日本代表のオランダ遠征総括。個々の成長を見せつけた選手たち

COLUMN河治良幸の真・代表論 第67回

日本代表のオランダ遠征総括。個々の成長を見せつけた選手たち

By 河治良幸 ・ 2020.10.22

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約1年ぶりに、男子のA代表が帰ってきた。サッカー日本代表は、2020年10月にオランダで活動を行なった。今回は、帰国後の14日間の自主待機や国際AマッチデーにもJリーグが組み込まれていることから、国内組を招集することができず、セルビアから浅野拓磨、ロシアから橋本拳人を入国規制の事情で招集できなかった。


それでもオール欧州組で構成されたメンバーが2試合を戦い、カメルーンと0-0、コートジボワールには、終盤に投入された植田直通のゴールで1-0と勝利。選手起用に関しても、一定の成果を得られた2試合だった。


オール欧州組な上に、上記の二人に加えて岡崎慎司が怪我、長友佑都がコンディション不良により辞退となったこともあり、2試合をトータルすると選手層の偏った編成になったことも確かだ。


例えばシステムを4-2-3-1で想定した場合、左サイドハーフのスペシャリストが原口元気しかおらず、コートジボワール戦では久保建英が同ポジションで先発したものの、あまり機能したとは言い難い。もちろんポジションだけの理由ではないかも知れないが、もったいなさが残った。


選択肢が広がった、中山雄太の起用法


その一方で、左サイドバックは意外な形で1つの成果を見ることができた。長友が不在となった左サイドバックは、カメルーン戦の前半に安西幸輝が出場し、3-4-2-1に変更した後半は原口元気が左ウィングバックを担い、終盤には初招集の菅原由勢がテストされた。


続くコートジボワール戦では、カメルーン戦でボランチだった中山雄太が4-2-3-1の左サイドバックに起用され、相手の中心選手であるペペを封じるなど守備面で奮闘。攻撃は縦の仕掛けこそうまく行かなかったものの、左利きを生かした配球で起点になった。


柏レイソルでは継続的に起用されたこともあるポジションながら、代表チームやオランダに渡ってからの起用法を考えると、発見に近いものがある。これまで森保一監督は公式戦に本職のサイドバックを4人招集してきたが、”ザックジャパン”や”ハリルジャパン”では、センターバックやボランチの選手がマルチロールとして兼任し、1枚が攻撃的なポジションに回ることも多かった。


中山に左サイドバック起用の目処が立ったことで、ボランチ、センターバック 、左サイドバックのマルチとして想定することができ、森保監督もそうしたメンバー構成にしていくことも考えられる。長友が順調に参加していたら、長友と安西で回していた可能性もある。もし今回の事情で森保監督がそのような起用を思い立ったとしたら、”怪我の功名”かも知れない。


改善が見られたコンビネーション


その森保監督が強みとしてあげるコンビネーションの部分は、カメルーン戦よりコートジボワール戦の方が明らかに良くなっており、1年のブランクを感じさせた一方で、代表選手の修正能力、短期間で合わせていく能力の高さにも驚かされた。


もちろんディテールの課題をあげたらキリがないが、普段はそれぞれのクラブで異なる戦術や特徴の違う選手と組んでいる選手たちが、短い期間で目線を揃えることは、決して簡単ではないだろう。


ましてや今回は新型コロナウイルスの感染対策として、選手間での個室の行き来が制限され、リラックスルームなども設けられていなかった中で、食事会場やグラウンドを活用しながら、できる限りコミュニケーションを取っていたようだ。ミーティングで森保監督やコーチングスタッフからコンセプトの指導や相手の分析は下りてくるが、細かい確認は選手間で行われるのは”森保ジャパン”の1つのカラーと言える。


カメルーン戦では4-2-3-1でスタートさせたところから、相手の中盤が立ち位置を可変させてくるスタイルに苦しみ、前からの守備がはまらず後手を踏んでしまった。ハーフタイム に森保監督からの提案があり、3-4-2-1に変更することで相手のボランチが最終ラインに落ちても、前からハメて行ける形を取ることで乗り切ったが、アジアカップ決勝のカタール戦に似た課題が残された。


