京五輪準々決勝、なでしこは優勝候補スウェーデンとどう戦う?

COLUMN河治良幸の真・代表論 第91回

京五輪準々決勝、なでしこは優勝候補スウェーデンとどう戦う?

By 河治良幸 ・ 2021.7.29

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東京五輪サッカー女子準々決勝で、”なでしこジャパン”はスウェーデンと対戦する。世界一となった2011年のW杯では準決勝で3-1と勝利した相手だが、日本が出場を逃したリオ五輪で銀メダル。フランスで行われた2年前の女子W 杯では3位の強国だ。


今大会もメダル候補に挙げられてはいたが、W杯王者のアメリカを3-0で破ったことで評価はさらに上昇。グループリーグではオーストラリア、ニュージーランドにも勝利し、唯一の3連勝で勝ち上がった。


金メダルの最有力と見られるスウェーデン。アメリカ戦から示しているのは、堅実なディフェンスだ。4-2-3-1をベースに、ソリッドに距離を詰めてモーガン、ヒース、プレスというアメリカの強力3トップを封じた。


スウェーデンはセンターバックのビョルンとイレステットに加えて、右サイドバックのグラス、左サイドバックのアンデションも人に強く、中央のディフェンスをサポートする能力に優れている。


さらに左右のアタッカーであるヤコブションとロルフォは大型で守備の献身性が高く、アメリカの生命線であるオハラとダンによる攻め上がりを限定していた。


縦に速いスウェーデン


スウェーデンは守備から入るからといって、守備的なチームではない。女子のチームとしては極めて縦に速く、イングランドのように中盤でボールを動かすよりは、シンプルに正確なパスでボールを運び、前線の強力なアタッカーを生かしていく。


攻撃にアクセントをつけるのが、トップ下のアスラニ。スペインのレアル・マドリーで輝きを放つ32歳のチャンスメイカーだ。


一度高い位置に起点ができれば、アスラニ、ブラックステニウス、ヤコブション、ロルフォの4人で攻め切ることができる。


アメリカ戦はヤコブションからブラックステニウス、オーストラリア戦はヤコブションのラストパスからロルフォが先制ゴールを決めている。


3試合目のニュージーランド戦はターンオーバーを用いて、前の4枚ともスタメンを変更したが、チャンスをもらったFWのアンヴェガールドとヤノユが揃ってゴールを決め、選手層の厚さを見せつけた。



スウェーデンのレジェンド


気鋭のアタッカー陣を力強くサポートするのが、セゲルとアンイエルダールだ。36歳のセゲルは、200キャップを超える女子サッカー界のレジェンドで、抜群のゲームコントロールを発揮する。相棒のアンイエルダールはハードな守備と鋭い飛び出しなど、攻守両面に強度をもたらす選手だ。


日本は三浦成美と中島依美のボランチコンビが予想されるが、中盤の強度でスウェーデンに持っていかれると、一気に後手に回ってしまう危険性が高い。


岩渕真奈などの前線がプレッシャーをかけることも大事だが、セゲルとアンイエルダール、さらにトップ下のアスラニを加えた三角形のところで少しでも余裕を与えてしまうと、一発でハイスケールなウィングのロルフォや10番を背負うヤコブションに前を向いてボールを持たれてしまう。


だからといって自陣で守備を固めると、ロルフォなどの大型FWに高さやパワーを発揮させてしまう。日本は高い位置からのプレスを意識しながら、できるだけバックラインがペナルティエリアに吸収されないように踏みとどまりたい。


そしてセカンドボールを効果的なサイドアタックにつなげて行くことが、勝機をつかむためのポイントと考えられる。


セットプレーは要注意


流れの中でスウェーデンの攻撃を止められたとしても、世界最高レベルのセットプレーが脅威となる。170cmオーバーの選手がフィールドの大半を占める上に、FWロルフォとセンターバックのイレステットが178cm。ブラックステニウス、ヤコブション、ビョルンが174cmで、ボランチのセゲルも173cmを誇る。メインのキッカーを担うのはアスラニだ。


日本はセンターバックの熊谷紗希が173cm、南萌華が172cm、宝田沙織が170cmで、FW菅澤優衣香が169cm。次にフィールドで高さのある選手は166cmの塩越柚歩で、160cmの宮川麻都や清水梨紗がゴール前の守備に参加しないといけない構図だ。


セットプレーで厳しくなるのは日本の宿命であり、対策はしてきているはずだが、スウェーデンの高さはカナダやイギリスをも上回る。できるだけコーナーキックや深い位置でフリーキックを与える場面は減らしたい。


ニューヒロインの誕生は?


スウェーデンに対し、日本がパスワークで圧倒する展開は考えにくいが、強みであるクイックネスや合間を突いてゴールに迫るチャンスはあるはず。


決勝トーナメントなので、リードを奪えば実質アウェーであるスウェーデンに少なからず焦りも出てくるだろう。


ただし、スウェーデンには180cmのハーティグというジョーカーがいる。ここまで2得点を記録している規格外のFWはある意味、日本には主力のアタッカー陣より脅威だ。


総力戦になる決勝トーナメントは、延長戦とPK戦もある。スウェーデンの強度に屈することなく試合を進め、エースの岩渕を筆頭に勝機を見出したい。


さらにはチリ戦でフレッシュな存在感を見せた木下桃香。日本ではおそらく唯一、個人でスウェーデンのディフェンスを打開できる能力を秘めた遠藤純など、ラッキーガールどころか救世主的なスーパーヒロインが出てくることを期待したい。(文・河治良幸)


東京オリンピック 女子サッカー準々決勝

スウェーデン女子代表 vs なでしこジャパン(日本女子代表)

7/30(金) 19:00キックオフ

NHK Eテレにて18:00より生中継予定

写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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