1分1敗、”窮地のなでしこ”は、ワールドクラスの守護神からゴールを奪えるか

COLUMN河治良幸の真・代表論 第89回

1分1敗、”窮地のなでしこ”は、ワールドクラスの守護神からゴールを奪えるか

By 河治良幸 ・ 2021.7.26

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東京五輪グループステージ2試合を終えて、1分1敗と苦しい状況にある”なでしこジャパン”だが、グループ突破の可能性は十分に残されている。女子は12カ国を3グループに分けているため、準々決勝には各組の上位2カ国に加えて、3位の成績上位2カ国も進むことができる。


日本は3試合目でチリに勝利すれば、カナダとイギリスの結果次第でE組の2位になる可能性もある。チリに負ければ終わりだが、引き分けた場合、B組で勝ち点1のザンビアがブラジルに、中国がオランダに負ければ勝ち点差で上回り、引き分けでも得失点差で通過できる。とはいえ開催国として、チリにしっかりと勝って文句なしの突破を決めたい。


FIFAランキング37位のチリはE組の中で最も力が落ちるが、0-2で敗れたイギリス戦、1-2で敗れたカナダ戦ともに健闘を見せており、簡単に勝てる相手ではない。地力で考えるならば、6月の親善試合で5-1と勝利したメキシコより少し落ちるぐらいだが、五輪の本番ということで、日本をリスペクトしてくる分、やりにくいだろう。


チリのGKは要警戒


最も警戒しなければいけないのは、絶対的な守護神エンドラーだ。ドイツ人の父を持つエンドラーは、2年前に行われた女子W杯でアメリカに0-3で敗れながらも、プレイヤーオブザマッチに選ばれたタレントで、世界最高峰のGKとの評価もある。


187cmの長身と恵まれたバネ、的確な判断力とどれをとっても“超女子サッカー級”で、ミドルレンジのシュートを決めるのはかなり難しい。


最終ラインの経験豊富なゲレーロ、スペインのラージョ・バジェカーノに在籍するサエスは人に強く、守護神エンドラーの前で粘り強くブロックを作り、デュエルに強さを発揮する。


チリは4バックも5バックもできるので、日本を相手にどちらで来るかは不明だが、センターバックを突破し、至近距離でシュートを狙わなければ、エンドラーの牙城を破ることは難しいだろう。


前線の厄介なタレント


攻撃面で注意したいのが、中盤のカレン・アラヤ。カナダ戦ではPKでゴールを記録しているが、カウンターを中心とした攻撃からチャンスを演出する。前線はスウェーデンの強豪ユールゴーデンに所属するサモラと変幻自在の仕掛けを誇るウルティアが積極的にゴールを狙ってくる。


チリの攻撃はカウンターが主体と言っても、縦のロングボールをアバウトに蹴ってくることは少なく、多くの場合は10番のアエドやアヤラを経由してくるので、タイトに潰しに行きたい。


岩渕はジョーカー起用か


日本はここまで、エース岩渕真奈のあげた1ゴールのみ。イギリス戦で終盤に出場した岩渕がスタメンに復帰すれば頼りになるが、チームを活性化する意味でも、菅澤優衣香や田中美南のゴールが期待される。


岩渕は恐らくジョーカーとしての起用になるが、個人の打開力がある遠藤純のゴールもチームに勢いをもたらすはず。


イギリス戦では長谷川唯が田中と縦の2トップを組む形になったが、押し込む時間帯が増えるはずのチリ戦では、2トップに戻す可能性が高い。もしチリが5バックで守備を固める場合、2トップに加えて2列目の選手がいかに飛び出していけるかもポイントになる。


左右の攻撃がカギ


おそらく左サイドに戻る長谷川は引き続き攻撃のキーマンだが、右サイドからの攻撃参加も重要だ。これまで同様、スタメンが塩越柚歩になるにしても、2試合続けて途中出場の籾木結花がスタートから起用されるにしても、彼女たちが積極的にゴール前に絡んで行けるかが、ゴールに大きく影響するだろう。


チリ戦はカナダ戦やイギリス戦に比べると、サイドバックの攻撃参加がしやすくなりそうだ。右サイドバックは清水梨紗が担うと予想するが、左はカナダ戦でスタメンだった北村菜々美が、縦の推進力を期待されて起用されるかもしれない。


センターバックはキャプテンの熊谷紗希と南萌華のコンビを崩しにくいが、ロングキックに定評があり、中盤まで持ち上がるプレーもできる宝田沙織が登場すれば、攻撃面のプラス要素は大きい。


理想としては早い時間帯にゴールを決めて、ポゼッションを使いながらゲームを進めて行きたい。なかなかチリのゴールを割れない展開やリードを許してしまった場合には、スクランブルな采配も必要になる。


高倉麻子監督は4-3-3もオプションとして準備しており、終盤に点が必要な状況では、FWを前線に揃えることも必要になるかもしれない。



勝って準々決勝に進みたい


F組の2試合目でザンビアと中国が引き分けたことにより、日本はチリと引き分けて、勝ち点2でグループステージを終えても、F組の結果次第で準々決勝に進出できる状況だ。しかしその場合、準々決勝の相手はアメリカを3−0で破り、絶好調のスウェーデンになると予想される。


強敵との対戦を避ける意味もあるが、観ている人たちに「やっぱり”なでしこジャパン”はすごい」と思ってもらえる試合を見せていかなければ、世間の期待はトーンダウンしてしまうだろう。


”なでしこジャパン”は、自分たちのキャリアや代表チームの栄光だけでなく、女子サッカーの未来を背負っている部分がある。


惜しくも選ばれなかった選手たちはもちろん、秋に始まるWEリーグに向けて頑張っている選手たちの思いも背負う彼女たちが、誰が観ても伝わるようなプレーを発揮し、準々決勝に向けて、勢いをもたらす試合を見せてほしい。(文・河治良幸)



東京オリンピック 女子サッカーグループE 第3節

チリ女子代表 vs なでしこジャパン(日本女子代表)

7/27(火) 20:00キックオフ

NHK総合、NHK BS4Kにて19:30より生中継予定


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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