強豪国に突きつけられた課題。日本代表がメキシコ戦で学んだもの

COLUMN河治良幸の真・代表論 第69回

強豪国に突きつけられた課題。日本代表がメキシコ戦で学んだもの

By 河治良幸 ・ 2020.11.25

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日本代表のオーストリア遠征はパナマに1-0で勝利、メキシコに0-2で敗戦。終わってみたら、現在の実力がそのまま結果に出たような形になった。もちろん親善試合であり、日本は大迫勇也や堂安律を欠いた一方で、メキシコはエクトル・エレーラ(アトレティコ・マドリー)やジョナサン・ドス・サントス(ロサンゼルス・ギャラクシー)がメンバーには選ばれながら、欠場となった。


マルティノ監督は「最も大事なのは選手を無事にクラブに返すこと」と語っていたので、メンバー選びにかなり慎重だったことが分かる。メキシコは3ー2で勝利した韓国戦から、中2日で6人のスタメンが入れ替わった。


守備では高い位置にポジションを取ってきたメキシコに対して、4-2-3-1の日本はボランチの柴崎岳と遠藤航が、センターバックの吉田麻也、冨安健洋とバランスを取りながら相手を外し、プレッシャーがはまりかければ、GKのシュミット・ダニエルを使って回避し、逆に空いたスペースを活用する。


そうする間にサイドバックの酒井宏樹、中山雄太を高い位置に押し上げ、トップ下の鎌田大地がワイドに流れながらフリーで受けて、右サイドハーフの伊東純也や左の原口元気を生かしていた。


前半15分のビッグチャンスは原口のラストパスから、鈴木武蔵がGKオチョアを破れば先制点というシーンだったが、オチョアが左に体を倒しながらも中央に残した右足で弾いて止めた。「もう少し浮かして打つのがベストだったなと。結果論ですけど、思います」と鈴木は振り返る。


「シュートのところはいつも考えて打つようにしてますし、あそこで相手が一枚、今日は上手だったなと思います。僕自身もまだまだ未熟っていうか、シュートコースが少し甘かったので、もっともっとああいうゴールをしっかり決め切れるようにやっていきたい」(鈴木)


前半の立ち上がりにミドルシュートを決められなかった原口も「チームとして素晴らしい入りをして、いい形でチャンスを作れていたので、最後のクオリティーの部分で僕らが、特に前の選手が仕留めきれなかった」と個人のクオリティ不足に言及していた。


したたかだったメキシコのゲーム運び


序盤のチャンスで1つでも決めていれば、優位に試合を運べたはずだが、GKオチョアも含めて、メキシコの選手たちが自分たちのペースではない時間帯にも落ち着いて、やるべきことをやっていたことは見逃せない。


そこに関しては鈴木も「悪い時間帯でもメキシコは耐えて、後半に人が変わって流れが変わった」と分析する。


「そういうゲーム運び、我慢するところだったり、さっきのヒメネス選手じゃないですけど、決め切れるところだったり、ホントに僕たちが目指す1個レベル高い、自分たちがそういうチームになっていきたい」(鈴木)


日本は良い時間帯を作り出したが、そこからゴールのために越えるべきハードルが高かった。単純に日本の選手たちがミスで外してしまうなどではなく、最後のところで駆け引きも含めた質で上回らないと、なかなか破らせてくれないのがメキシコのレベルということだろう。


前半から遠藤とともに攻守をコントロールしていた柴崎は「コンビネーションという部分ではある程度、いい部分もあった」と手応えを感じながらも、そうした中で決めきっていくことの難しさも認めている。


「そのへんは個のアイデア、能力と言ってしまえばそれまでなので。結局のところは最後の最後で、どれだけゴール前まで持っていって、いい状態で受けても、最後の個人の部分でいい判断だったり、精度だったりが求められる。特に前線の選手は。そのへんは、メキシコは最後の最後でシュートブロックとか、寄せの速さとか、選手たちが体感する意味では、今後に生かせる材料になってくるんじゃないかなと思います」(柴崎)


ハーフタイムに形勢逆転


メキシコの前半は、マルティノ監督就任以降の約2年間で、最悪の内容だったという。日本はそうした流れを作りながら、アドバンテージを取れなかったことは、後半にツケとなって返ってきた。


メキシコは本来の主力であるアヤックス所属のエドソン・アルバレスを中盤に加えて、これまでやっていないという2ボランチにして、日本の中盤からのボールの出どころを封じにきた。特に前半の起点になっていた鎌田に対するケアは厳しく「4番が僕のことをずっと気にして見ていた」と振り返るほどだった。