そこから3日間で修正点を積極的に話し合い、相手のビルドアップに応じてサイドハーフの選手がどう絞ってプレッシャーをかけるか、ボランチがどう押し上げるか、縦の関係と横並びの関係をどう使い分けるかなど、かなり細かいところまで話し合われたようだ。


そうした細かい部分まで、ある種のトップダウンで選手に伝えられるチームは代表やクラブにも多い。森保監督は、原則を与えた先の判断を選手にゆだねる部分が多い監督だ。特にA代表の選手たちには、そうした割合を大きくしているように見て取れる。


遠藤航の成長


収穫だったのが、カメルーン戦に出ていなかった、あるいは途中出場だった選手たちがうまく試合に入れていたことだ。鈴木武蔵、室屋成、伊東純也などがそうだが、特にボランチの遠藤航は出色の出来で、柴崎岳とも1年ぶりのコンビと思わせない連携を見せながら、1対1でコートジボワールの猛者を相手にほぼ負けていなかった。


これまで”森保ジャパン”の中盤には、柴崎が絶対的な存在として君臨していたが、遠藤航の台頭により、不参加だった橋本拳人、さらにカメルーン戦に先発した中山雄太を含め、競争が活性化されそうだ。国内組にもタレントが多いポジションであり、来年3月に再開されるW杯アジア予選、さらに最終予選に向けた1つの”ホットゾーン”になっていくことは間違いない。


センターバックはコートジボワール戦で植田が決勝ゴールを決めて存在をアピールしたが、吉田麻也と冨安健洋のコンビが鉄板で、そこに植田、さらに今回は出番がなかった板倉滉が競争に入っていけるかどうか。これまで継続的に招集されていた畠中槙之輔をはじめとした国内組の可能性も気になるが、吉田と冨安のコンビが健在であれば、そのまま本大会まで主軸になっていくかも知れない。


4バックと3バックの併用も成功


左サイドバックは前述の通りだが、右サイドバックは酒井宏樹が盤石、ドイツ2部のハノーファーに移籍して最初の代表となった室屋成も確かな成長を示しており、当面この二人が競争していくはず。ただ、3バックを採用した場合に酒井宏樹が右で起用できる目処が立ったので、その場合はウィングバックが想定される室屋との併用もプランに入ってくるかも知れない。


2列目は右が堂安律と伊東純也がおり、久保も選択肢であるものの、左は原口に続く選手がおらず、左利きの三好康児もテストされなかったので、国内外のタレントに割って入るチャンスがある。


トップ下は南野拓実か鎌田大地、2シャドーは二人に加えて久保や堂安も有力になる。さらには鈴木武蔵の起用も考えられるが、大迫勇也を欠いたコートジボワール戦で1トップでの成長も見せたので、攻撃のバリエーションは広がった。


今回の活動で大きかったのが3バックの採用であり、コートジボワール戦は勝つための手段として4バックを続けたが、途中で3バックに変更するプランもあったようだ。今後どちらがメインになっていくかはさておき、4バックと3バックの併用という大枠が見えたことで、今後のメンバー選考にも影響してくるだろう。


11月にメキシコ、パナマとの試合が決定


4-2-3-1であれば、右サイドハーフに括られる伊東純也と堂安律が、3-4-2-1なら伊東が右ウィングバック、堂安が2シャドーとなる。さらに酒井宏樹が3バックに入ることで、同じメンバーで可変することもできる。


そうしたことも踏まえて、W杯登録メンバー23人のバランスや未招集のタレントから誰をテストするかなど、ラージファミリーの構想にも影響しそうだ。さらには、3-4-2-1を多く経験している東京五輪世代がA代表に割って入るチャンスも広がる。今回は7人の選手が東京五輪世代だったが、来年の本大会までにもっと増えていく可能性もある。


11月にはオーストリアでメキシコ、パナマとの対戦が決まっている。オランダ遠征での2試合を受けて、森保監督がどういうメンバーを構成するかも注目だが、年内には五輪代表の合宿も調整が進んでいるようで、U-19日本代表との合同練習も選択肢に入ってきそうだ。そうした中で、それぞれ目指す大会はもちろん、A代表につながっていく選手の台頭にも期待したい。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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