【特別対談】東京五輪メンバーを占う。オーバーエイジはJリーガーで行くべき!? 

COLUMN河治良幸×清水英斗 世界基準の真・日本代表論⑦

【特別対談】東京五輪メンバーを占う。オーバーエイジはJリーガーで行くべき!? 

By 河治良幸 ・ 2020.6.18

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河治:東京五輪のメンバー編成で難しいのは、オーバーエイジをどう使うかですね。フルに3枚使い切る必要があるのか。新型コロナウイルスの影響で、状況はかなり複雑になってきたと思います。


清水:そうですね。東京五輪が1年延期されたことで、オーバーエイジの方針は大きく変わるかもしれない。


河治:それを踏まえて僕の布陣は、ベストメンバー志向みたいな感じではなくなったんですよ。2020年夏の五輪でメンバーを考えるのとは、明らかにマインドが違う。だって、1年後はどうなるかわからないから。


清水:そこはありますよね。AFCはW杯2次予選を10月、11月で消化する方針を立てました。そうなると、五輪代表とA代表の活動時期が重なる可能性が高い。招集方針をはっきりしないと、選手の取り合いになってしまいます。


河治:仮にオーバーエイジの選手が、6月のA代表の最終予選を戦った後、7月の五輪直前に合流することになったら…。 前回のリオ五輪でも、オーバーエイジの興梠慎三は能力的にはスペシャルだったけど苦労したし、藤春廣輝も大きなミスをしてしまいました。塩谷司も個人能力は当時の五輪世代と比べて一段高かったと思うけど、チームにフィットしていたかというと…。


清水:A代表のメンバーからオーバーエイジを選ぶと、今回もフルメンバーを揃えた五輪チームの準備期間は短くなってしまいますね。


河治:そうなりますし、個人的にはA代表を優先して、A代表に集中してほしいと思っているんですよ。


清水:わかります。河治さんが考えるオーバーエイジの方針は、A代表を招集外か、あるいはサブ扱いの序列の選手を想定し、早くから五輪代表に招集してフルメンバーで本番の準備をする、ということですよね。直前合流は基本無しで。


河治:そうです。その中でも、柴崎岳(デポルティーボ)は森保監督と一心同体なので、彼だけは無理をしてもらって。人生をかけて代表をやっている感じがあるので。鎌田大地(フランクフルト)がA代表の最終予選で必要になるのであれば、五輪に招集しなくてもいいと思います。極論、五輪代表はオーバーエイジなしでもいい。もしオーバーエイジを呼ぶのであれば、国内組の選手で、ディフェンスラインであれば三浦弦太(G大阪)のような選手を早くから五輪代表に招集して、時間をかけてチームにフィットさせる。


清水:はい。


河治:これまでのレジェンドスタジアムの記事でも匂わせていますが、僕はA代表優先主義です。そのため、東京五輪でオーバーエイジを3人フルに使うことにこだわらないし、仮にもう1枚オーバーエイジを加えるのであれば、GKの川島永嗣(ストラスブール)ですかね。


清水:その方針はありだと思います。僕の布陣は、招集できない場合の第2候補を考えつつも、基本的にはベストメンバー志向で選んだので、オーバーエイジは3人どころか4人でも5人でも足りないと思っていました。 ただ、A代表の主力からオーバーエイジを選ぼうとすると、W杯最終予選と日程的に重なるのが濃厚である以上、五輪代表には直前合流になってしまうし、下手をしたら五輪に参加したことで、9月の最終予選でコンディションが整わなくなるとか、A代表への悪影響も否定できない。


河治:そうですね。


清水:そこは、東京五輪のプライオリティをどう考えるかだと思います。メダル獲得を最優先するなら、オーバーエイジは集めたい。たとえば、今は調子が悪くても、大迫勇也(ブレーメン)は他の選手にないクオリティーを持っているし、タイプの違う前田大然(マリティモ)と合わせて試合を作りたい。大迫レベルなら直前合流でも入れたいところだけど、前後のコンディション等は難しいですね。


河治:ワントップで言うと、小川航基(磐田)はU-24にあたるので、EAFF E-1でA代表のキャップは付きましたけど、東京五輪までにフルメンバーのA代表に入っているくらいの気持ちで頑張ってほしいと思っています。小川がワントップに入った上で、前田と鎌田のどちらかをシャドーに置きながら、2トップ気味になり、もう一人は久保建英(マジョルカ)や三好康児(アントワープ)を起用するのもいい。1年後はU-23で参加する大会ではなくなるので、事実上、A代表と同じくらいの気持ちでやってほしいですね。


清水:僕は大迫をオーバーエイジで呼ぶ前提でメンバー編成をしたので、小川は入れませんでした。正直、小川も上田綺世(鹿島)もどちらも一皮剥けないと厳しいと思っています。小川はボールを受ける前の駆け引きで、もっと仕掛けてほしい。目の前の相手とせーので勝つ自信があるからなのかわからないけど、ふわっとしたポジションを取りがちです。逆に上田は駆け引きに長けていて、点の取り方を知っているけど、フィニッシュの局面で身体能力と技術がこのレベルについてこない。2人は相反する状況だと思うけど、一皮剥けていないという点では同じです。


