全員欧州組で挑む、カメルーン、コートジボワール戦。10ヶ月ぶりの代表戦で求められる、勝利と強化

COLUMN河治良幸の真・代表論 第66回

全員欧州組で挑む、カメルーン、コートジボワール戦。10ヶ月ぶりの代表戦で求められる、勝利と強化

By 河治良幸 ・ 2020.10.8

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日本代表は10月9日、13日に、10ヶ月ぶりとなる国際親善試合を行う。欧州の国はネーションズリーグがあるため、この時期に試合を組むことはできないが、アフリカの強豪国であるカメルーンとコートジボワールという、考えられる最高に近いマッチメークが実現した。


「本当に多くの方が環境作りに尽力してくださったことで、我々が活動できることを絶対に忘れては行けない。その方々や応援してくださる方々に、恩返しとなる活動、試合をしないといけない」


日本代表の森保一監督がそう語るのは、お世辞でも何でもないだろう。新型コロナウイルスの影響で、国際的なスポーツ競技の開催がままならない中、国際試合が実現したことは貴重だ。


だが当然のことながら、すべてが理想的に行くわけではない。日本政府のプロトコルでは、「帰国後、14日間の自主隔離」というルールが継続しており、国際Aマッチデーを越えて所属クラブの活動に影響することから、Jリーグでプレーする国内組を招集できなかった。森保監督によると、構想上は複数の選手がリストアップされているという。


さらに、こうした機会を得られたのはオランダが開催地として許諾してくれたからに他ならないが、入国制限のあるロシアから橋本拳人(ロストフ)、セルビアから浅野拓磨(パルチザン)の招集ができなかった。


ほかにも、長友佑都(マルセイユ)がコンディション不良、岡崎慎司(ウエスカ)が直前の怪我で辞退となり、大迫勇也(ブレーメン)は所属クラブの方針により、ドイツ帰国後5日の隔離が義務付けられていることから、来週末のリーグ戦に出場するため、カメルーン戦のみで帰国しなければいけない状況だ。


欧州組でメンバーを編成


それでも、欧州組だけで日本代表のほぼフルメンバーを組めるというのは、1つの成長を示すものだ。今回はオランダでプレーする菅原由勢(AZ)が初招集で、あとは昨年夏のコパ・アメリカで活躍した三好康児(アントワープ)が、いわゆる”フル代表”としては事実上の初招集となった。


その二人も含め、東京五輪世代が7人含まれている。これまでコパ・アメリカ、オール国内組で参戦したEAFF E-1と、意図的に東京五輪世代を多く呼んだケースも肩書きは”A代表”となるが、今回は基本的に森保監督がA代表の基準で選考した結果だ。


初招集の菅原に関しては「欧州組でチームを編成した中で、将来A代表に絡んでくるだろうという期待も込めて招集しています。彼に期待することは、貪欲に成長につながる吸収をしてもらい、その刺激を所属チームに持ち帰って成長してもらいたい」と説明しており、ここからの期待値も込められているようだ。


親善試合の意味


今回の欧州遠征はチーム強化にとどまらず、日本のスポーツ競技を率先する形で、代表チームの意義をサポーターのみならず、国民に示す使命を背負う部分が大きい。そのため勝利の意味合いは、これまでの親善試合よりはるかに重い。


ただ、間違ってはいけないのは、今回の代表活動が公式戦に向けた強化の一環であることだ。来月の国際Aマッチデーにも同じような活動ができるように、日本サッカー協会(JFA)が、反町康治技術委員長をはじめ、懸命に動いていることは伝えられているが、確定的とは言えない状況で、この限られた機会を最大限生かし、来年3月のW杯アジア二次予選につなげる必要がある。


森保監督の基本的なコンセプトは、1年前と大きく変わらないようだ。今回は基本的な戦い方を再確認する意味合いで3バックを”封印”し、4-2-3-1あるいは4-4-2のシステムの中で、様々な組み合わせをテストすることが想定される。


選手起用はどうなる?


変わっているのは、むしろ選手たちだ。右サイドハーフの常連である堂安律はPSVから期限付きで移籍したドイツ1部のビーレフェルトでインサイドハーフを担っており、仕掛けからのシュートやラストパスだけでなく、アクセントになるプレーで新境地を開拓している。


レアル・マドリーからレンタルされたマジョルカで多くの経験を積んだ久保建英も、ビジャレアルという新たな環境で、2列目の複数ポジションで起用されている段階だ。


左サイドハーフは原口元気(ハノーファー)を除くと本職の選手がおらず、橋本を呼べないボランチも柴崎岳(レガネス)、遠藤航(シュツットガルト)に続く選手が、センターバックも兼ねる中山雄太(ズヴォレ)なのか、板倉滉(フローニンゲン)なのか、不透明なところがある。


当初はボランチの候補でもあった菅原由勢が長友の辞退を受けて、左サイドバックの候補にもなってくるなど、蓋を開けてみないと読みきれない部分もある。


勝利と強化の両方が求められる


この状況をプラスに捉えるならば、今回の2試合は新たな可能性を広げるチャンスだということ。その成果や課題を森保監督がどう捉えるかで、今回は諸々の理由で招集外だった選手、やむなく辞退した選手たちを含めた、今後のメンバー構成に大きく関わってくるはずだ。


いかなる試合においても、勝利と強化の両方を求められるのは日本代表の宿命だ。今回はその意味合いが非常に強く、ハードルも高い。もちろんJFA、オランダ政府、オランダ協会などのプロトコルに従いながら、安全に活動を終えることが第一だが、この貴重な活動から、いかにポジティブなものを得て、次につなげることができるか。


観る側からすれば、久しぶりの代表戦となる。カメルーンとコートジボワールにもタレントがおり、彼らも日本と同じように、色々なものを乗り越えてオランダに集合している。その背景を感じ取りながら、久しぶりの代表戦を映像で思い切り楽しんでほしい。筆者も楽しんだ上で、見解や情報を抽出していきたいと思う。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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