【特別対談】神戸は夏の補強がカギ。優勝を狙えるFC東京、川崎、広島、柏、札幌。ガンバはどうなる?

COLUMN河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論⑤

【特別対談】神戸は夏の補強がカギ。優勝を狙えるFC東京、川崎、広島、柏、札幌。ガンバはどうなる?

By 河治良幸 ・ 2020.5.17

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河治:気になるのはガンバと神戸ですかね。


清水:神戸は今季、AFCチャンピオンズリーグがあるので、開幕前はネガティブな予想をしました。過密日程になると、ますます厳しいところもあります。端的に言って、主力とサブの差が一番大きいクラブだと思う。


河治:イニエスタは当然として、西大伍や酒井高徳、フェルマーレンなど、替えの効かない選手は多いですね。


清水:はい。とくに酒井高徳とフェルマーレン。左の2人を欠くと、結構、厳しいのではないかと思います。


河治:開幕戦はフェルマーレンがいなくて、横浜FCと1-1でした。正直、攻守両面で厳しいと感じたところもありました。前線には古橋亨梧とドウグラスがいるし、TJ(田中順也)や小川慶治朗、藤本憲明もいますが、中盤から後ろは計算できる選手が限られるのが現状です。


清水:問題はそこですね。


河治:アンカーやボランチだと、安井拓也あたりが覚醒的な成長を遂げてくれると……。センターバックも上位争いまで想定すると、大崎玲央や新加入の菊池流帆も、期待値が前提になります。大崎は昨年からスタメンで出ていますが、フェルマーレンがいる、いないで大きく変わってきます。昨季、フェルマーレンがいない時にボランチのサンペールを後ろに下げて、難敵セレッソに1−0で勝った試合があったので、フィンク監督の腕の見せ所かもしれません。とはいえ、正直、未知数です。リーグ再開が早くて6月、下手したら8月と言われている中で、まだ1試合しかやっていない状況ですが、補強する可能性もあるわけで。


清水:神戸にはそれがあるんですよ。


河治:あくまで想像の話ですが、ベルギーのロケレンが破産して、所属クラブが無くなった天野純やサイドバックの小池龍太が入ってくる可能性もなきにしもあらずで。(※天野は後日マリノス加入濃厚との報道あり)。サイドバックは西ひとりで、フルシーズン出続けるのは考えにくいですよね。外国人の補強もあるかもしれませんが、外国人枠が関わってきます。今季、ドウグラスを獲りましたが、補強は最小限でした。あれは、夏の補強を見越してだと思うんです。


清水:神戸の補強は夏が本番でしょう。最近はそうなっています。特に、海外でプレーする日本人選手の中から、この夏に補強できるかどうか。


河治:酒井高徳の加入も、去年の今頃は想像もつかなかったですからね(笑)。ベストメンバーでぶつかれば、今年2月のゼロックススーパーカップで見せた通り、マリノス相手でも互角にやれるチームです。(※3-3引き分け。PK戦の末、勝利)


清水:ベストメンバーが組めたら、相当強いですね。ドウグラスもすんなりハマっているし。


河治:それもあって、中盤から後ろの補強が、夏に成功するかどうか。逆に言えば、名前を出した安井や大崎、菊池には奮起を期待したいですね。もし、この記事を読んでいたら「今に見とけよ」と思って欲しい。


清水:さて、ガンバはどうでしょう? Jリーグ屈指のスター集団になった感があります。特に日本人選手は、名も実力もある選手が多い。


河治:ガンバは開幕戦のマリノス戦に向けて、1週間集中して準備して、結果を出しました。それ自体は素晴らしいことですが、あれがスタンダードになるとは限らない。というのも、前回王者のマリノスはガンバから見て格上でしたが、ガンバが格上と言えるチームって、マリノス、川崎、FC東京などの限られたクラブだけ。鹿島は監督が代わって試行錯誤の時期なので、現時点では格上とは言えない。あとは強いてあげるなら、フルメンバーの神戸。


清水:はい。


河治:要するに、ガンバが”弱者の戦い”と言いますか、特殊な対策を施して臨む試合と、普段通りに、宮本(恒靖)監督がキャンプから目指したスタイルを、そのまま押し切るべき試合の2通りあります。今年は「高い位置からボールを取ろう」というコンセプトがあるらしいですが、その中でもマリノス戦のように、特殊な守り方をしなくても戦える相手に対して、勝ち切れるか。過密日程の中で、どう使い分けができるのか……。マリノス戦の勝ち方がスタンダードになってしまうと、たとえばセレッソのような勝ち点の積み上げ方は、ガンバには想像しにくい。


清水:マリノスみたいな強烈な組織を食うチームになる一方、総合では勝ち点を落とすかもしれない。その不安はありますね。どのチームが相手でも、勝ち点は同じ3なので。


河治:大物食いはできても、結局取りこぼして、気がついたら去年の7位よりも順位が落ちていましたとか……。去年は残留争いギリギリまで落ちて、お尻に火がついて、ある種のブースターがかかったじゃないですか。


清水:今年は降格がないので、順位が下がっても、お尻に火がつかないかもしれません。


河治:宇佐美貴史や小野瀬康介、井手口陽介などがいますし、選手のベースはJ1の中でもかなり高いのは間違いない。宇佐美と井手口は去年、途中加入でしたけど、今年は最初からいるので、彼らが怪我をせずに常に出場できれば、個の部分では高いものがあります。


