サッカー界にも広がる新型コロナウイルス。代表活動に影響を与える懸念

COLUMN河治良幸の真・代表論 第62回

サッカー界にも広がる新型コロナウイルス。代表活動に影響を与える懸念

By 河治良幸 ・ 2020.8.9

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サッカー界においても、新型コロナウイルスの影響が拡大している。8月1日から5日まで、千葉県内でU-19代表候補合宿が行われる予定だったが、集合時の検査で選手一人に陽性者が出たため、合宿が中止になった。


土日のJリーグでメンバー入りしている以外の選手はドアトゥドアでホテルに着き、フロントで鍵を受け取って部屋に入り、食事と二種類の検体を行う流れになっていた。二種類の検体の1つがPCR検査で、検体サンプルを保健所に提出し、検査結果が報告される仕組みだ。


代表活動の場合は優先的にチェックしてもらう形を取っていると思われるが、それでも陽性・陰性の結果が分かるのは18時ごろだという。


もう1つの検査方法であるSmartAmp法は、検体から1時間程度で結果が分かる方法で、この日も午前10時に検体を採取して、すぐに結果が出たことで早い対応ができた。


メディア取材に応じた反町康治技術委員長は「集合した選手全員、一律でやっていたので、かなり早い時間に分かった。ただし1回ではと言うことで、陽性の選手は2回、3回と検査を行った。それでも残念ながら陽性が出た」と説明した。


最終的な活動中止の判断は、PCR検査の結果を待ってからになったが、反町委員長は「医学業界のガイドラインに従うと、陽性の選手を含まず、陰性の選手だけで練習することは不可能ではない」と前置きしながら、感染拡大の状況を考えて、慎重な判断を取らざるを得なかったようだ。


Jリーグでは、試合直前に中止になる事例も


さらにJリーグでは、8月2日、大宮アルディージャとアビスパ福岡の試合が行われる直前、PCR検査の結果により、福岡の選手1名に陽性の疑いがあり、濃厚接触者の特定が間に合わないことから、中止が決定された。


筆者は午後の早い時間にU-19の練習を取材し、その足で大宮に向かう予定を立てていたので、1日で二つの現場取材が無くなったわけだが、Jリーグの村井満チェアマン、大宮、福岡の関係者によるオンライン記者会見で分かったのは、試合直前にこうした報告が保健所から来るのは異例であるということだ。


8月1日のFC東京とサガン鳥栖の試合前に、鳥栖の選手1名が高熱で欠場。後日その選手は陰性であることが発表されたが、そうした事態があったこと。さらに代表合宿の検査で陽性が出たということで、Jリーグは保健所に優先的な検査と報告を求めた。


その結果、鳥栖や町田をはじめ、日曜日に試合が行われるJ2のクラブも優先順位が早まった中で、福岡の選手に関して「極めて陽性の可能性が高い」という保健所の報告が、試合直前に来た。(後日、福岡から陽性の選手が発表された)。


これまでJリーグでは、2週間に1度、PCR検査が一斉に行われており、先週末が4回目だった。しかし、その隙間を突く事態が続いているのが実情だ。


効率的な検査体制の強化も検討


7月26日に予定されていた広島と名古屋の試合は、名古屋の選手2人とスタッフ1人に陽性が出たことを受けて中止になった。保健所によると、陽性と診断された選手とチーム内の濃厚接触者はいないという見解だったが、名古屋は独自に選手・スタッフ60人のPCR検査を実施。新たに選手1名とトップチームのスタッフ1名に陽性が出ている。


名古屋はその後、翌節の柏レイソル戦に向けてクラブで3度のPCR検査を行い、活動再開と週末の試合にこぎつけることができたが、こうしたケースは今後も起こりうる。


村井チェアマンは、代表チームが行っているSmartAmp法とPCR検査のダブルチェックを有効手段と認識しており、PCR検査に加えて、試合のメンバー入りが確定している選手やスタッフを対象にSmartAmp法の検体を行い、陽性が出た場合には、代わりのメンバーを補充するといった、効率的な検査体制の強化も検討しているという。


今回、代表活動に陽性者が出て、活動中止になったことは残念だが、JFAとJリーグが情報を共有し、より良い検査手順やプロトコルを模索していくのは有意義なことだ。さらなる感染拡大も見込まれる中で、代表チームとJリーグに同時的な問題が起き、対応に追われたことも、前向きに捉えて進んでいくしかない。


Jリーグもそうだが、懸念されるのは今後の代表活動が順調に行われるかということ。今回、合宿が中心になった、影山雅永監督率いるU-19日本代表は、10月14日からウズベキスタンで開催されるAFC U-19選手権に向けて、かなり限られた期間で準備して行く必要がある。


代表活動に与える懸念


ご存知の通りAFC U-19選手権はU-20W杯の予選をかねており、アジアからはU-20W杯開催国のインドネシアほか、U-19選手権で準決勝に勝ち上がった4カ国に出場権が与えられる。


U-19選手権のグループステージはB組でイラク、バーレーン、韓国が相手となる。この年代で強力なライバルとなっているイラク、韓国と同グループになる厳しい組分けに加え、勝ち上がった場合には、準々決勝で開催国ウズベキスタンか、順当ならイランと世界の切符をかけて対戦することになる。


今回はJリーグの所属選手に陽性が出たが、この年代は一斉PCR検査を行っていない大学生選手もいる。普段どれだけ気をつけて生活していても、新型コロナウイルスに感染するリスクはある。


可能性を考えるとキリがないが、安全を確保しながら対応が後手に回らないようにするためには、招集が決まった時点で、合流前に検査を行う方法も有効になるかもしれない。


これが森山佳郎監督率いるU-16日本代表となると、定期的なPCR検査を行っていない選手ばかりになるので、代表合宿の最初に行われる検査で判明することもあるだろう。


9月以降、来年の東京五輪に向けた強化を行うU-23日本代表、カタールW杯のアジア二次予選を戦うA代表、なでしこジャパンなどの活動も入ってくると見られる。


日本政府や都道府県の自治体ですら未知の世界で戦う中、これをやれば100%万全ということはないが、サッカー界が日本のスポーツ競技に率先する形で、安全かつ効率的な手段をとりながら、競技面で結果を残すことで、社会に少しでも良い影響を与えて行くことに期待したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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