攻撃でも、立ち位置を変えて日本の守備を外してきた。メキシコは4-3-3をベースに、中盤は流動的にパスを繋げるので、スタートポジションを変えなくても相手の守備をいなしたり、うまく繋ぐことができるチームだ。それがボランチを増やして明確な変化を施すというのは、それだけ前半の日本が機能していた証だろう。


しかし、こうした具体的な対策により、ハーフタイムなどに入ると形勢を逆転されてしまうのも、日本代表の長年の課題と言える。日本は後半に入るとリズムが悪くなり、メキシコのペースになる中で、森保一監督は柴崎と鈴木を下げて、橋本拳人と南野拓実を投入するが、悪い流れに飲み込まれてしまった。


霧も濃くなっていく中、日本の右サイドを崩されると、ワイドに絡んだエースのヒメネスに飛び込まれ、ピネダとの連動でゴールを破られた。結果的にヒメネスを止めきれなかった吉田は、ゴール直後にヒメネスが交代したことにも触れて「おそらくあとワンプレーやったら、ヒメネスは交代していたんじゃないか」と悔やむ一方で、先制点を取ってからのメキシコのゲームマネジメントがハイレベルだったことを強調した。


「韓国もまったく同じ形で複数得点されていたので、頭の中にイメージは残っていました。点を取られて前がかりになったところで、低いところで奪われてカウンターを食らってしまった」(吉田)


後半のメキシコが本当のレベル


霧がさらに濃くなり、オレンジ色のボールに変更された中で、この試合を決定付けるメキシコの2点目は、先制点の5分後にもたらされた。


自陣のボール奪取からマルティンの縦パスに反応したロサーノが中央を破り、あっさりとGKシュミットとの1対1に持ち込むと、鮮やかにゴールネットを揺らしたのだ。日本は久保建英や浅野拓磨の投入も虚しく、そのまま押しきられて試合終了の笛を聞いた。


キャプテンの吉田は細かいミスが多かったことを前置きしながら「後半が本当のメキシコのレベルだと思います」と語り、後半におけるメキシコの強度、そして先制点を奪った後の試合の進め方など、日本との差を認識していた。


親善試合という条件は同じであり、チーム作りの過程ではあっても、日本は現時点の本番仕様に近かった。対するメキシコは日程の条件が厳しく「最大の目的は選手を無事に所属クラブに帰すこと」とマルティノ監督が強調するように、複数の主力を欠場させたのもそのためだろう。公式戦で対戦したら、より差は明確になってしまうかもしれない。


パナマ戦では、昨年末のEAFF E-1選手権を除き、森保監督になって初めて3バックでフルに戦い、オプションになりうることは確認できた。メキシコ戦ではこれまで通りの4バックで、大迫勇也や堂安律を欠く中で現状のフルメンバーと呼べる布陣をぶつけて、チャンスはあったものの完敗に終わった。森保監督は語る。


「10月、11月の活動で、選手たちにフィードバックする部分のコミュニケーションを取っていきたい。可能であれば私やコーチングスタッフがヨーロッパに渡って、選手たちと直接コミュニケーションをとって、個人の成果と課題、チームの成果と課題で、これからどうしてほしいという話ができればと思っています。それができない場合もウェブ上でミーティングをしたり、実際どうするかはまだ決めていないですが、考えて今後の活動に活かしていきたい」


メキシコ戦の経験を財産に


来年3月に再開するカタールW杯アジア二次予選、さらに夏の東京五輪を経て、W杯最終予選に入っていく流れで、まずはアジアを突破し、2022年のカタールW杯に出場することが第一の目標になるが、大目標は本大会で決勝トーナメントに進出し、ベスト16の壁を破ること。


そこから先は未知の世界になるが、16から8に行く難しさは、7大会連続でその壁を破れていないメキシコが示している。特にメキシコ戦で選手たちが肌で感じたものは、本大会までつなげて行くべき財産だ。


今回はコロナ情勢の中、欧州の地で10月にアフリカ、11月に中米の2カ国と試合を行い、貴重な経験を積み重ねることができた。しかし、ここからのレベルアップを考えた場合に最も伸ばせるのは、選手が所属クラブで試合に出続けること。ステップアップも含めて、個々のレベルアップが大事になる。


それは今回のメンバーに限らない。森保監督はスタッフと手分けして、国内外のできる限りの選手をチェックしているという。そこでアピールすることで、A代表や東京五輪チームの競争は活性化していく。


プレーをレベルアップさせるだけでなく、試合の流れの中でいかに判断するか、周りとコミュニケーションを取って解決していくか。そうした部分を磨ことも、日本代表の強化につながっていく。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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