをまとめられる存在も見当たらなかった。


サウジアラビア戦の2失点目は、後方でのビルドアップにおけるミスだが、前提として、サウジアラビアの前線3枚のプレッシャーに対して、左右のウイングバックが高い位置を取った上で、3バックが3人でボールを回すというリスキーな立ち位置を続けていた。


流れの中でボランチの田中駿太が最終ラインに落ちて、4バック気味になる状況はあったが、いつどこでその形を用いれば効果的かを各自が理解していたとしても、その場の的確な判断として共有できていなかった。


ミスが連なって決められた、シリア戦の2点目


シリア戦の2失点目は、3バックの右でプレーする、キャプテンの渡辺剛が疲労からか足にダメージを負って立田悠悟に交代し、それまで3バックの中央にいた岡崎慎が右に回るという、急増の3バックになったことが要因にある。


しかし、そうした状況でチャンスが出来た流れで全体が前がかりになり、中央でカウンターの起点を作られたことも問題だ。


2失点目の場面は、途中出場のアハマド・アリが前を向いてボールを持つと、松本泰志と相馬勇紀が挟んで止めようとするが、その間を破られた。そこから縦パスを受けたバラカトに対して、立田がタックルに行ったものの潰しきれず、追い越しにかかるアハマド・アリにボールを通されてしまう。さらに岡崎がアハマド・アリに後手を踏み、前へ出られてしまった。


その時点で、後ろに残された3バックの左・町田浩樹はドリブルで向かってくるアハマド・アリに寄せるのか、中央でフリーになったバラカトに付くのか、選択を迫られた。普通はボールホルダーへ対応するが、事実上の1対2の状況で対応が曖昧になったまま、ワイドからシュートを決められてしまった。


もし、岡崎が抜かれたことに対するカバーリングとして、町田がアハマド・アリにアプローチしていたら、中央にいたバラカトがフリーになるので、そこにパスを通されて、シュートを決められたかもしれない。しかし瞬時の対応としては、その方がベターだっただろう。


とはいえ町田だけの責任ではなく、一発で飛び込んだ立田、さらには飛び出す相手に簡単に破られた岡崎も同様だ。さらに言えば、そういう状況を作ってしまった中盤のリスク管理、そしてディフェンスラインがアクシデントではなく、連戦の疲労の影響で足を痛めて交代する結果を招いた、森保一監督の選手起用も問題になってくる。


サイド攻撃しかなかった、攻めの形


より深刻なのは「相手を終盤までに突き放せなかった」方だろう。3-4-2-1という形から4-4-2、自陣では6-2-2のような形で守るシリアに対して、アウトサイドから相馬勇紀と橋岡大樹が突破を仕掛けてクロスを上げたが、相手のディフェンスが揃っている状況で、外を使って中で崩す形が見られず、スペースを作って活用する形も生めないまま、サイド攻撃にしか活路を見出せなかった。


アウトサイドを使うにしても、中央に相手のディフェンスを引きつけてワイドに振り、斜めにえぐってマイナスにボールを出すことで、ペナルティエリア内に相手のディフェンスが下がり、バイタルエリアの中央にギャップが生じやすくなる。そこからシャドーの森島司や食野亮太郎がフリーでシュートに持ち込むか、上田綺世が一瞬の動き出しからゴールを狙うこともできる。


しかし、その形を作るための前提として必要な、1トップの上田に効果的な縦パスが入らなかった面もある。狙いを持って上田を使う攻撃は有効だったかもしれないが、その形をイメージするほどに、オーバーエイジに大迫勇也を招集することや、アタッカー陣に欧州組を揃え、彼らが持っている個人能力や経験値を組み合わせるといった方向になってしまう。それこそ、ボランチに柴崎岳を入れ、攻撃のガイドラインを引く役割を担わせると言った、人的リソースでまかなう方に解決策を見出す流れになってしまうのだ。


3戦目の相手は、勝利が必要なカタール


森保監督としては、真剣勝負が続く決勝戦まで6試合を経験する中で、選手の成長を促すとともに、東京五輪の戦力としての見極めを行いたかっただろう。その意味では、グループリーグ敗退により、準々決勝以降に経験するはずだった、貴重な3試合が失われたことになる。


サウジアラビア、シリアとの戦いを振り返っても、国を背負って五輪の出場権を取りに来る相手に競り勝てるメンタル、圧倒できるクオリティが不足し、それらを森保監督が引き上げることもできなかった。


今回の結果をもって、厳しい立場に立たされた森保監督や「結果だけではなく、内容も精査して、現場と話し合いたい」と説明した関塚技術委員長は、U-23世代の欧州組はもちろん、オーバーエイジの活用が不可欠であることを確信したはず。ただし、その可能性は大会前から覚悟しながらも、今回のメンバーに期待するところもあっただけに残念でならない。


とはいえ、15日にはカタールとの試合が待っている。アジア最強レベルの相手であり、これまでの2戦で2引き分けの彼らは、日本に勝利しないとグループリーグ敗退が決まる。全身全霊を尽くして勝ちに来る相手に、若き日本代表はすべてを出し切って勝利できるか。底力を示せるか。そこまでを含めて、チームも個人も改めて評価するべきだろう。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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