夢フィールドから世界へ。U-16とU-19、アンダーカテゴリーからA代表につながる縦のライン

COLUMN河治良幸の真・代表論 第61回

夢フィールドから世界へ。U-16とU-19、アンダーカテゴリーからA代表につながる縦のライン

By 河治良幸 ・ 2020.7.28

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千葉県幕張の臨海エリアに「高円宮記念JFA夢フィールド」がオープンし、新型コロナウイルスの影響で中断されていた代表活動がスタートした。


影山雅永監督率いるU-19日本代表は、7月11日から15日まで。森山佳郎監督率いるU-16日本代表は、22日から26日にかけて5日間の合宿を行った。


U-19代表は、今年10月開催予定のAFC U-19選手権(ウズベキスタン)を勝ち抜き、来年のU-20W杯を目指すチームで、U-16代表は今年の11、12月に開催されるAFC U-16選手権(バーレーン)を経て、U-17W杯出場を狙うチームだ。


代表合宿集合時に、選手全員がPCR検査を受けるなど、日本中でスポーツ活動がままならない状況で、日本サッカーの総本山であるJFAが「安全対策をした上で、率先して行動する」という姿勢の表れでもあり、間近に迫った”最終予選”をなんとしても突破して、アンダー世代の選手に世界の舞台を踏ませるという意気込みを示した形でもある。


筆者はU-19代表、U-16代表ともに3日間取材したが、メディアは選手に接触できないため、ネットの外から見学し、取材は全てオンラインで行われた。それでも育成年代からA代表まで日本代表を取材する身としては、JFAのエンブレムが目に飛び込んでくるエントランス、緑に囲まれた天然芝のフィールドを目にするたび、これまでに無い高揚感があった。


千葉県幕張にできた、素晴らしい施設


夢フィールドにはJFAの現場スタッフも常駐しているため、A代表と五輪代表の森保一監督も、施設のテラスから紅白戦などを視察。練習後にはU-19、U-16のそれぞれに激励の声をかけていた。


「近隣のホテルから歩いて7、8分。JFAの施設に向かって歩いていくのが楽しい」と語るのは、U-19代表の影山監督。男女サッカーの各カテゴリーに加えて、フットサル日本代表のスタッフも利用しており、影山監督もフットサル代表のコーチとグラウンドでボール回しを楽しんだという。


「ミーティングスペースも素晴らしい。ソーシャルディスタンスを保っても余るほどの広さで、映像を見てすぐにグラウンドで練習できる。選手たちもまた、ここに来たいと思っているはず」


影山監督がそう話す通り、U-19代表の染野唯月(鹿島)は「サッカーがしやすい環境。ロッカールーム、天然芝、人工芝、トレーニングルームもあって、施設としては最高」と感想を述べる。なにより大きいのは、日本代表の施設でトレーニングできる喜びと誇りだ。


「ロッカールームにA代表の写真が貼ってありました。自分もそれを見ながら、A代表を目指さなくてはいけないと思いました。そういうことが意識できる場所だと思います」


サガン鳥栖の本田風智は、森保監督の激励にモチベーションを高めた様子で「今のU-19で違いを見せられたら、A代表に呼ばれるのも夢ではないと思います。そこで自分がどれだけ見せられるかに、こだわってやっていきたい」と意気込みを語っていた。


前回のU-20W杯を経験した斉藤光毅(横浜FC)も「チームで頑張るのもそうですし、個人昇格、A代表、より上を見ながら、1つ1つ頑張りたい」と話し「これからもっと結果を残して、活躍しないといけない立場だと思う」と引き締めていた。


U-19代表の選手たちは、今後の成長やパフォーマンス次第では、来年に延期された東京五輪にも手が届く立場である。もしそこに選ばれた場合は、来年のU-20W杯に出られない可能性が高くなるが、昨年のコパ・アメリカのメンバーに入った大迫敬介(広島)、久保建英(マジョルカ/当時FC東京)、安部裕葵(バルセロナ/当時鹿島)のように、その選手にベターな環境だと代表監督が判断すれば、”飛び級”は可能な世界だ。


