“1年程度延期”で、五輪代表を取り巻く状況は大きく変わる。A代表優先で体制を作り直すべき

COLUMN河治良幸の真・代表論 第57回

“1年程度延期”で、五輪代表を取り巻く状況は大きく変わる。A代表優先で体制を作り直すべき

By 河治良幸 ・ 2020.3.27

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新型コロナウイルスがサッカー界にも大きな影響をもたらしている。特にJリーグの中断と東京五輪の”1年程度の延期”はどちらもインパクトのあるもので、クラブも代表チームも複合的な変更に対応して、チーム作りをしていく必要に迫られている。


様々な対応を強いられる中でも、早急に方向性を決める必要があるのは、森保一監督の『A代表と五輪チームの兼任問題』だ。もともと賛否両論はあったが、兼任にはA代表と五輪代表で”ラージファミリー”を作るという大義名分があった。


森保監督の基本コンセプトを共有するとともに、A代表のベストメンバーを揃えにくかったコパ・アメリカやEAFF E-1選手権でチームを融合させることで、オーバーエイジ枠を五輪代表に融合しやすく、東京五輪を経験した選手からW杯アジア最終予選、さらにカタールW杯を戦うA代表に組み込みやすくなる。


森保監督の負担や日程的なハードルを踏まえても、プラン自体に筋は通っていた。しかし、東京五輪が”1年程度”延期されることが確定した上に、どこの日程に組み込まれるかも分からない。最終予選が年明けに始まり、渦中に東京五輪が入ってきた場合、兼任監督はほとんど意味をなさないばかりか、リスクは増すばかりだ。


A代表に新監督を選定する転機


東京五輪の日程がいつになるかはわからないが、4月には技術委員会でこの件が協議される予定だ。既定路線なら森保監督がA代表の指揮を継続する一方で、五輪監督は総監督のような立場になり、横内昭展コーチが監督を引き継ぐというもの。このプランは以前の記事でも提案したが、今回の事態を受けて、もっとも自然な流れではある。


ただし、惨敗に終わったAFC -23選手権で、主にトレーニングの指導をしていたのは横内コーチだった。U-23の選手たちは監督代行としてトゥーロン国際やブラジル遠征などで結果を出してきた横内コーチと過ごした時間が長く、森保監督より信頼関係が強いかもしれないが、東京五輪で好成績を狙うのであれば、少々、安易ではないか。


本番を見据えれば、真剣勝負の場で、より経験と実績のある森保監督が専任で五輪代表の強化につとめ、横内コーチが支える。その一方で3月と6月の活動が無くなったA代表に、新監督を選定する転機だと考えている。


新たな技術委員長に就任が内定している反町康治氏が、どういった方針を立てるかにもよるが、今だからこそ見直しを提案したい。実際にどういう監督がベストか考えると、日本のサッカーをよく知っており、かつ代表監督を経験している人物が最適だ。


W杯二次予選は残り4試合あるが、来年には最終予選があり、2年半でカタールW杯を迎えるので、新監督を迎えた場合も悠長に構えている時間はない。ただ、監督の人事がどうなるにしても、A代表の優先度がさらに上がることで、五輪代表に戦力を割きにくくなることは間違いない。


五輪へ戦力を割きにくくなる


仮に五輪の日程が1年ズレる形なら、国際Aマッチデーと重なることはないが、それでも最終予選の合間に東京五輪が入ってくるので、五輪の強化に戦力を割きにくくなってくる。


現時点では、五輪の出場資格がU-23のままの場合と、不測の延期による特定が認められてU-24になる場合の両パターンが想定される。東京五輪を目標にしてきた97年生まれの選手のことを考えれば、後者になることを願わずにはいられないが、彼らがA代表に招集される可能性は1年ではるかに高まるはず。


昨年11月には久保建英、堂安律、板倉滉などをキルギス戦のメンバーに選ばず、当時のU-22代表の国際親善試合(コロンビア戦)を優先させた。当時は冨安健洋が怪我でどちらからも外れたが、そうしたA代表クラスの選手を五輪代表の活動に招集しにくくなり、オーバーエイジはなおさらだ。


今後1年間の国際Aマッチデーから、A代表の活動スケジュールを想定すると、2020年は9月、10月、11月、2021年は3月、6月、9月、10月、11月となる。二次予選の残り4試合は今年中に終えて、最終予選の8試合は2021年の国際Aマッチデーで消化される。


幸い、カタールW杯が冬開催だったので、従来の日程から半年スライドすることが可能になったが、A代表と五輪の活動をリンクさせてプランニングすることは極めて難しい。


W杯に出られなければ本末転倒


98年のフランスW杯から、6回連続で出場している日本にとって、アジア予選を突破することは、目標というよりノルマになってきている。一方で、各大会の予選を振り返れば、決して簡単な道のりではなかった。


カタールW杯は、本大会参加チームが32カ国で行われる、最後のW杯になる。アジアカップ王者のカタールは開催国として出場が決まっているが、競争力が高まっている中で最終予選を突破しなければならない。仮に東京五輪で良い成績を残せたとしても、W杯で予選敗退したら本末転倒だ。


もちろん2021年の東京五輪を経験した選手が、A代表のメンバーに割って入り、最終予選の終盤で救世主的な活躍をするケースはありうるが、すでにA代表の選手、さらに1年間でA代表レベルの選手が増えた場合に、彼らを五輪代表の活動に参加させるのは無理が出る。


森保監督がA代表の監督と五輪代表の総監督をかねるような体制であれば、五輪代表の活動に融通を利かせやすいかもしれないが、A代表の強化のためにベストの選択を取った上で、五輪代表の活動をどうしていくかを考えて行くのが筋だ。


東京五輪の開催が、欧州のレギュラーシーズンや国際Aマッチデーと重なれば、日本に限らず、その線でチーム作りを進めていくしかない。その意味でサッカー男子に限れば、まるまる1年延期が理想だが、それでもオーバーエイジに限らず、東京五輪の本大会に出られたとしても、ぶっつけ本番に近い形での参加となる選手が出てくるかもしれない。


いずれにしても4月の技術委員会は、東京五輪だけでなく、カタールW杯の道筋を決める大事な転機である。いかなる方向性になるにしても、これまでの体制保持にとらわれることなく、妥協のない決断を期待したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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