ショッキングなU-17W杯とU-20W杯の中止。それでも目指すべきところは変わらない

COLUMN河治良幸の真・代表論 第71回

ショッキングなU-17W杯とU-20W杯の中止。それでも目指すべきところは変わらない

By 河治良幸 ・ 2020.12.26

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U-19日本代表に、ショッキングなニュースが飛び込んできた。新型コロナウイルスの影響により、来年行われる予定だったU-20W杯の中止が、FIFAから発表されたのだ(U-17W杯も中止が決定)。


影山雅永監督率いる”01ジャパン”は、新型コロナウイルスの影響下で、7月に代表活動の第一号として再開してから、月に1度ほどのペースで強化してきた。来年3月に予定されているAFC U-19アジア選手権に向けて、ベースとなるメンバーが固まってきており、今回は実戦を想定した中1日の3試合。さらに活動拠点の『夢フィールド』で完結せず、ホテルと会場をバスで移動するなど、本番を想定したシミュレーションを行っている最中に、今回の発表を耳にすることとなった。


”寝耳に大洪水”と表現する、JFAの反町康治技術委員長は「真剣に勝負できる大会が2つ、来年あるのを楽しみにしていた。世界のサッカーにも、日本のサッカーにもよくない。全体を見ても悲しい、悔しいのは間違いない」と語る。


AFCの大会はある?


二つの世代で大きな目標を失った中で、どういった形で強化して行くべきか。それは国内外のカレンダーや状況を見ながら探って行くしかないが、U-17W杯とU-20W杯の予選を兼ねたアジア選手権に関しては、AFC(アジアサッカー連盟)から何の通達もなく、今のところはあるものとして準備して行く必要がある。


つまり、どちらの代表チームも今回の発表をもって即解散ということにはならない。このことは、長く代表を取材している筆者は非常に残酷な話だと思ったが、U-19の選手たちの反応を見て、異なる感覚を持つこととなった。


大会中止の発表があった12月25日、U-19日本代表は中1日で組まれていた3試合のうちの2試合目を行った。相手は関東大学選抜で、45分×2本の早い時間に失点する苦しい展開となったが、横浜FCからベルギー2部のロンメルに移籍する斉藤光毅の2ゴールで逆転。そこから同点とされるも、終盤に4-4-2から3-4-2-1にシフトすると、成瀬竣平(名古屋グランパス)が右サイドから鋭い攻め上がりでスーパーミドルを突き刺し、3-2の逆転勝利をおさめた。


「選手の気持ちが切れたり、モチベーションを失った選手がいたらどうしようとスタッフで話していた。昼に事情を説明して昼食をとり、試合前のミーティングをやって会場に移動しましたが、その時にまだ消化しきれていなくて、混乱している選手もいるんじゃないかと思ったけど、まだまだ俺たちやりたいし、やれるよって顔をしてきた。不安がっている選手がいたらケガのことも怖いし、個別に話を聞こうかと思っていたが、全然必要なかった」


影山監督は試合前の状況をそう振り返った。もちろん、選手たちもショックだったことは間違いないだろう。朝食時にスタッフから説明される前に、インターネットで情報を得ていた選手も少なくない様子で、スタッフの顔色をうかがう向きもあったという。それでも代表が、彼らにとって特別な場所であることに変わりはない。


影山監督は言う。


「改めてすごいなと思ったのと同時に、代表活動って、彼らにとって誇らしくて、やりたくてたまらない活動なんだと。エンブレムがあって、同じ世代で、能力の高い選手が集まっていて、誰が残るんだとしのぎ合う。そういう環境でトレーニングと試合を行うことが大好きで、責任感が大好きなんだと。日本代表活動の大事さを、改めて選手たちから教えてもらった」


目指すところはもっと上にある


このチームのリーダー的な存在である松岡大起は「W杯に行きたかった気持ちは正直ある」と前置きしながらも「自分たちがやるべきことはある。今日の試合でも、みんな試合に勝つことだけを考えてプレーした」と振り返る。


「自分たちが目指しているところは、もっと上にある。決まったことは変えられないので、一人ひとりがもっともっと成長して、上の代表にたくさんの選手が食い込んでいきたい」(松岡)


彼らの胸中にあるのは、目の前にある1つ1つの練習と試合、そしてその先にあるA代表や国際舞台で活躍できる選手に成長するという目標だ。そこまでのプロセスとしてU-17、U-20それぞれのW杯がある。同世代のトップレベルを経験することができ、自分の価値を高める舞台がなくなったとはいえ、落ち込んでいては大きな目標にたどり着くことはできない。


昨年のU-20W杯を斉藤光毅とともに”飛び級”で経験し、U-17W杯では中心的な存在だった西川潤は「17、20と経験させてもらって、素晴らしい大会だと身にしみて感じていたので、あの大会に出たかったなというのが率直な気持ち」と認めながらも「決まってしまったものは仕方ないので、A代表や海外で活躍する目標はブラさずに、今までが無駄じゃなかったことを今後のプレーにつなげたい」と語る。


「世代の中心として、海外で活躍していく選手になりたいのはあります。その中でU-20W杯は色んな方が見に来る大会。アピールの場が無くなったのは悔しいけど、自チームの活動もありますし、そういうところでしっかりやっていきたい」(西川)


継続的な活動が必要


代表活動の最中にショッキングな発表を聞いた”01ジャパン”のメンバーは、残念な気持ちを共有しながらも、チームとして試合を戦うことで、自分たちなりに気持ちを整理して目の前の試合に臨み、前向きな気持ちになれた部分もあるだろう。


その意味ではU-17W杯を目指していたU-16の選手の方が、ショックを消化するのは難しいかもしれない。しかし、結局は与えられた環境で向上心を持って努力し、彼らの場合は次のU-20W杯を目指すことが求められる。


JFAはこれまでも”間の世代”と呼ばれる、U-17、U-20の大会に合わない世代の強化も継続的に行っており、『夢フィールド』という世代を超えて共有できる場所も誕生した。A代表と五輪代表を兼任する森保一監督も、年齢に関係なくどんどん上を目指して行くようにと、活動のたびにメッセージを発信し続けている。


影山監督はこのような事態になってこそ、日本の代表活動が問われることを強調する。


「私もアジアで仕事をしていましたけど、ほとんどの国は大会に合わせてメンバーを集めて、参加して終わり。長期的なプランニングをしている国は少ない。JFAが目指すべきは、世界に通じる選手の手助けをして行くこと。ただ、日本は極東の島国なので、欧州のような試合はなかなかできない。そこはJFAが継続して活動していくことで、国際的な場での強化を求めていければ。今回のことでダメになったと言わせないような、見せ所だと思います」


(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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