森保監督のA代表優先を表明。A代表、五輪代表入りへ、各世代で競争が激化する

COLUMN河治良幸の真・代表論 第60回

森保監督のA代表優先を表明。A代表、五輪代表入りへ、各世代で競争が激化する

By 河治良幸 ・ 2020.7.15

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日本サッカー協会は東京五輪の1年延期を受けて、議題にあがっていた森保一監督のA代表と五輪代表の兼任に関して、A代表の活動を優先しながら、東京五輪の直前合宿から本大会まで、五輪代表を率いる結論に至ったことを表明した。


東京五輪の直前までは、2019年のトゥーロン国際トーナメントで準優勝に導いた横内昭展コーチが”監督代行”を務める。おそらく直前合宿と本大会も現場監督は横内コーチで、森保監督はチーム全体やスタッフを支える総監督的な立場になるのだろう。


今年1月に行われたAFC U-23選手権も、トレーニングは横内コーチが指導しており、森保監督が直接指導することが多いA代表とは異なっていた。東京五輪では、そうした役割分担が明確になるかもしれない。


A代表は今年の10、11月にカタールW杯のアジア二次予選があり、来年3月から最終予選がスタートする。近年のアジア諸国の成長を考えると、日本が初出場を決めた1998年のフランスW杯以降、もっとも厳しい最終予選になりそうだ。


ベストメンバーで臨むことが難しくなった東京五輪


反町康治技術委員長も、A代表を優先することを強調しており、U-24の大会となった東京五輪のチーム強化において、すでにA代表を経験している選手や、A代表に相応しい力があると評価された選手は、A代表での活動が優先される見込みだ。


冨安健洋(ボローニャ)をはじめ、堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、板倉滉(フローニンゲン)といったA代表の常連はもちろん、フルメンバーのA代表に招集経験のある中山雄太(ズウォレ)や大迫敬介(広島)、さらには田中碧(川崎)など、五輪世代がメインだった昨年のコパ・アメリカやEAFF E-1選手権の経験者からも、W杯アジア二次予選、そして最終予選を戦うA代表に招集される可能性がある。


A代表と五輪代表を1つのラージグループと想定する森保監督のビジョンを踏まえれば、そうした選手たちの中からも、東京五輪のメンバー18人に組み込まれる望みはあるが、世間的にイメージされるような“ベストメンバー”で東京五輪に臨むことが、極めて難しくなったことも確かだ。


言い換えれば、今年の夏に東京五輪が行われていたら、ほぼノーチャンスだった選手が、今後のアピール次第で最終メンバーに食い込む可能性が一気に高まったと言える。


五輪代表入りへ、門戸が開かれたルーキーたち



長い中断期間が明けて再開したJリーグで、活躍が目立つのは大卒ルーキーの選手たちだ。上記のE-1にも招集された札幌の田中駿汰や川崎の旗手怜央などを除き、主に1997年生まれである大卒ルーキーの多くは、これまで五輪代表の招集経験が無い。


だがJリーグでの活躍次第では、五輪代表に呼ばれる可能性は十分にある。その筆頭格とも言えるFC東京の安部柊斗は、オンライン取材で「FC東京で持ち味を出して、試合に出場し続けて結果を出せば、五輪も見えてくると思うし、そこは狙っていきたい」と語っていた。


安部と同じ明治大の卒業生である横浜FCの瀬古樹、サガン鳥栖の森下龍矢といった選手もプロ1年目で主力に定着しており、J2長崎の再開後の躍進を支える毎熊晟矢、大宮の西村慧祐なども、森保監督の目に留まる期待は高くなっている。


現役の大学生でも、来年以降のJリーグ加入が内定し、特別指定としてクラブの活動に参加している選手も多く、再開後の過密日程を考えれば、出場チャンスを得られる可能性が高い。


パリ五輪世代からの飛び級は?


さらに期待が膨らむのは、”パリ五輪世代”とも呼ばれる高卒ルーキーや、クラブユースから昇格したばかりの若きタレントからの”飛び級選出”だ。2001年生まれの久保建英もこの世代であり、彼は別格にしても、才能のある選手が多いと期待されていた。


7月11日から15日にかけて、千葉県の幕張にオープンした『高円宮記念JFA夢フィールド』で、U-19日本代表候補の合宿が行われた。これは、今年10月にウズベキスタンで開催されるAFC U-19選手権に向けた活動で、森保監督もグラウンドを見渡せる二階席から視察し、練習後には選手たちに激励の声をかけていた。


森保監督も注目する選手の1人、斉藤光毅(横浜FC)は練習後のオンライン取材で「これからもっと結果を残して、活躍していかないといけない立場。言われた通り、チームで頑張るのもそうですし、個人昇格、A代表、より上を見ながら、1つ1つ上がって行きたい」と意気込みを語っていた。


現在のU-19日本代表選手の目標は、AFC U-19選手権を勝ち抜き、来年インドネシアで開かれるU-20W杯に出ることだが、昨年のポーランド大会では、予選の主力だったGK大迫、久保、安部裕葵(バルセロナ)がコパ・アメリカのメンバーに入り、U-20W杯には参加しなかった。


同世代の仲間たちと世界で戦いたい気持ちは当然あるはずだが、代表選手として1つでも上のカテゴリーを目指すのは健全な環境だ。前回のU-20W杯を”飛び級”で経験している斉藤や今回のU-19の合宿は怪我で外れている西川潤(セレッソ大阪)、サガン鳥栖の主力である松岡大起などは、今からでも現実目標になり得る。


そのほかのメンバーも、今後の成長次第でU-19、U-20を越えて、東京五輪、その先のA代表に道はつながっている。


森保監督の兼任について、否定的な声が多く聞こえてくる。筆者も東京五輪で結果を残すことを考えれば、不安材料が多いと見ているが、東京五輪の直前と本大会を除き、森保監督がA代表を優先する方針を表明したことで、かつて無い厳しい戦いが予想されるW杯最終予選に向けてベクトルが定まったこと、そして多くの選手に東京五輪のチャンスが広がることは、ポジティブに受け止めている。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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