清水:はい。


河治:ただ、ムードですよね。リーグ再開後、しばらく勝利を積み重ねられないと、メンタリティの持って行き方が、去年よりも難しいのかなと。勝つべき試合をしっかり勝ちながら、要所要所の川崎やマリノスとの戦いには対策して勝つ。すべがハマると、上位には行くと思います。


清水:ガンバは読みづらいチームですね。FC東京はどうですか。


河治:4−3−3の新システムで臨んでいると言っても、大きくスタイルは変わっていないので、鹿島や清水のような転換期のタイムラグがあまり無いように思います。3トップにする分、中盤の負担が大きいけど、安部柊斗という素晴らしいタレントが出て来た。東慶悟も視力が回復しているようだし、良い競争関係で選手層を高められそうです。


清水:ディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、アダイウトンは強烈のひと言ですね。開幕の清水戦もすさまじいトリプルカウンターアタックでした。ただ、個に依存しすぎて、攻守がハッキリ分かれると、中盤3人の負担が増してきます。ビルドアップが巧みで、ボールを動かせるチームには苦労するかもしれません。


河治:中盤からのサポートや攻守のトランジションは、永井謙佑とディエゴの2トップより、対応するべきエリアが広くて難しそうです。


清水:とはいえ劣勢なら劣勢で、ブラジルトリオのロングカウンターがあります。開幕の清水戦は田川を先発、アダイウトンを後半から投入し、スペースが空いてくる後半にブラジルトリオを揃えました。この采配もハマったと思います。大卒の3人(安部柊斗、中村帆高、紺野和也)がそろって即戦力ですし、選手層が非常に厚い。


河治:そう思います。


清水:今季は選手交代で5人起用できる見込みなので、時間帯ごとにカードを切ると、うまくゲームコントロールできそうです。ACLを見据えての編成だったと思いますが、予期せず超過密日程になり、選手交代も5人に増えたリーグ戦では、かなり効果を発揮するかもしれませんね。


河治:3トップも外国人選手に加えて、紺野和也が面白いオプションになるので、原大智や田川亨介が刺激を受けてひと伸び、ふた伸びしてくると、長谷川健太監督が優勝のボーダーとしてあげた55得点(昨年は46得点)は、十分に達成できるかなと思います。3トップにどうハマるか分からないけど、永井謙佑の復活にも期待したいですね。


清水:最後に、変則的になったリーグ戦の優勝予想だけしておきませんか? これだけ喋ると、逆に決められなくなりますが(笑)。


河治:僕は専門誌で予想した通り、初志貫徹でセレッソと言いたいところですが、過密日程の不安もあるので、セレッソ優勝の期待は残しつつ、川崎フロンターレで。クオリティやチームの完成度を含めて、優勝戦線に来る可能性が高いと思います。あまり今回、話題に出してなかったけど(笑)。


清水:突然の川崎(笑)。


河治:まあ元々セレッソの次、2位にしていたので。


清水:僕は札幌を優勝に推しましたけど、トランジションをどうするかなあ。今季はカウンタープレスを志向していますが、過密日程では辛いと思う。後ろでゆったり回すか、割り切って引くか。いずれにせよゲームスピードを落として、のらりくらりと意図して戦う要素がないと。開幕戦みたいなノーガードの打ち合いは明らかに厳しい。


河治:はい。


清水:ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)はおそらく、攻守どっちもアグレッシブに行けと言うのかな。浦和は経験のある選手が多かったので、「ミシャはああ言ってるけど、俺たちは割り切るところは割り切って判断しようぜ」みたいなバランスがあり、ミシャもそれを尊重する様子がありました。でも札幌はまだミシャに対して、素直というか、愚直に彼のアイデアを実践しようとする気がする。そこが勝負事としては、心許ないですね。過密日程を賢く乗り切れるかどうか。だからって代わりに、開幕戦で勝った側の柏の優勝と言うのも、安直すぎるかな(笑)。


河治:柏はあると思いますよ。だって、オルンガを止められないもの。浦和の2トップはJ最強だけど、オルンガは個人でもJの規格外。ヨーロッパの主要リーグに戻っても、十分にやれそうです。


清水:戦術もしっかりしてますしね。でも、僕は広島かな。鋭くプレスに行けるし、攻守両方をコントロールできる力がある。ボールを持ってのらりくらり、守ってのらりくらり。過密日程では必要な要素です。


河治:城福監督が持っている、チームのパフォーマンスを均一化できる柔軟性、アベレージを高くする中での安定感は出ると思う。あとは過密日程を消化して行く中での、サブメンバーのクオリティですね。ただ昨シーズン、青山敏弘がいない時期を経験していますからね。チーム内の競争はすごくシビアなので、それがジワジワとアドバンテージになっていくかもしれない。


清水:開幕戦も、鹿島に60%以上ボールを持たれても、結局失点はゼロですからね。そういうところは強みかな。


河治:今季も楽しみなチームはたくさんありますね。サッカー記者の宿命と言うか、開幕前の予想はいやでも毎年させられますけど、長期の中断という、開幕前と状況が変わった中、あえて挙げる優勝予想も面白いですね。(終わり)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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