アジアカップに臨むなでしこジャパン。3連覇とW杯の切符を掴み取る戦いが始まる

COLUMN河治良幸の真・代表論 第103回

アジアカップに臨むなでしこジャパン。3連覇とW杯の切符を掴み取る戦いが始まる

By 河治良幸 ・ 2022.1.21

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20日、”なでしこジャパン”のアジアカップが、ミャンマー戦でスタートする。3連覇がかかる大会としても注目されるが、W杯予選も兼ねるこの大会で、まずは世界行きの切符を勝ち取ることが、最低限の結果として求められる。


アジアを勝ち抜く難しさは、今回に限らず言われてきた。池田太新監督がなでしこジャパンを率いてから「ボールを奪う、ゴールを奪う」をテーマにやってきている中で、来年のW杯で勝つことと、アジアを戦うところの共通点と相違点を認識しておく必要はある。


「W杯の出場権がかかっている。その権利を勝ち取ることが重要。まずは初戦のミャンマー戦が大事になる。第3戦の韓国戦も次のステージに向かう中で、すごく重要になる。1つ1つという中でも、次に向かう準備は予選の中でもやっていきたい」


そう語るのは、過去2大会の優勝を経験しているキャプテンの熊谷紗希だ。3連覇がかかることに関しては「私自身はディフェンディングチャンピオンのプレッシャーは感じてはいない」と語るが、A代表のカテゴリーでは、アジアカップが初めてになる選手も多い。経験のある選手たちには、状況に応じた声かけや振る舞いも求められる。


インドの環境にどうアジャストするか


環境面で気をつけないといけないのは、インドの気候だ。「日本は冬なので、こちらの気候に合わせたトレーニングの質や量でアジャストしている」と池田太監督が語るように、国内合宿から、選手たちは一枚多く着て練習したり、サウナに長めに入るといった対策をしているようだ。


食事面で心強いのは、日本代表専属の西芳照シェフが帯同していること。21歳のGK田中桃子はパスタがお気に入りだと言い、「ひじき、切り干し大根とか、すごい美味しくて幸せです」と笑顔で語っていた。


ピッチコンディションは綺麗に見えても、実際はボールの弾み方が不規則なことが想定されるため、初戦のミャンマー戦ではウォーミングアップからしっかりと確認して臨みたい。


もう1つ気をつけたいのが、レフェリングだ。猶本光が指摘する。


「ヨーロッパ遠征の時は、球際でガツンと行っても相手が倒れない。だけどアジアだと、ちょっと行くと相手が倒れたり、痛がってファイルを取られやすい」


国際大会だと、WEリーグなど国内の試合に比べて球際が強いようにイメージされやすいが、欧米の列強国はともかく、アジアの戦いではフィジカル面で日本が優位に立つことも多い。レフェリーが正当なコンタクトを許容してくれれば問題ないが、結果的に相手が倒れると、危険な位置でのファウルになってしまうことはよくある。


「自分たちの最終的な目標として、ワールドカップ優勝を目指してはいるんですけど、やっぱり欧米の選手とやる戦い方は異なってくる。まずはアジアの戦いにフォーカスして、自分たちがどうしたら勝てるか」


猶本がそう主張するように、世界を見据える中で、まずはアジアで踏み外さないようにという意識の難しさはあるだろう。


エースの岩渕が初戦欠場


岩渕真奈が新型コロナウイルスの検査で陽性となり、初戦の欠場が確定している中で、攻撃の中心として期待される菅澤優衣香は「真奈の思いも背負って、全員で集中して取り組みたい」と語る。


得点のカギとして挙げるのが、ミドルシュートの意識を高めることと攻撃の連続性だ。


「ドリブルできる選手がディフェンスを引っ張って、そこに二人目、三人目と出ていく。一人だけじゃなくて、ボールに関わってない人の動きが大事になる。攻撃の手数を増やしていくのがポイントになる」


もう1つはセットプレーだろう。欧米との戦いでは、高さを含めて日本が守備で注意しないといけないが、アジアではアドバンテージになりやすい。流れから最初のゴールをこじ開けることは、ミャンマーやベトナムであっても難しいので、早い時間帯でセットプレーから得点が取れたら楽になるはず。


ただ、これまでキッカーを務めてきた中島依美などがいない中で、誰が担うのか。ボランチの主力として期待される林穂之香は正確なボールが強みで、遠藤純も鋭いキックを蹴る。そこから菅澤やセンターバック南萌華などの得点が生まれれば、心強い武器になる。


日本はミャンマーとベトナムに勝利するとともに、できるだけゴールを奪い、3試合目の韓国戦に向けて、アドバンテージを取りたい。ただし、ベトナムは近年のアジアでもっとも成長してきている国の1つで、ミャンマーに勝利して2試合目に臨むことができても、油断は禁物だ。


韓国との3戦目が重要


山場になるのが、韓国との3戦目だ。韓国も大会直前に3人の新型コロナウイルス陽性者が出るなど、日本以上に大変な状況にあるようだが、見方を変えれば、日本戦に向けてチーム状態が上がってくる可能性もある。


フィジカル的に接近している韓国との試合は、アジアの戦いでありながら、池田太監督のサッカーを進めていく上での試金石だ。


日本がC組の2位でグループリーグを突破した場合、準々決勝の相手がオーストラリアになる可能性が高い。オーストラリアには前回の決勝で勝利しているが、主力として期待される長谷川唯は「ずっと攻められ続けて、なんとかチャンスに決めて勝った。アジアでしっかりと戦えた感覚は、内容も含めたら無かった」と振り返る。


来年のW杯開催国でもあるオーストラリアは、最新のFIFAランキングが11位で、今回不参加の北朝鮮を除くと、AFCの国では唯一、13位の日本より高い。世界を見据えれば戦っておきたい相手だが、W杯の出場権がかかる準々決勝で当たるのはリスキーだ。できれば韓国をしっかり叩いて1位で準々決勝に進出し、着実に決勝まで上がって行きたい。


順調に言った場合、決勝の相手がオーストラリアになるかは分からないが、世界で戦うための指標を掴むという意味でも、重要な戦いになる。アジアカップ3連覇は偉大な記録だが、熊谷キャプテンが言うように、チャレンジャーとして1つ1つの試合に向き合い、勝利を掴み取って行けるか。


その先には世界の戦いが待つが、その前に踏み外さないための慎重さと大胆さ、その両方が求められる。(文・河治良幸)


写真提供:getty images

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河治良幸

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書に『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)。

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