【特別対談】「東京五輪世代の選手で、A代表に入りそうなのは誰?」

COLUMN河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論 ①

【特別対談】「東京五輪世代の選手で、A代表に入りそうなのは誰?」

By 河治良幸 ・ 2020.4.26

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新型コロナウイルスの影響で、時間が止まってしまったサッカー界。東京五輪は2021年7月に延期が発表されたが、それも開催できるかはわからない。不確定要素が多い中で、今後の日本代表、Jリーグはどうなっていくのか? レジェンドスタジアムで連載を続ける、河治良幸、清水英斗の両氏に、日本代表の選手に焦点を当て、展望を語ってもらった。


河治:東京五輪は1年延期で、U-24の大会になりました。最終予選が来年の3月からになるのか、さらに延びて東京五輪の後になるのかはわかりませんが、これまでのコパ・アメリカやEAFF E-1選手権は置いておいて、一人でも多くの選手が、フルメンバーのA代表に入ってきて欲しいという願望があります。冨安健洋(ボローニャ)、堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、板倉滉(フローニンゲン)の4人がA代表の常連で、GKの大迫敬介(サンフレッチェ広島)と東京五輪世代のキャプテン格である中山雄太(ズウォレ)もキリンチャレンジ杯で招集された経験はありますが、そのほかにA代表に入ってきそうな選手は誰だと思いますか?


清水:まずは橋岡大樹(浦和レッズ)ですね。去年1年間でかなり成長したと思います。当初は頼りなくて、ミスを連発したこともありましたけど、AFCチャンピオンズリーグなどを経験するうちに頼もしくなった。実際、森保一監督が率いた最近の試合、E-1あたりから、かなり起用されてますよね。


河治:確かに、そうですね。


清水:E-1でもメインチームのほうで2試合フル出場して、AFC U-23選手権も3試合フル出場しました。すでにA代表は視野に入っていると思います。


河治:日程が被らなければ、五輪とA代表の両方に参加しても、彼の体力なら何とかなりそうですね。もちろんケガのリスクもあるし、無茶はさせられないですけど、フル稼働しても、問題なさそうだと感じる選手ですよね。


清水:そうですね。彼はめちゃくちゃタフガイ。


河治:ディフェンス面で期待されている選手ですが、クロスの質は段違いに良くなっています。あとは、クロスの使い方ですね。A代表の中でコンビネーションを発揮していくことができるか。ただ、彼の場合はメンタリティも素晴らしいですから。


清水:課題は、クサビのパスを入れて落として展開するとか、変化をつけるところでの判断ですね。何かパターンがあると、そればっかりになっちゃうタイプなので。クロスも縦に行って蹴るパターンが有効だと思うと、そればかりになる。その辺は成長が必要ですが、もともとは興梠に「攻撃はゼロ」と言われた選手なので(笑)。この1年でクロスの質が上がったことで、攻撃でも計算できる選手に成長したと思います。


河治:一方で、橋岡と同等かそれ以上に期待されていた左サイドの杉岡大暉が、鹿島で苦しんでいます。コパ・アメリカで存在感を発揮した選手なので、期待したいです。現状は橋岡の方が順調で、A代表候補の一人かなと。一時は五輪のメンバーにも入らなかった時期がありますが、ここに来て台頭しましたね。


清水:そうですね。


河治:橋岡も東京五輪を目指してはいるでしょうけど、五輪前でもA代表で主力になって、最終予選を引っ張って行くんだぐらいの気持ちになることを期待したいです。例えば堂安律は、「東京五輪よりもA代表」と、メンバーに選ばれる前から言っていました。特に97年生まれの選手は「東京五輪世代」と呼ばれてきたので、良くも悪くも五輪に出ることを大きな目標にしてきた流れがあります。冨安もそうですが、A代表を引っ張っていける選手はメンタル的に、他の選手とは違う部分もあるので、橋岡もそうなって行けるかはひとつの分かれ目の気がします。


清水:大切なところですね。


河治:その意味で推したいのは、三好康児(アントワープ)です。コパ・アメリカで活躍しましたし、実力やメンタリティを考えると、三好がA代表に一番近いと思います。A代表は23人の枠があるので、オプションという形で入ったとしても、十分にやれる可能性はあります。上の年代と組んでも、物怖じせずにプレーできる選手ですし。現状に満足することが無い選手で、ベルギーで着実に成長している印象です。


清水:アタッカーでは、前田大然(マリティモ)も気になります。あのスピードは森保さんも好きなタイプですよね。森保さんの心情的にも浅野拓磨(パルチザン)とか、一人はそういうタイプを入れたいと思います。その意味で、前田のスピードは良い。馬力やスタミナもあるので、守備のプレッシングでも貢献しますし、トップ下や2シャドーにも置ける。多彩な起用ができるのは魅力です。


