捲土重来を期すドイツ代表に付け入る隙はあるのか

COLUMN木崎伸也のシュヴァルべを探せ 第3回

捲土重来を期すドイツ代表に付け入る隙はあるのか

By 木崎伸也 ・ 2022.11.9

シェアする

 ドイツ代表率いるハンジ・フリックは、「短期決戦」に強い監督と言われている。


 たとえばアシスタントコーチを務めていた2014年ブラジルW杯では、ヨアヒム・レーブ監督(当時)にこう進言した。


「暑さが厳しい南米開催のW杯ではセットプレーが大事になりそうだ。セットプレーに力を入れさせて欲しい」


 レーブ監督はポゼッションサッカーを志向しており、練習の多くをそれを高めるメニューに割いていた。だがフリックの進言を受け、ブラジルW杯に向けた合宿ではセットプレーの練習時間を増やした。


 その結果、ドイツは準々決勝のフランス戦の決勝点など、セットプレーから6得点。4度目の優勝の原動力となった。南米開催のW杯でヨーロッパ勢が優勝するのは初めてのことだった。



コロナ禍ですらポジティブに利用したハンジ・フリック


 バイエルン・ミュンヘンの監督して臨んだ19-20シーズンのCLでは、フリックは「持久力」に目をつけた。


 当時は新型コロナ蔓延によって各国でリーグが中断し、ドイツのブンデスリーガも例外ではなかった。だがフリックは逆に体力向上のチャンスと捉えた。


 選手全員の家にフィットネスバイク、心拍計、マット、ゴムバンドを送り、「サイバートレーニング」と銘打ち、連日ハードなオンライントレーニングを実施。たとえば4分のワークアウト後、8分間自転車を漕いで追い込み、それを3セット繰り返すという感じだ。


 当時、トーマス・ミュラーはこう語った。


「俺たちは19-20シーズンの後期、新たなレベルに到達した。なぜならリーグ中断中にフィジカルと有酸素運動に集中して取り組み、さらなるパワーと体力を手にしたんだ。その結果、自分たちのスタイルをより実行できるようになった」


 CLの残り試合がポルトガルのリスボンで集中開催されることになると、フリックはそこに向けてさらに選手たちを鍛え上げた。バイエルンは驚異的なハイプレッシングを身につけ、準々決勝でバルセロナを8対2で粉砕。準決勝ではリヨンに3対0で勝利。そして決勝ではパリ・サンジェルマンに1対0で競り勝ち、ヨーロッパの頂点に立った。


 そして今回、カタールW杯に向けて特に力を入れているのが「オンライン指導」だ。



準備期間の短さを補うための『オンライン指導』


 ポジションごとにグループを分け、戦術ミーティングを開催。10月に55人の予備登録リストが決まると、メッセンジャーアプリ「WhatsApp」でグループを作り、「頂点に返り咲こう!」とメッセージを送った。ちなみにグループ名は「Get Prepared」(準備しよう)だった。


 また、オンライン上に選手の良かった点と課題をフィードバックする30分から60分間の動画を用意。選手にそれを見てもらったあとに、どう感じたかを聞く面談も実施した。


 今回、史上初めてW杯が(南半球の)「冬開催」となったため、約1週間しか大会前に合宿をできない。その難しさを乗り越えるための準備を、フリックは着々と進めてきたのだ。


 いったいフリックはどんなチームを作り上げるのか。初戦の日本戦でベールを脱ぐ。(文・木崎伸也)


写真提供:getty images

シェアする
木崎伸也

木崎伸也

1975年1月3日、東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了後、2002年夏にオランダに移住、翌年からドイツを拠点に日本人サッカー選手を中心とした取材を行う。2009年に帰国した後も精力的に活動し『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿、著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)などがある。近年は小説『アイム・ブルー』の執筆や漫画の原作、2018年10月よりサッカーカンボジア代表のスタッフ等、活動の場を広げている。

このコラムの他の記事

おすすめ動画