久しぶりの活動になったU-16代表


U-16代表の選手たちは所属クラブのユースカテゴリーで活動しており、プロや大学の選手で構成されるU-19代表以上に、新型コロナウイルスによる活動の制限を受けている。さらには高校受験もあったので、なかなか試合形式のトレーニングができていない状況だ。


U-16代表の森山監督も「1年間ぐらい、まともな活動が出来ていなかったので、運動量もインテンシティーも我慢して見守るしかない」と認める。それでも、夢フィールドにやってきた選手たちは、抑えられていたものを解放させるように、ピッチで溌剌とした動きを見せ、森山監督を驚かせた。


「選手たちの元気な姿を見られて、楽しいですね。最初のスモールゲームからバチバチして、抑えていたものを発揮する強烈なエネルギーを感じました。自分もおじいちゃんになりかけてたのが、2、3歳若返ったかな(笑)」


今回は37人のラージファミリーで合宿を行い、”飛び級”でクラブのU-18に参加している2005年生まれの選手からも数名呼ぶなど、可能な限りのチェックを行い、刺激を与えた。


森山監督も視察がままならず、新戦力の発掘も進んでいない状況だが、U-15代表を経験している選手をベースにニューフェイスを加え、11月までの限られた時間でメンバーを絞り込むと同時に、チームを作り込んでいく必要がある。


「9月から所属チームでU-18のリーグ戦がスタートしますけど、そこで90分やらせてもらえる選手、レギュラーを掴める選手、レギュラーを掴めなくても90分を意識して高められる選手がどれだけ出てくるか」(森山監督)


AFC U-16選手権は、90分の試合が過密日程で決勝まで6試合続く、過酷な大会だ。体力的に慣れていないことから、上のカテゴリーよりも足をつる選手が目立つ大会でもある。さらに、新型コロナウイルスによる活動短縮の影響により、所属チームでの環境の差がパフォーマンスに表れる可能性が高い。


だからこそ森山監督も、これまで以上にクラブでの出場時間などを精査して、選考に生かすことになりそうだ。


選手や指導者に、世界への夢を抱かせる場所


U-16選手権に向けたキャプテンが決まっていないU-16日本代表の中でも一際、リーダーシップを出していたのが「自分は明るい性格なので、自分の声でチームを良い方向に持っていきたい」と話す、横浜FCユースの池谷銀姿郎だ。


「新型コロナウイルスの状況で、近くの公園でしかボールを蹴れない時期が続いていたので、良い施設はモチベーションになります。こういうところでずっとサッカーをしていたいです」


夢フィールドの環境をそう語る池谷は、厳しい状況を認識しながらも「いまはベストコンディションではないですけど、今ここでできるベストなプレーを心がけて、自分の特徴を出した」と手応えを語り、自チームに戻ってもポジション取りなど、これまで以上に意識して取り組んでいきたいという。


注目選手の一人、神村学園の大迫塁は「久しぶりでしたが、とてもいい雰囲気で、臆することなく声を出してやれた」と振り返り、「このチームは明るい。みんな楽しくできるチームなので、世界も行ける」と前向きに語ってくれた。


大迫が中盤の主軸候補なら、前線のエース候補は”ガンバの南野”こと南野遥海(ガンバ大阪ユース)だ。


大先輩の宇佐美貴史や堂安律(PSV)がそうであったように、ユースからいち早くトップに昇格して活躍し、”遥海”という名前の通り、世界に挑戦したいという南野は「そのためには言語やコミュニケーション、メンタル的な準備が必要で、ピッチ内では活躍するための技術や頭の良さも必要になってくる」と高い意識を主張する。


その南野も夢フィールドの施設に気持ちを高揚させた様子で「こういう環境があることは、自分たちもそれに応えていかないといけない責任もあります。いつもよりテンションを上げて、練習に臨めるのが一番良い」と真っ直ぐな向上心を言葉にも表情にも表していた。


日本サッカーの新たな活動拠点となる夢フィールドは、新型コロナウイルスの感染拡大が続く厳しい状況においても、選手や指導者に世界への夢を抱かせる場所だ。ここから日本サッカーを代表する選手、世界で活躍する選手がどれだけ出てくるのか、楽しみだ。(文・河治良幸)


写真提供:河治良幸

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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