オマーンに敗れた教訓と中国戦の勝利。日本代表は最終予選のスタンダードを思い出したにすぎない

COLUMN河治良幸の真・代表論 第95回

オマーンに敗れた教訓と中国戦の勝利。日本代表は最終予選のスタンダードを思い出したにすぎない

By 河治良幸 ・ 2021.9.11

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W杯アジア最終予選が開幕した。日本代表は2試合を終えて1勝1敗。ファン・サポーターの期待を大きく裏切ったホームのオマーン戦からカタールに移動し、中国に1-0で勝ちきったことは評価したい。


しかし、最終予選の強力なライバル・オーストラリア、サウジアラビアが揃って2連勝。勝ち点6を獲得している事実を重く受け止めて、今後の戦いに臨む必要がある。


「個人的にも試されていると思うし、チームとしても踏ん張りどころで真価が問われていると思っています。いい方向にチームを導きたいと思っていますし、もう一度全員が、これが最終予選で、負ければ大変なことになることを理解して、試合に挑まなければいけない」


中国戦を前に、吉田麻也キャプテンはこう語った。0-1で敗れたオマーン戦はフィジカル面、チームとしての準備時間などメンタル面を置いても、言い訳材料をあげたらキリがないほど、パフォーマンスを下げる要因が揃っていた。


しかしながら、日本サッカーの未来をかけた戦い、それに日本代表として挑んでいく心構えは、確かに不足していた様にも思う。


伊東の個人技が冴える


中国戦はコンディション面だけでなく、高い位置からボールを奪いに行く、奪ったらまずゴールを目指すという基本中の基本のところで、しっかりと試合に向き合えていた。


慣れない5-4-1で守備的に入った中国側の問題を差し引いても、前半の日本には攻守両面での迫力があった。


そうした中、久保建英と大迫勇也のシュートがポストを直撃するなど、良い流れは作れていたが、前半は0-0で終了。このままでは嫌な雰囲気が漂いそうなところで、伊東純也が右サイドを切り裂き、高速クロスに大迫が合わせてゴールネットを揺らした。


伊東はアシストのシーンについて「あそこで受けたときに、いつもはカバーがいたんですけど、シンプルに1対1だったので、スピードに乗って縦に仕掛けてクロスというイメージで、それがうまく行きました」と振り返る。


このゴールにより、日本がリードして前半を終えることができたが、中国もおとなしく終わるわけがなく、ラインを上げて、前線に攻撃人数をかけてきた。


しかも左サイドでハードワークしていた古橋亨梧が負傷交代。原口元気が投入されたが、時差の影響を受けやすい東から西の長距離移動をしている日本も前半の勢いが無くなり、中国ペースに傾いた。


ベテランの存在感


ボランチの柴崎は、次のように振り返る。


「テンポが早すぎて起こりうる、カウンターの応酬は避けたかったので、自分にボールが入ったところで落ち着いて、展開を戻そうと思ってました。ボールを保持する時間を少しでも長くできれば、攻撃を食らうこともないので。後半は特に、ボールを単純に失わないように心掛けました」


日本は中国のロングボールで危険なシーンを迎えたが、中盤から後ろでの不用意なボールロストはほとんどなく、時間を進めることができたのは、経験ある選手たちの判断が反映されていたからだろう。


中国の李鉄監督は途中から帰化選手のアラン、アロイジオを投入して、攻勢をかけてきたが、中盤から後ろのリスク管理がしっかりしていたので、後半の立ち上がりより危なくはなかった。


そうした流れの中で、攻め残る大迫や久保。さらに伊東との交代で入った鎌田大地のところで追加点を取り切れば理想的だったが、最終予選の特殊な難しさを考えても、リスクを冒さず時間を進めていくことは重要だった。


その意味で、前線の選手たちに仕掛けるところ、キープするところのメリハリはもう少し欲しかったが、こういう時こそ吉田や柴崎の存在感が際立つ部分もあり、彼らの目立たない好プレーが安全なクローズに繋がった。


GK権田のファインプレー


そしてもう一人、評価したいのがGKの権田修一だ。ビッグセーブを強いられるシーンこそ無かったが、際どいタイミングのカバーリングやクロスのキャッチングなど、目立たないが大事な仕事をやり抜いた。


なかでも、終了間際にゴールラインギリギリでホールドしたシーンは、もしコーナーキックになっていたら、ラストワンプレーで同点ゴールが生まれていてもおかしくなかった。まさに”ドーハの悲劇”が繰り返されかねない状況を未然に防いだビッグプレーである。


10月の2試合は序盤の大一番


10月にはアウェーでサウジアラビアと、ホームでオーストラリアとの試合が待っている。

柴崎は「予選のひとつのターニングポイントになるかなと。ここで、勝つか負けるか引き分けるか。結果によって、今後が大きく変わってくる」と展望する。


ここまで2試合の戦いを観ても、両国とも簡単に勝ち点を落とすとは思えない。後塵を拝する日本が上回るには、直接対決で叩くしかないだろう。


日本は中国戦で、ようやく最終予選のスタンダードを思い出したにすぎない。選手たちはクラブに戻り、1ヶ月後に再集合となるが、コンディションやチームとしての連携が中国戦のまま維持されている訳ではないだろう。


一部のメンバーが変更される可能性もある中で、フレッシュな選手の勢いはプラスだが、この2試合を経験した選手たちに比べれば、厳しさという部分で温度差があってもおかしくない。その差を埋めていくのは、経験豊富な選手たちの役割になるだろう。(文・河治良幸)

写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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