河治:このポジションは、田川亨介(FC東京)も含めて、他の選手にもワンチャンスありますね。小川は東京五輪世代ですけど、U-24の最年長、ロンドン五輪で言う吉田麻也(サンプドリア)と同じような年齢での参加になります。その点でも、オーバーエイジぐらいの意識で引っ張ってほしい。一方で田川のような、昨年のU-20W杯組から突き上げた選手には、この1年が年齢差を埋める時間になると思います。FWだけではなく、DFでも瀬古歩夢(C大阪)など、年齢的な伸びしろが大きい選手はいます。


清水:今年のルーキーを見ても、特に有望な若手が多い印象です。五輪が1年延期されたことで、誰が出てきてもおかしくない状況にはなりましたよね。


河治:大卒ルーキーは97年生まれだと、小川と同じU-24にはなりますが、プロ1年目で試合に出て、ぐっと伸びる選手がいます。僕は安部柊斗(FC東京)を18人のメンバーに入れましたけど、可能性は大きいんですよね。田中駿汰(札幌)がチームで使われるかどうかとか、そういうことを含めてですけど。高卒ルーキーはまだ読めないじゃないですか。荒木遼太郎(鹿島)のように、ポテンシャルがある選手はいますけど。


清水:そこは今季、Jリーグで見たい大きなポイントかな。さて、他に18人のメンバー選びでポイントになったところはありますか?


河治:堂安律(PSV)をメンバーから外したんですけど、なぜかと言うと、彼は直前まで五輪チームに合流できないかもしれないからです。だったらA代表に専念してもらった方がいい。堂安は「絶対に五輪!」と言ってきた人ではないし、冨安健洋(ボローニャ)ほど絶対的に必要かと言うとそうでもない。シャドーのポジションは森島司(広島)なども含めて、他にも候補はいます。ただし、久保建英が来季もマジョルカに残るとか、他のチームに再レンタルではなく、レアル・マドリーのトップチームでプレシーズンキャンプに参加するから東京五輪に出られないといったことになったら、堂安が必要になるのかもしれないですけど。


清水:僕も堂安は入れなかったです。久保がいるから。どっちの能力が上かというより、久保は五輪出場のプライオリティを自ら高くしているので、早くから招集が計算できる。4-2-3-1なら久保と堂安を同時起用してもいいけど、1トップ2シャドーなら、違うタイプを並べたほうが、バリエーションは出ると思う。堂安は賢いので、周りを見ながら柔軟にプレーの幅を出せる選手ですが、彼のユーティリティ性に頼ってチームが出来上がる前に、試したいジャストフィットの組み合わせがあると思う。


河治:堂安には、A代表で大活躍してほしいですね。


清水:東京五輪のメンバーは18人なので、1~2枚しか入れられないけど、仕掛けで戦況を変えるジョーカーも必要ですよね。1枚でリズム変えられる三笘薫(川崎)とか。


河治:三笘はドリブルが独特だし、三好や久保、堂安とも全然違うので面白いと思います。


清水:三笘が後半から入ってきたら、あの独特なドリブルのステップに相手はついていけないかも。切り札的に、メンバー入りさせたい選手です。


河治:ドリブルの切れ味で言えば、紺野和也(FC東京)もJリーグで飛び抜けていて、欧州主要リーグで通用してもおかしくないレベルだと思う。あとはそれをどう使って行くか。さじ加減やトータルのスタミナ、守備などは向上の余地がありますが。三笘も紺野も、すごく面白い選手です。新型コロナウイルスの影響で、Jリーグを経験できていないのがネックになりつつも、五輪は1年延期になったので、ここからの伸びしろに期待したいですね。


清水:注目です。


河治:大卒ルーキーからもう1人挙げるとしたら、横浜FCの松尾佑介ですかね。松尾は三笘と同じく、外国人DFが対峙したときに、慣れてないと止められない選手だろうなと。


清水:松尾、いいですね。あとはウインガーのほか、点を取る若手が出てきてほしい。誰もいなければ、仲川輝人(横浜FM)や鈴木武蔵(札幌)をオーバーエイジにしてもありかな。


河治:オーバーエイジとして、A代表のレギュラークラスを五輪代表に集められない状況を考えると、国内組がオーバーエイジで東京五輪に出場するチャンスはそれなりに大きいと思います。W杯最終予選があると言っても、その時にA代表の主力でなければ、オーバーエイジとして東京五輪に出た方が、彼らにはメリットになる部分もある。それに、国内のキャンプに参加しやすいのは大きいです。東京五輪は自国開催なので、環境適応に支障が無いことも含めて。


清水:そう考えると、若手だけでなく、今季はJリーガー全員が五輪出場に向けて、アピールできるわけですよね。五輪の1年延期によって、オーバーエイジの方針は大きく変わるかもしれない。そこが18人のメンバー選考の、キーポイントになりそうです。(次回・なでしこジャパン編に続く)



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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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