河治:そのポジションは、永井謙佑(FC東京)も呼ばれています。浅野も含めて、確立されていないところです。年齢的な伸びしろも含めて、若くてスピードのある選手、相手の裏のスペースを狙える選手といえば、田川亨介(FC東京)もいますが、前田大然の成長ぶりは顕著だと思います。ポジション的にも試しやすいので、森保監督も招集しやすいのではないかと。コパ・アメリカを経験したあたりから、メンタル面にも変化が見られますし。


清水:すぐ、代表に入れてもいいんじゃないかという選手ですね。


河治:現時点でA代表は難しくても、東京五輪までの1年間を考えると、齊藤未月(湘南ベルマーレ)や田中碧(川崎フロンターレ)、相馬勇紀(名古屋グランパス)は、取材していても、視線は東京五輪の先のA代表に向いていると感じます。


清水:もう一人気になるのが、松本泰志(サンフレッチェ広島)です。コロナで中断している間に、課題であるフィジカルに取り組むというコメントを読みました。もともと後ろでボールをさばく力は抜群なので、この1年ですごく伸びそうな感じがします。いまは五輪代表でも絶対的なポジションではありませんが、存在感が高まる可能性は秘めていると思います。


河治:松本は、タイで開催されたAFC U-23選手権では、田中碧や齊藤未月より目立たない存在でしたが、ドリブルの推進力など、ポテンシャルは高いですからね。まだ彼は、底が見えない。出し切っていないと感じます。


清水:田中碧はボールを奪う力があって、技術も高いものを持っています。でも、彼の活かし方をイメージできないんですよね。能力のバランスが良くて、選手としての器も大きい。でも、ビシッとハマるポジションや起用法がよくわからない。フロンターレの開幕戦では、中盤の底でプレーしましたけど、あのポジションがベストなのか。


河治:フロンターレでは中盤の底でプレーしながら、練習試合ではインサイドハーフでも起用されています。チームメイトの守田英正もそうですけど、とにかく何でもできる選手です。フロンターレのスタイルとして、そういう選手が出て来やすいのかもしれません。攻守の連動性とコレクティブな関係の中で、コンビネーションが生命線のチームですから。


清水:特に今の4-3-3システムだと、中盤の3枚は汗かき役にならないといけない。田中碧はシュート力も魅力だと思うし、あの中で埋没とまでは行かなくても、丸くなっちゃう気がしなくもない。まあ、今後どうなって行くのか想像がつかないポテンシャルの持ち主だと思います。


河治:ものすごくハイスペックに全てがスーパーになって行くと、全盛期の稲本潤一(SC相模原)のようなタイプになる可能性もゼロじゃないですけどね。彼はゲームコントロールのところを課題としてあげています。中村憲剛(川崎フロンターレ)や阿部浩之(元川崎、現名古屋)から学んできたことを、まだやりきれていないと自覚しているようです。


清水:そうなんですね。


河治:1-4で負けた、昨シーズンの横浜F・マリノス戦でも、痛感したようです。それはすごく大事なことだと思うんです。東京五輪のオーバーエイジに柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)があがるのも、チームの軸が固まっていないからですよね。田中碧がゲームをコントロールする部分で引っ張って行けるかも大事ですが、一方で小さくまとまってしまうリスクもあります。僕も取材していて、ゲームコントロールのことを盛んに聞いてしまうので、犯人の一人なのかもしれないですけど(笑)。この段階で小さくまとまって欲しくないんですよね。スケールを伸ばす意味では、もっと積極的にシュートを狙いに行くとか。


清水:松本泰志のようなタイプだったら、ゲームコントロールに期待するのが自然ですが、田中碧の役割は本当にそれなのかな? と思わなくもありません。フロンターレだったら、インサイドハーフの方が彼らしい感じもします。


河治:そうですね。ただ、フロンターレのいまの流れだと、エドゥアルド・ネットみたいな選手もいないので、守田もアンカーのポジションを確立しつつある中で、インサイドハーフには脇坂泰斗や大島僚太もいます。はたして、田中碧もそのポジションがいいのか。あるいはアンカーで覚醒するのか。フロンターレ次第なところもありますね。今シーズンはルヴァンカップを入れても2試合しか見れていないのでわかりませんが、フロンターレの動向は影響しそうです。


清水:先が読めないんですよ。(AFC U-23選手権での退場で)出場停止がどうなるかも含めて、田中碧は色々と読めない。


河治:それもはっきりしないうちに、コロナで延期になっちゃいましたからね。(次回に続く)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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